一般的な戸建住宅において、近年人気が高いのが1990年頃から普及し始めた窯業系サイディングです。当時、それまで主流だったモルタルと比べておしゃれな雰囲気があり、すぐさま人気となりました。ご自宅はもちろん、近所でも窯業系サイディングの外壁を見かける方も多いでしょう。
今ではますますデザインやカラーのバリエーションが豊富となり、新築の9割でサイディングが採用されています。
ただ、塗装において注意しなければならない点が「昔のサイディング」と「現在のサイディング」の厚みや施工方法の違いです。かつての直貼り工法から現在は通気工法へと、工法が時代とともに変化しています。外壁塗装をお考えのときは、「直貼り工法・通気工法」の違いをおさえてから補修方法を検討する必要があります。
今回は、窯業系サイディングの直貼り工法について、そしてどんなリフォーム方法があるかを詳しくお伝えしていきます。
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冒頭でもお伝えしましたが、1990年代から普及しだしたサイディングは2000年頃から多くの施工会社で「直貼り工法」ではなく、「通気工法」に工法を変えています。
工法を変えた理由は、それまでの「直貼り工法」に問題点があったからです。そこで、まずは2つの工法の特徴を比べてみましょう。
直貼り工法
サイディングが普及した頃は、12㎜くらいの構造用合板に透湿防水シートを設置、その上から窯業系サイディングを釘で固定する方法を採用していました。
昔は、透湿防水シートを柱の外側に直接貼っていたケースが主流でした。
窯業系サイディングは、新築はもちろん、外壁リフォームでも人気の素材です。直貼り工法は近年ではあまり見られないものの、下地にコンパネを用いて直貼りするケースもあります。きちんと施工してもらうためにも、施工業者を探すときには慎重にならなければいけません。
通気工法
構造用合板に透湿防水シートを設置、そして外壁との間に空気の隙間を設けるための木材である“胴縁”を取り付けるのが通気工法です。胴縁は、外壁材の向きと垂直になるよう設置します。たとえば、縦張りサイディングなら胴縁は横向き、横張りサイディングなら胴縁は縦向きになります。
また、サイディングの厚みは、現在では14㎜~18㎜が多く販売されていますが、価格面・性能面を考慮すると、コスパが良いのは14㎜~16㎜と言われています。ただ、厚みによって固定方法が違い、14㎜なら釘打ちですが、15㎜以上なら金具での固定です。
直貼り工法でのサイディング施工は「張り付ける」という作業を行えばよいので費用が安く、工期も短く済みます。ただ、下地に直接張り付けることは、「湿気・水が逃げる隙間がない」という問題点があります。湿気が逃げずに水分が滞留し続けるとカビの発生や外壁材の腐食へとつながってしまうのです。
対処法として考えられたのが胴縁で隙間を作って施工する通気工法でした。つまり、1990年代初め頃の窯業系サイディングの場合、直貼り工法の可能性が高いでしょう。サイディングのメンテナンス時には、通気に関する問題も含めて検討することをおすすめします。
「我が家は窯業系サイディングだ」とは知っていても、なかなか工法までは確認できていない方も多いでしょう。外壁メンテナンスをするうえで、ご自宅の工法が「直貼り工法か?」は確認しておきたいところです。
しかし、外壁材を剥がす訳にもいきませんよね。
そこで、ご自分でチェックできる簡単な方法をご紹介します。
まず、定規やカードなど細い物をご準備ください。外壁材の下端と基礎の間には“水切り板金”が存在しています。その隙間に定規やカードなどを差し込むと隙間の奥行きがチェックできます。1~1.6㎝程度の隙間の場合は、高確率で直貼り工法でしょう。通気工法の場合、「奥行きが2.5~3㎝程度」、もしくは「隙間に指が入ること」が確認できるでしょう。
ただ、「直貼り工法」が必ずしも悪いという訳ではありません。当時、直貼りで施工したサイディングだとしても、十数年経過しても不具合がないケースもあります。しかし、さきほどお伝えしたように、空気の通り道がないからこそ、湿気によるトラブルが起きやすいことは心得えておかなければなりません。
内部に溜まった水分は閉じ込められるので結露を起こします。水分は窯業系サイディングを腐食させながら外に逃げようとするので、「塗膜の剥がれ・外壁材の剥離」が見られるようになります。
直貼り工法の場合、外壁塗装はおすすめできません。
塗装をしても水分が外壁の内側に溜まることはありますから、いずれ水分が外壁内に入り込み、塗膜の膨れや剥がれなどのトラブルを起こしてしまうのです。
