住宅は、本体となる建物だけでなく、玄関に入るまでの通路、塀や門など、さまざまな部分から構成されています。そのなかで、“外壁”や“屋根”など広範囲を指す名称は分かっていても、細かな部分はちょっと何と呼べばいいか分からない…という方も多いのではないでしょうか。
住まいの細かい部分の名称は、はっきりと分からなくても、ふだんは特に困らないかもしれません。ですが、建物のどこかに不具合が起こったり、補修が必要になると「あの部分が…」や「何と言えばいいのか…」と上手く説明できないこともあるでしょう。
それに、点検や見積時に業者の説明中に「何のことを言っているのか、どこのことを言っているのか」と不明点が多過ぎて困るケースもあるかと思います。建築に関する専門用語はたくさんあるため、全部覚えるのは不可能です。
しかし、建物のメンテナンスなどをするうえで、必要となりそうな用語は覚えておくと役立ちます。そこで今回は知っていると見積もりの際などに役立つ「これだけは知っておきたい」という用語を厳選してお伝えしていきます。
長い文章のページとなっていますので、内容を動画でもまとめています。動画で見たいという方はこちらをご覧ください!
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目次 【表示】 【非表示】
- 外部の各部分の名称
- -塀(囲い)
- 垣・かき
- 透かしブロック
- 門から玄関までの各部分の名称
- 門
- 門扉 -もんぴ-
- アプローチ
- ポーチ
- 外周りの各部分の名称
- 犬走り
- 入り隅 -いりずみ-
- 出隅 -でずみ-
- 幕板 -まくいた-
- 窓の周辺の各部分の名称
- 雨戸
- 戸袋 -とぶくろ-
- 霧除け(庇 -ひさし-)
- ベランダとバルコニー周辺の各部分の名称
- ベランダ
- バルコニー
- 笠木 -かさぎ-
- 屋根の側面の各部分の名称
- 破風 -はふ-
- ケラバ
- 鼻隠し
- 軒天(軒天井・軒裏)
- 屋根の上の各部分の名称
- ドーマー
- 大棟 -おおむね-
- 隅棟(下り棟) -すみむね-
- 雨樋の各部分の名称
- 雨樋 -あまどい-
- 横樋 -よこどい-
- 竪樋 -たてどい-
- 這樋 -はいどい-
- 集水機(上合 -じょうごう-)
塀(囲い)
隣地との境界を示すために設ける壁や柵を「塀(囲い)」と言います。一口に「塀」と言っても、化粧ブロック、レンガ、タイル、石積、塗り壁、コンクリートなど、素材による種類はさまざまです。
また、塀を作る目的は「境界をはっきりさせる」というほか、「視線を遮ってプライバシーを守る」「建物の周りを彩る」「風を遮る」「人の侵入を防ぐ」などがあります。
垣 -かき-
垣は隣地との区切りや目隠しなど、塀と同じ目的を持ちます。ただ、塀とは少し異なり、完全に視線を遮断せず、見通しのよいものが多いです。そのため、塀のように人の侵入を防ぐという役割はあまりありません。
垣は、使う材料によって呼び方が異なります。生きた植物を並べる「生垣」、自然の石を並べた「石垣」、竹を編んで作った「竹垣」などがあります。竹垣は、天然素材か人工素材によって寿命も異なります。
また、竹垣は見え方によって呼び方が異なります。縦横に竹を組み、方形の隙間を設けた「四ツ目垣(よつめがき)」といった“透かし垣”が一般的な住宅でよく見られる垣のひとつで、向こう側を透けてみることができるようになっています。一方、目隠し目的で作られた垣は“遮蔽垣”と言い、日本では「建仁寺垣(けんにんじがき)」が有名です。
透かしブロック
ブロック塀において、通気性、および装飾目的で穴をあけたブロックを透かしブロックと言います。
門
住まいの正面に、塀に設けた出入り口のことです。一般的には正面に一箇所だけのことが多いですが、裏門を設けるケースもあります。
門扉 -もんぴ-
左右に分かれた門に挟まれるように取り付けられた扉が門扉です。アルミや樹脂、木製、鉄製、スチールメッシュなどさまざまな素材があります。敷地外と敷地内を区切る扉のため、「お住まいの顔」的な存在。第一印象にもつながるので、凝った装飾のものも多いです。
アプローチ
門をくぐって玄関に向かうまでの通路をアプローチと言います。レンガや石、タイル、枕木、コンクリート、砂利、芝生などの素材を敷くこともあれば、階段やスロープを設けることもあります。
ポーチ
