外壁塗装についての見積もりをとった際などに業者が使う「コーキング」や「シーリング」という言葉。どちらも目地や隙間を埋めるものを表す用語というイメージですが、それぞれに何か違いはあるのでしょうか。今回は、そんなちょっと気になるコーキングとシーリングの違いやその役割、おすすめの方法などを詳しくご紹介します。
まず、「コーキング」と「シーリング」を英和辞典で調べてみると、次のような説明がされています。
動詞 隙間に槙肌(まいはだ)を詰める、水漏れを防ぐ
※ 槙肌(まいはだ) :木の内皮を砕いて、繊維状にしたもの。舟や桶などの板の接ぎ目に詰め、
水漏れを防ぐために用いられる。
動詞 封をする、捺印する
名詞 判、封、印、シール、密閉、密封
これらからもおわかりのとおり、コーキングもシーリングも「水漏れを防ぐために目地に詰め物をする」「隙間を密閉する」といったニュアンスの言葉であり、実は同じものを指しているのです。
つまり、建築や外壁塗装業界における「コーキング」と「シーリング」という言葉は、どちらも窯業系サイディングボードの継ぎ目の隙間を目地材で充填する工程のことを意味し、その作業や使用する材料に違いはありません。感覚としては、私たちが「日本」という字を「にっぽん」と呼んだり「にほん」と呼んだりすることと同じです。なお、業者によっては「シール工事」と呼ぶこともあります。
「コーキング」「シーリング」という言葉は、建築や外壁塗装業界では同じ作業を意味し、混在して使用されていますが、実は似たような作業であっても、それぞれの言葉を分けて使用している業界もあるのです。
まず、先にご紹介した言葉の説明にもあったように、コーキングの語源は造船と関係しています。コーキングという言葉は本来、船を造る際に板と板の隙間から水が漏れないように槙肌を詰め、ピッチと呼ばれる黒色の樹脂を流し込む作業のことを指していました。
一方、シーリングは本来、王や領主などが手紙を書いた際に蝋や鉛などを使って付けた印章や証印を意味する言葉でした。そして、この印章や証印が手紙に封をする「封緘」としても使われていたことから、次第に「封をする」という意味でも使われるようになったのです。
近代以降、蒸気船が盛んに造られ産業革命が進んでくると、船体を造る人と蒸気機関を造る人という分業化が起こりました。そして、船体を造る人たちが水漏れを防ぐための作業のことをコーキングと呼ぶ一方で、蒸気機関を造る人とたちは蒸気漏れを防ぐために行う作業について「封をする」ことを意味するシーリングという言葉を使うようになったのです。
そのため、現在も似たような作業ではあるものの、船体を造る人たちの間ではコーキング、機関を造る人たちの間ではシーリングという言葉が使われ、どちらの言葉も残っているというわけです。なおシーリングという言葉は蒸気機関からの流れを汲み、自動車産業においても使用されています。
コーキングと、シーリング二つの言葉が混在している理由としては、隙間に充填する目地材の名称がメーカーや商品名によって「コーキング材」であったり「シーリング材」であったりと、名称が統一されていないことも挙げられます。
例えば同程度の値段で成分もほぼ一緒なのに、商品名に「コーク」や「コーキング」「シーラント」といった言葉が使われていたり、目地材は「シーラント」とい名前なのに充填する際に使用する工具は「コーキングガン」といった名前が付けられていたりもするのです。
また、一般的に外壁塗装や屋根塗装での「シーラー」とは、仕上げ用の塗料を密着させるための下塗りに使う塗料を指しますが、業者によっては目地材のことを「シーラー」や「シール材」と呼ぶこともあります。
そのため、見積書や工程表には「コーキング工事」記載されているのに、実際に現場へ足を運んでみると「シーラント」と記載されている目地材を使用していた、といったことも起こり得るわけです。
コーキング(シーリング)材の役割と劣化症状
コーキングもシーリングも、建築や外壁塗装業界においてはどちらも同じ作業を意味することがわかりましたが、ここからはそんなコーキング(シーリング)材の役割や劣化症状について詳しく解説していきます。
コーキング(シーリング)材は水や揺れから住宅を守る
