外壁のメンテナンスについては、みなさんどのくらい意識しているでしょうか?「定期的に外壁塗装をしている」という方、「お金の都合がつけばやりたい」という方、「特に不具合がないから、しばらくメンテナンスはしていない」という方など、メンテナンスについてはいろいろな考え方があるかと思います。
愛情をこめて定期的にメンテナンスを意識している場合や、メンテナンスに無頓着な場合のどちらにおいても、お住まいの寿命はいつか必ずやってきます。寿命が近づいてくると外壁が傷んできますが、「塗装をすればいい」とお考えになられる方もいらっしゃるのではないでしょうか。
確かに、外壁塗装は外壁メンテナンスの方法のひとつです。しかし、実は「寿命を迎えた外壁」には塗装は無意味で、耐用年数を復活させることはできません。外壁の寿命を迎えた場合の選択肢は「張り替え」、もしくは「重ね張り」でリフォーム工事をするしかないのです。
そこで知っておきたいのは外壁の耐用年数です。外壁材がどのくらいで寿命を迎えるかは、厳密に言うと立地環境によってだいぶ異なります。しかし、ベースとなっているのは「外壁素材の種類」です。次に、代表的な外壁材で耐用年数の目安を見ていきましょう。
窯業系サイディング
窯業系サイディングは、近年非常に人気の高い外壁材です。主な原料となるセメントに、繊維質原料を加えたものです。外壁材のなかでも需要が高く、さまざまなメーカーから発売されています。デザインやパターン、カラーバリエーションなどの豊富なラインナップから、お好みの素材が選べるでしょう。シンプルな柄はもちろん、タイル調やレンガ調、石材調など、一見窯業系サイディングに見えないデザインもあります。
だいたい、新築後、10年ごとの塗り替えがメンテナンスの目安です。定期的に塗装することで、美観や機能性を保つことができます。また、30年目の塗装を終えた後は、外壁材の寿命がやってきます。それ以降は、外壁塗装では性能が回復できないため、外壁の張替えか重ね張りが選択肢となります。
モルタル外壁
窯業系サイディングがメジャーとなる前は、モルタル外壁が主流でした。モルタルは、砂やセメントに水を混ぜてつくられた半固形の素材です。職人さんがコテを使い、手作業により仕上げます。
モルタル外壁は、表面にさまざまな模様を描くことができ、個性的でデザイン性の高い見た目にもなります。防水性を保つため、外壁塗装を定期的に行わなければなりません。
新築後、10年ごとに外壁塗装をすれば、美観や機能性を保つことが出来ますが、次第に細かいクラックが発生するようになってしまいます。ひび割れた箇所の上から塗装をしても、見た目も防水性も復活しません。そのため、クラックがあれば、隙間を埋めて補修、そして模様をつけて塗装というように手間がかかります。
クラックが発生した場合の補修は以下の通りです。
○クラックを補修して、隙間を埋める
○コテ、もしくはリシンガンで模様を吹き付けていく
○部分だけタッチアップ、もしくは1面、全体的に塗り替えが必要
クラックの発生にともなって工程が増えるので、費用もそれなりにかかります。耐用年数が過ぎるころには、重ね張りのリフォームが必要になってきます。
金属サイディング
金属サイディングのなかでも、人気が高まっているのがアルミと亜鉛でめっきされた「ガルバリウム鋼板」です。
新築から10年ごとのタイミングで外壁塗装を行えば、美観や機能性が保てます。それ以降は、外壁としての寿命を迎えるので外壁塗装では回復できません。基本的には外壁の重ね張りが必要です。
定番の外壁材の耐用年数はどれも約30年
「窯業サイディング」「モルタル外壁」「金属サイディング」、これらはどの外壁も耐用年数は約30年と言われています。外壁材の種類が異なっても、寿命がだいたい同じ記事なのは不思議な感じがしますよね。
窯業系サイディングを発売しているメーカーの多くは、金属サイディングも製造しています。そんな背景から、同じくらいの耐用年数に合わせているのかもしれません。
日本では、一般的な戸建住宅の平均寿命が約27年と言われることが多いです。お住まいの寿命がやってくるのと同じ頃に外壁材も耐用年数を迎えるのは、納得できる数値と言えるでしょう。
外壁が老朽化し数字上で寿命を迎えた家は「建て替えしかないのだろうか」と不安になりますが、一方で「家のなかはまだまだ綺麗」という気持ちもありますよね。何より、大きなお金がかかる建て替えの決断は、簡単ではありません。
しかし、寿命を迎えたお住まいでも、リフォームすれば住み続けることができます。
見た目が激しく劣化すると「新しいものにしなければならない」と考えてしまうものです。ただ、近頃は「循環型社会」が求められています。室内に特別なトラブルがなければ、不具合のある箇所をリフォームすれば問題なく住み続けることができるのです。
老朽化したお住まいをメンテナンスやリフォームしていくことは、環境の面でもとても重要なことと言えるでしょう。
寿命を迎えた外壁を新しくする方法には、「外壁の張替え」「外壁の重ね張り(カバー工法)」の2通りの方法があります。
外壁の張替えは、現在の外壁を撤去して、新しいものを張っていく手法です。一方、外壁の重ね張りは、現在の外壁をそのまま使用し、上から新しい外壁を張っていく方法です。
外壁の「張替え」と「重ね張り」の違いとは?