特にトラブルが起こりやすいのが、太陽が当たりづらい「建物の北側」、そして屋内側で水分を多用する「水回り外部」です。ただ、それ以外の場所にも剥がれなどのトラブルが起こることはあります。外壁の表面に剥がれが見られた場合、原因は内部の腐食や劣化です。「メンテナンスの時期だから」とサイディングに塗装をしても、表面的な補修では直りません。塗装をすることで再び内部の腐食が進む可能性が高いので、「塗装後に一層ひどくなった」と見た目が劣化するトラブルを起こしかねません。
現在の窯業系サイディングの厚みは14~18㎜ですが、直貼り工法だった昔には外壁の厚みは12㎜程度しかなく、今よりも薄かったのです。塗料のなかには、湿気を通す機能を持つ「透湿性塗料」がありますが、厚みが12㎜ほどしかなければ、100%の保護はできないでしょう。
また、外壁塗装を行ったとしても「塗装後に剥がれが生じた」「水分によって浮いてきた」というトラブルが起こった時は、そもそも“塗装が向いていない外壁構造のため”と施工保証はつかないでしょう。補修にも対応してもらえない可能性が大きいです。
つまり、直貼り工法の窯業系サイディングがメンテナンス時期になった場合、「塗装以外の方法」を検討すべきと言えます。
1. 張替工事
古い外壁材を剥がして撤去してから防水シートを設置、胴縁も施工して通気を確保します。そして新しいサイディングを張っていく方法です。
張替の場合、既存の外壁を剥がしたら撤去しなければなりません。お住まい全部の外壁を張り替えるとなれば費用が高額になりがちなため、傷んだ箇所だけ…という部分的な補修もできます。
張替工事の費用をおさえるには、腐食がみられる面の外壁材だけに絞って工事をするのもいいでしょう。ただ、古いサイディングの場合、デザインが廃盤となっていることがあります。お伝えしてきたように、昔のサイディングは今よりも薄いので、現在のデザインのラインナップから似たような素材を選んでも厚みが僅かに違うことがあるでしょう。
●サイディングの部分張替
部分的な張替はできますが、隣り合っている面の外壁材との「凸凹」が生まれないように、新たに張っていくときは直貼り工法を採用します。透湿防水シートを設置して湿気を逃す対策はしますが、直貼り工法ですから今後の「浮き」や「剥がれ」、「腐食」のリスクはそのまま残ります。
2. 外壁カバー工法
お住まい全部の外壁を張り替えたいものの、コスト的に高額で難しいという方も多いでしょう。そんなときは、外壁カバー工法(重ね張り)がおすすめです。
これまでの外壁は撤去することなく、その上から新たな外壁を重ねて施工します。軽量なガルバリウム鋼板の重ね張りなら、耐久性も高く安心です。
施工時には、胴縁で既存の外壁との間に隙間を設けて通気を確保する対策をします。
カバーで新しい外壁を施工した場合、この先、下地の補修が難しくなります。そのため、丁寧に下地の処理を行ってからカバーすることで、今後のお住まいの寿命にもつながります。丁寧な下地処理は、これからのお住まいの耐久性を高めてくれるのです。外壁の最下部となる土台の水切り部分、そして最上部となる軒天との取り合い部分に空気の流れを作るために隙間を空けて施工するのがポイントです。雨水の浸入を防ぎつつ、空気層となる隙間の確保が必要となります。
また、カバーする外壁に金属素材を選んだ場合、デザインがシンプルな点を心配する方もいるかもしれません。しかし、インクジェット技術が進歩した昨今では、金属素材でも豊富なバリエーションからお好みのものを選べるのです。
直貼り工法のサイディングは、前述したように、構造的な湿気の問題が多発しているため、メンテナンス時期に差し掛かったら外壁カバー工法がおすすめです。外壁の定期的なメンテナンスは、今後の住まいの安心感にもつながります。カバー工法で新しい外壁になれば、しばらくは傷や汚れのチェックというメンテナンスでOKです。また、この先、15年程度で塗装時期になるかと思いますが、通気が確保されているので塗装を行うことができます。
今回の記事では、直貼り工法の窯業系サイディングの場合、“塗装はおすすめしない”とお伝えしてきました。
ただ、「現状、剥がれや浮きのトラブルはない」「美観を向上させるために塗装をしたい」という思いもあるかもしれません。
ただ、現段階でトラブルがないケースでも、塗装に選んだ塗料との相性が悪く、剥がれなどの症状が起こってくるケースもあります。“ひとまず美観を向上させたい”という塗装が、結果的に外観を悪くしてしまう可能性があるのです。施工するときは、「どんなリスクがある?」「塗装後の保証がある?」という点をしっかりと確認することが大事です。