ポーチは玄関の前にある空間を指し、「玄関ポーチ」とも言います。アプローチとの違いが分かりにくく感じるかもしれませんが、玄関を出たすぐの部分、上に“庇(ひさし)”がある空間がポーチです。それに対し、門、もしくは道路から玄関ポーチまでをアプローチと区別しています。
また、玄関ポーチのほとんどは、浸水を防ぐ目的で、1段から数段の階段が設けられています。
犬走り
犬走りとは、外構のひとつで、建物の周りにある細い道のことを言います。40~60㎝ほどと細い道で、犬が通るくらいの細道という意味で「犬走り」という名になった説があります。砂利やコンクリートなどを敷くケースが多く、「泥汚れを防ぐ」「雑草が生えないように」「建物を保護する」などが主な設置目的です。ただし、近年の住まいでは犬走りを設けていない住宅も珍しくありません。
入り隅 -いりずみ-
建物において、“面”同士が向き合ったときに内側にくぼんでいる部分、引っ込んでいる「凹」部分を入り隅と言います。入り隅は、建物の形によっては存在していないケースもあります。
出隅 -でずみ-
出隅は、入り隅とは逆の考え方で、建物の“面”同士が向き合ったときにできる、外側に向いた角の部分、「凸」の部分を指します。入り隅の場合、建物の形状によっては存在しませんが、出隅はどんな建物にもあります。
幕板 -まくいた-
幕板は、壁に設置された横に長い板のことを指します。外壁の1階と2階のセンターラインを表すように幕板がつけられていることもあります。幕板は、特別な意味や役割がある部材ではありません。装飾のために使用することが多いです。たとえば、「1階の壁と2階の壁を違う素材にした・違う色にした」などツートンカラーにしたときに、おしゃれな美観のためにつけるケースもあります。アクセントとしても活躍します。
雨戸
窓の外側に設置する戸を雨戸と言います。雨戸の目的は、「強雨や強風からガラスを守る」「侵入者を防ぐ」などが主なものです。かつての日本の雨戸と言えば、木製の大きな引き戸が多かったですが、近年は多様化してきました。近頃は、開閉が楽ちんで耐久性が高い金属製のシャッタータイプが主流です。そのほか、折り戸タイプもあります。雨戸は、地域によっては設置されないケースも。また、「大きな窓だけに雨戸をつける」など、設置パターンもさまざまです。
戸袋 -とぶくろ-
戸袋は、引き戸の雨戸を開けたときに収納する造作物です。箱状の戸袋が多いですが、雨戸を収納する際にレールの上と下部分だけが隠れるような、装飾性の高い戸袋もあります。基本的に、戸袋は雨戸のある住まいだけに見られる部分です。
霧除け(庇 -ひさし-)
玄関や窓など、住まいの出入り口の上部に設けられた、外壁から出っ張った部分を「霧除け」、もしくは「庇(ひさし)」と言います。名前のとおり、霧や雨などを住宅に浸入させない目的で取り付けられています。
ベランダ
ベランダは、建物から突き出ている屋外スペースです。バルコニーと混同されることが多いですが、ベランダの大きな特徴は「屋根がある」という点です。ベランダを洗濯物干し場として使用した場合、屋根があるおかげで急に雨が降ったときでも洗濯物を取り込むまでに濡れにくいというメリットがあります。
バルコニー
バルコニーは、2階以上の屋外にあるスペースです。ベランダと混同されますが、屋根がない出っ張り部分がバルコニーです。マンションでは、「ベランダなのか・バルコニーなのか」という点で多くの方が呼び方に迷うことがあるかもしれません。しかし、「建物からは出っ張っていない」「屋根に感じるけれど、実際には上階の構造部分」と考えると、厳密にはほとんどがバルコニーと言えるでしょう。
笠木 -かさぎ-
塀や腰壁、パラペット(手摺りの壁)のてっぺん部分に被せている建材を「笠木(かさぎ)」と言います。見た目をよくする意味合いのほか、外壁への雨水の影響を少しでも和らげる対策にもなっています。素材はさまざまなものがありますが、屋外で設置される笠木の場合、金属やステンレス素材が多いです。
塀や腰壁、パラペットにとっては屋根のような役割があります。そのため、笠木が傷むと雨漏りにつながるので定期的に点検が必要です。特に、笠木同士の継ぎ目となる部分は、年月により雨水が浸入しやすくなっています。
また、笠木は屋外だけでなく、室内にもあります。階段の手摺り壁の上部に被せている部材も笠木です。
破風 -はふ-
切り妻屋根の妻側、横から見ると三角形に見える屋根端部分の側面につける板が「破風板(はふいた)」です。切妻屋根の破風は「切妻破風(きりづまはふ)」、入母屋屋根の破風は「入母屋破風(いりもやはふ)」と言い分けることもあります。