住宅に窯業系サイディングを使用する場合、サイディングボードを組み合わせる際に必ず目地と呼ばれる繋ぎ目ができます。そして、この繋ぎ目に充填するゴムのようなものがコーキング(シーリング)材です。
ここまでご紹介してきたコーキングという言葉の意味からもご理解いただけるとおり、コーキング(シーリング)材には水の侵入を防ぐ働きがありますが、そのほかに地震などの振動によって外壁などの建材同士がぶつかって割れることを防ぐクッションのような働きもあります。そのため、コーキング(シーリング)材は外壁だけではなく、屋根の棟板金が交わる取り合い部分や建物内部の壁とバスタブとの取合い部分など、住宅のさまざまな個所で使用されているのです。コーキング(シーリング)材のさまざまな劣化症状
住宅を建てる上では欠かすことのできないコーキング(シーリング)材。しかし、コーキング(シーリング)材は経年によって劣化するため、住宅を良い状態に保つためには必ず交換が必要です。
劣化症状の一例としては、耐用年数を過ぎることで生じてくる「肉やせ」や紫外線を浴びることによって起こる「ひび割れ」、サイディングボードから剥がれて隙間ができてしまう「剥離」などがあります。コーキング(シーリング)材は防水の役割を担っているため、これらの症状を放置しておくと防水機能が果たせなくなることで外壁内部へ雨水が入り込み、住宅全体の劣化を早めることになります。また、コーキング(シーリング)材が劣化して硬化するとクッションとしての役割が果たせなくなり、サイディングボードなどの建材が建物の揺れによるダメージを受けやすくなってしまうのです。
コーキング(シーリング)されている箇所の周辺に「クラック」と呼ばれるひび割れが発生している場合は劣化症状が考えられるため、早めの対処が必要です。
耐用年数の長いコーキング(シーリング)材で足場代を節約!
近年、外壁塗料は高性能化・長寿命化しており、その耐用年数は15~20年を超えるとも言われています。しかし、いくら外壁塗料の耐用年数が長くてもコーキング(シーリング)材が先に劣化してしまえば、結局コーキング(シーリング)を打ち替えるために足場を組むことになってしまい、耐用年数の長い外壁塗料を使う意味が半減してしまいます。
そこでおすすめしたい方法が、コーキング(シーリング)材も外壁塗料と同様に耐用年数の長いものを使用し、外壁塗装と合わせて一度に工事をしてしまうというものです。
例えば、「オートンイクシード15+」なら耐用年数は15年超。一般的なコーキング(シーリング)材の耐用年数は5年程度のため、2回分ほど足場の仮設費を節約できる計算になります。せっかく耐用年数の長い外壁塗料を使用するのであれば、コーキング(シーリング)材も同じように耐用年数の長いものを選んだ方が断然お得です。
「先打ち」で美しい仕上がりに
一般的に外壁塗装とコーキング(シーリング)の打ち替えのタイミングが異なると、足場を組む回数がその分増えてしまうだけではなく、コーキング(シーリング)材の色が異なってしまうことも少なくありません。
しかし、外壁塗装とコーキング(シーリング)の打ち替えを同時に行うのであれば、塗装前にコーキング(シーリング)を打ち替える「先打ち」という方法がおすすめです。「変性シリコン系コーキング材」と呼ばれる塗装可能なコーキング(シーリング)材を使用することで、外壁と色を合わせることができ、美しい仕上がりになります。
満足度の高いリフォームの実現には業者選びが大切
近年、テレビやネットなどのメディアで悪徳業者に関する報道が度々されるようになり、リフォームをする前に自身で外壁塗装や屋根塗装についての勉強をされる方が増えています。リフォームは頻繁に行うものではありませんが、日々の生活の拠りどころとなる住宅に関わる大切なことです。そのため、すべてを業者任せにするのではなく、自身でも必要な知識をあらかじめ身に付けておくことで、より満足度の高いリフォームを実現させることができることでしょう。
とはいえ、わからないことはプロに聞くのが一番。見積もりや打ち合わせの際に詳しく説明できる業者を選ぶことも大切です。外装リフォームのことでお悩みの際は、是非お気軽に街の外壁塗装やさんまでご相談ください。私たちが責任を持って、心を尽くしご対応をさせていただきます。