外壁の張替え
既存の外壁を解体・撤去してしまい、外壁を新しいものに張替える手法
外壁の重ね張り(外壁カバー工法)
使用している現在の外壁は撤去せずに残し、既存の外壁材の上から新規の外壁を張っていく手法
「外壁が新しくなる」という大きな意味では、どちらのリフォーム工事も目的は同じです。寿命を迎えた古い外壁を一新できるので、今後も長く安心して暮らせます。
ただ、それぞれの工法は特徴やメリット・デメリットが異なります。
外壁の張替えのメリットとデメリット
外壁の重ね張りのメリットとデメリット
現在の外壁材の種類によっては、「外壁の張替え」か「外壁の重ね張り」の選択肢に制限がある
現在の外壁材の種類によっては、「外壁の張替え」でのリフォーム工事を選ぶことができません。
モルタル外壁の場合、モルタルの下にある金網や防水紙が一体化しています。既存のモルタル塗り部分だけを撤去するということは不可能な構造のため、張替えはできないのです。また、モルタルは半固形状の材料を現地にて塗って外壁が仕上がります。 “張り付ける”というよりも、“作り直し”というイメージです。
一方、外壁の重ね張りは、既存の外壁材の種類がどれであっても施工が可能です。ただ、劣化がひど過ぎるなどの状況次第で施工が難しいケースもあります。
外壁の張替えは、重量“増”にも注意しよう
サイディングの外壁は、デザインも豊富でお住まいの外観のイメージチェンジがしやすい素材と言えるでしょう。お好みの外壁材を選ぶのは楽しみのひとつですよね。ただ、注意したいのが“重量増”です。
窯業系サイディングの厚みは、2008年3月以前の主流は12mmでした。ただ、現在では主流が14mmであり、さらには深い彫りデザインが施された16mmや21mmなど厚みのバリエーションが増えてきました。
16mmや21mmの厚みは彫りの深いデザインですから、「高級感のある外観にしたい」という方に好まれています。ただ、主流の厚みのものと比べると外壁が重くなってしまうのです。
一般的な14mmまでのサイディングの固定方法は専用の釘を使いますが、16mm以上になると専用金具を使う…というように、工法も異なります。彫りが深いデザインは見た目が高級になる魅力がある反面、重量が増加して耐震性に悪影響をもたらしてしまうのです。
外壁材のなかでも「軽い」と注目されているのが金属サイディング。製品ごとに異なりますが、窯業系サイディングの16mm厚は1㎡で約17.5kg、ガルバリウムの金属サイディングはその3分の1程度です。
一般的に、耐震性を高めるには「家を軽くすればいい」と言われています。ただ、「屋根は重いのに、外壁は軽い」となれば、バランスはよくありません。外壁を軽くして耐震性に配慮したつもりでも、逆に揺れやすく耐震性が悪くなってしまうのです。耐震性を向上させるには、リフォーム工事の際に、全体的なバランスを考えた素材選びが大切です。これまでのサイディングと同じくらいの重さを選ぶと間違いがありません。
重ね張りでも、重さの配慮が必要
重ね張りは、より重量増を意識した方がいいでしょう。「既存の外壁」と「新設する外壁」の2つの重みがお住まいにかかります。
どんな外壁材を選んでも重さは増すので、耐震性の観点ではなるべく軽めの素材を意識することが大事です。軽量の金属サイディングが選択肢としては現実的です。
金属サイディングは、暑さや雨音、デザインなどをネックに感じる人が多い
金属サイディングのイメージは「暑そう」「雨が降ると音がうるさそう」「デザインがイマイチ…」とどこかマイナスに捉えられることも多いです。ただ、それぞれの好みには個人差がありますから、鋼板が折り曲げられたデザインを「工場のように見える」と考える人がいる一方で、「シンプルでモダンな雰囲気が素敵」と思う方もいるでしょう。