一般的な破風は、雨や風から家を守るという目的で取り付けられ、シンプルな形状です。伝統的な建築物によく見られる、丸みを帯びた豪華な装飾をあしらった「唐破風(からはふ)」などもあります。
ケラバ
ケラバとは、切り妻屋根などで雨樋がついていない屋根の先端部分を示している言葉です。前述の「破風」と混同されますが、破風は切妻屋根などの妻側、かつ雨樋がついていない屋根の端部につけられた”部材“を指し示す言葉です。それに対し、ケラバは雨樋がついていない側の“場所”を表しています。つまり、「ケラバ」には、屋根の先端や破風板も含まれていることになります。
ケラバは、外壁から突き出ている屋根の先端ですから、外壁にとっての雨除けとなり、劣化を防ぐという重要な役割があります。家の外観デザインによっては「ケラバ」が存在していないケースもあります。
鼻隠し
軒先に、地面に対して水平になるように取り付けた部材を鼻隠しと言います。軒のある方の屋根の先端に取り付けられます。主な目的は、破風やケラバなどと同様に屋根の内側に雨や風が浸入するのを防ぐことです。
軒天(軒天井・軒裏)
外壁よりも突き出ている屋根材の先端の天井部分を軒天、もしくは軒天井と言います。軒の裏側にあることから、軒裏と言われることもあります。「軒」そのものが、外壁に雨や紫外線があたりにくくする目的のほか、見栄えをよくする効果、火災が発生した場合に屋根に燃え広がるのをおさえる効果などがあります。軒天は、軒の裏側に取り付ける部材のことで、小屋裏の通気のために吸気穴がたくさんついた有孔ボードを取り付けることが多いです。
また、近年は「軒」そのものが出っ張っていない、軒ゼロ住宅も増えていることから、「軒が存在しない・軒天も存在しない」というケースも珍しくなくなりました。
ドーマー
屋根の上面に設置された窓を「ドーマー」と言います。同じく屋根に取り付ける窓に「天窓」がありますが、その違いは取り付ける方向です。屋根の傾斜に合わせるように取り付けられている天窓に対し、ドーマーは一般的な窓と同様に垂直に取り付けます。そのため、屋根から突き出た感じの印象となります。ドーマーの効果は、採光性や通気性の向上です。「屋根裏部屋やロフトを設置したい」というケースで、採光目的のためにドーマーを造るケースが多いです。
大棟 -おおむね-
屋根の上部にあって、屋根材同士が結合する部分を「棟」と言います。そのなかでも、もっとも高い位置にあって、屋根材の面同士が合わさる水平となっている部分が「大棟(おおむね)」です。棟板金や棟瓦などが取り付けられ、雨が入り込むのを防いでいます。
隅棟(下り棟) -すみむね-
切妻屋根の場合、屋根上部の棟と言われる部分は、水平の大棟のみが存在します。寄棟屋根や入母屋屋根では、大棟から下るように傾斜がついた「隅棟」がついています。屋根の最頂部となる大棟から下がって配置されることから、「下り棟」と言われることもあります。
雨樋 -あまどい-
屋根の傾斜の先端に取り付けられる排水設備が「雨樋」です。屋根面に降り注いだ雨水が雨樋を通過して、地上や下水に流れていきます。雨樋があるおかげで、屋根の雨水が外壁を伝わらずに済み、劣化を防ぐことにもつながります。
「とよ」や「とゆ」と呼ぶ人もいますが、基本的に「雨樋」と同じ意味で用いている言葉です。
また、さまざまなパーツを組み合わせて「雨樋」という排水設備になりますが、ひとつひとつの部材の呼び方は異なります。
横樋 -よこどい-
雨樋のパーツのなかでも、屋根の傾斜の下部分、軒先に水平に取り付けられた部分を「横樋(よこどい)」と言います。屋根の上に降った雨は、勾配に沿うように横樋に流れてきます。「軒樋(のきどい)」とも言われます。
竪樋 -たてどい-
雨樋のなかでも、地面と垂直になるようにつけられた部分を「竪樋(たてどい)」と言います。外壁と平行に取り付けられています。横樋で受けた雨水は、この竪樋を通過します。
這樋 -はいどい-
屋根の面に這うイメージで設置されているのが「這樋(はいどい)」です。這樋は、2階以上の家屋に取り付けられ、2階の竪樋を通過した雨水を1階の雨樋へ流すための目的があります。這樋が設置されているのは、1階の屋根面です。
集水機(上合 -じょうごう-)
横樋と竪樋が交わる部分の箱状のパーツを「集水器」、または「上合」と言います。横樋を伝ってきた雨水を集めて竪樋に流す役割を持っています。