また、美観のアップはもちろん、今後の耐久性を考えて「張替」や「外壁カバー」を行う方もいらっしゃるでしょう。ただ、 “直貼り工法で通気が確保されていなかった”というこれまでの状況が改善できていなければ意味がありません。施工時には、きちんと胴縁(通気層)を施してくれる、実績豊富な信頼できる施工会社を選ぶことが重要です。
施工会社によってはこのような知識を持たず、「塗装すればいい」「張り替えればいい」「カバーすればいい」と安易に考えていることがあります。いい加減な施工会社に依頼すると、せっかくお金をかけた工事が水の泡になるかもしれません。それを避けるには、「過去に似た施工実績があるか」「周囲からの信頼性」を見極めるべきです。また、お客様が工事に対して不安や疑問を抱くのは当然のことですので、分からない点は遠慮なく質問し、「返答は質問に対し適切か」「分かりやすい説明か」もチェックしましょう。
外壁カバー工法を選べるのは「下地の状態が良い場合」ですから、基本的には施工保証がつきます。万が一のトラブルが起こるケースを予測し、施工保証に自信をもっている施工会社を選ぶことが大事です。
私たち街の外壁塗装やさんでは、点検や見積もりは無料で行っています。今回お伝えした「直貼り工法のメンテナンス方法を詳しく知りたい」というご相談もお気軽にお問い合わせください。塗装や外壁補修、外壁カバー工法など、外装に関する工事のお問合せもお待ちしております。
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窯業系サイディングは現在、新築でもリフォームでも選ばれている人気の外壁材です。ただ、人気が出始めた1990年代には、現在の“通気工法”ではなく、“直貼り工法”で施工されていたケースが多いです。
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工法が異なるうえに素材の厚みも薄く、メンテナンスは「直貼り工法」の特徴をおさえて検討しなければなりません。
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外壁の内部に水分や湿気がこもる構造のため、直貼り工法のサイディングは結露が起きやすい特徴があります。
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直貼り工法の見分け方は、外壁材内部の奥行が「2㎝程度あるか・ないか」です。
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直貼り工法は結露しやすいため、塗膜や外壁の剥がれが起こる可能性が高く、塗装のメンテナンスは向いていません。
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湿気を逃がす目的をもつ「透湿性塗料」で塗るという考えが起こるかもしれませんが、外壁材自体が経年により劣化していれば、結露によって塗膜が剥がれる可能性もあるのでおすすめしない方法です。
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直貼り工法メンテナンスのひとつに「張替」があります。部分的な張替はコストもそれほど心配ありませんが、全面となると費用が嵩みます。
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全体的にメンテナンスして耐久性をあげたい場合は、軽量のガルバリウム鋼板での「外壁カバー工法」がおすすめです。
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窯業系サイディングのメンテナンスは、現状をしっかりと見極める力が大切です。「施工後にどのような心配があるのか」などを踏まえてベストなプランを提案してくれる施工会社に依頼しましょう。自信をもって施工保証をつけてくれるかもポイントです。
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外壁カバー工法は、外壁塗装とは異なるメンテナンスです。「施工実績があまりない」という会社に頼むと、知識不足から施工後のトラブルのリスクが高まります。これまでの多数の施工実績、そしてそれにともなう知識があるか、充実したアフターメンテナンスがあるかなどはきちんと確認するべきです。
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今回お伝えしたチェック方法でも、ご自宅の工法が「直貼り工法か?通気工法か?」は分かりづらいというケースもあるでしょう。「メンテナンスを検討する前にはっきり知っておきたい」という不安があるときは、街の外壁塗装やさんにお気軽にご相談ください。