“金属”と聞くと、昔ながらのイメージで敬遠したくなる方もいらっしゃるかもしれませんが、現在は印刷技術の進歩でインクジェットプリンターにより、窯業系サイディングに酷似した金属サイディングもたくさんあります。
また、「暑いのではないか」という印象もあるかもしれませんが、一体化された断熱材により、暑さ・寒さに悩まずに済む製品も増えました。むしろ、他の外壁材と比べても高い性能を誇る金属サイディングもあります。断熱材は、音も吸収してくれるため、「雨音がしそう…」という不安もありません。
外壁塗装、屋根塗装、サイディング張り替え、防水工事など、お住まいのことはお任せ下さい!
次に、金属サイディングの重ね張り(外壁カバー工法)がどんな流れで進むか、工程をご紹介していきます。
高いところでの作業には危険がともないます。安全の確保はもちろん、安定性を確保してしっかりと工事するために、足場を仮設していきます。
足場を組み立てるときの音は、どうしても大きくなってしまいます。お施主様とご近隣の方々にはご迷惑となりますが、足場を組み立て終わるまでの間、どうかご容赦くださいますと幸いです。
モルタル外壁に金属サイディングを固定するための「胴縁」と呼ばれる木材を取り付けていきます。
胴縁には、一般的に防腐処理された杉材を使います。腐食のリスクを防ぐ樹脂製の胴縁もありますが、コストはやや高めです。
胴縁の取り付けと同じタイミングで、クラックの補修も行います。基本的に、重ね張りで防水性は保たれます。ただ、金属サイディングの内側に水が浸入したときのリスク回避としてクラックの補修をしておくことは大切な工程です。
また、サッシ周辺に水切りを取り付けます。「木材の胴縁」と「ガルバリウム製のサイディング」を合わせると約30mmの厚みになります。壁から窓枠が飛び出るようなことはなく、窓枠が外壁内におさまっているイメージとなります。
外壁の重ね張りは、張替えと比べると工事期間を短縮することができます。しかし、工事が簡単ということではありません。外壁の平面部分は重ね張りしやすい一方で、こちらの写真のように、狭いうえに、出っ張りや引っ込みがあると手間がかかります。新築とは違い、リフォーム工事ならではの難しさと言えるかもしれません。
出っ張りや引っ込みのある狭い部分ですが、寸法を測りシミュレーションしながら解決していきます。水切りの金板を加工し、既存箇所と折り合いをつけつつ、うまくおさめることができました。
今回、重ね張りに用いる外壁材としてお客様からお選びいただいたのは、IG工業のガルバリウム鋼板の外壁材「ガルバロックi/モード3」。ウエザーストーン柄のウエザーケーブ色です。
一見、鋼板には見えませんよね。実は、インクジェットプリンターで印刷されたデザインなのです。耐久性の高い外壁材で安心です。
ベランダにも、ウエザーストーン柄のウエザーケーブ色を選び、外壁材に合わせています。
外側に、同じIG工業のNFブレンダスタという製品、ダークブルーのサイディングを使用してアクセントカラーを取り入れました。
いかがでしょうか。こちらのガルバリウム鋼板製の外壁材ですが、「本当に金属素材なのか?」と疑いたくなるような仕上がりです。
このように、金属製に見えない印刷が施されたサイディングは、IG工業以外でもたくさんございます。石材調やタイル調などの金属サイディングあります。今後、ますます人気が高まりそうです。
街の外壁塗装やさんでは、基準に則った正しい調査・報告を実施しております。