都市部などの住宅密集地では、敷地ギリギリの範囲に建設され、隣接の建物に密着しているのではないかと思うようなご住宅を見かけることがあります。中には「こんな狭い場所にどうやって足場を組んだんだろう?」と見ていて不思議に思うようなケースに遭遇することもあるかもしれません。家を購入したあと快適に住み続けるためには「住宅メンテナンス」が重要です。しかしお隣との距離が近すぎると、外壁塗装などの建物メンテナンスはどうなるのでしょうか?この記事では狭小地や住宅密集地など、お隣との距離が非常に近い建物の外壁塗装やメンテナンスのための足場仮説について解説します。
この記事の内容を動画にまとめています。映像を通すとより分かりやすいので、興味のある方はぜひご参考にしてください。
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お隣との隙間が30㎝以下でも外壁塗装はできる?
結論から言うと30㎝以下の狭小スペースでも足場を組むことはできます。「敷地いっぱい大きな家を建てたい…」というのは都市部に住む方だけでなく、郊外に住んでいる方も例外ではありません。
昔は特に、できる限り隣家との境界線ギリギリまで家や敷地を広げるということが多くありました。「人も通れないほど建物と建物の距離が近い」という建物を時折見かける理由には、このような背景が隠れているのですね。
また、よくあるのが家を建てるときに周りが空き地だったというケースです。敷地のギリギリまで家を広げて建設したとしても、隣が空き地なら気になりませんよね?しかし空き地に家が建ってしまうと、たちまち足場の仮設が難しくなり、メンテナンスも容易ではなくなってしまうという事態に陥るのです。
家を建てた以上、定期的なメンテナンスは心地よく住み続けるためには絶対に必要なもの。外壁塗装用の足場を仮設できないのは困りものです。このように狭小地の家のメンテナンスで足場が必要な場合、解決策は主に次の2つになります。
1. 狭小地用の足場を使う
2. お隣に越境させてもらう
これらの解決方法に加えて、狭い場所に足場を設置するときの注意点や耐久性の高い塗料の選び方などをご紹介します。ぜひご参考にしてくださいね。
【足場仮設の基本】
一般的な足場に必要な距離は約70㎝!
外壁塗装には高い場所での作業が必要になります。そのために足場を組むのですが、この足場の幅が狭いと作業がしにくく危険を伴います。当然作業をするときに足場の幅が狭ければ足元が安定しないため、作業を行うにあたってしっかりと安定した足場を確保することは大切なことなのです。
外装塗装を含む外装工事のときに必要な足場は実際に足を乗せる踏板と、それを支える支柱でできています。足を乗せる踏板は一般的に約40㎝、そして支柱はそれぞれ10㎝です。
【足場仮設に必要な幅】
40㎝+10㎝+10㎝=60㎝
上記のように単純に計算すると、足場仮設に必要な幅は「40㎝+10㎝+10㎝」です。つまり理論的にはお隣との距離が60㎝あれば足場を組むことができる…ということになります。しかし実際には足場を組み立てるときのスペースも必要です。足場組み立てのスペースまで考えると、足場仮設のために70㎝以上の幅があることが理想的です。
塀から外壁まで70㎝もない!こんなときどうなる?
問題は塀から外壁まで70㎝未満しか距離がない場合です。狭い場所では一般的なサイズの足場は組めません。そこで活用するのが幅の狭い踏板です。一般的な踏板の幅は約40㎝ですが、25㎝のものや15㎝の踏板もあります。
70㎝未満の狭いスペースでの作業には、このように幅の狭い踏板を使うことで足場問題を解決できるのです。しかし幅の狭い踏板を利用してもそれを支える支柱設置のため「10㎝+10㎝」のスペースが必要となると、やはり狭小スペースでは難しい場合があります。
そのときに活躍するのが「センター踏板(センタータイプ)」を使った足場です。センター踏板は狭小地用に特化した製品で、足場を支えるための支柱が踏板の中心を通るように作られています。従来の足場は踏板を囲むようにして支柱を建てますが、センター踏板は支柱部分も踏板の幅に収まるため、一般的な支柱に必要なスペース「10㎝+10㎝」が必要ありません。つまり狭小地用のセンター踏板を使うことで、30㎝ほどの隙間があれば足場を組めるということになります。
狭いスペースでの足場仮設にはセンター踏板以外にも解決策はあります。その解決法とは昔から使われている「単管足場」を使用する方法です。単管足場とは単管と呼ばれる鉄パイプをクランプで組み合わせ、水平に設置したものです。単管足場なら30㎝ほどしかない狭い場所でも足場を設置できます。しかし単管足場の場合、踏板でなく束ねた鉄パイプの上に足を載せるため滑りやすく、やや安全面に不安の残る点がデメリットです。そのため現在では安全面と作業面から低層の狭小地用足場として使用されています。
30㎝未満しか隙間がない場合は、お隣の土地を使用させていただくことが現実的な解決策です。外装塗装を考えていること、そして狭くて足場が組めないから作業で越境するかもしれないことをお隣に伝えましょう。
日頃からご近所付き合いをしている方なら、ほとんどの場合「お互い様」ということで問題なく許可してくれるはずです。実際にお隣の敷地に越境して外装塗装の作業をすることはよくあること。きちんと事前に挨拶をして許可を得ていればトラブルになることはあまりありません。
法律的にも家のメンテナンスにおいてお隣の敷地利用について定められています。
●民法第二百九条
土地の所有者は、境界又はその付近において障壁又は建物を築造し又は修繕するため必要な範囲内で、隣地の使用を請求することができる。ただし、隣人の承諾がなければ、その住家に立ち入ることはできない。
※第二編 物権 第三章 所有権 第一節 所有権の限界 第二款 相隣関係より引用
つまり簡単に言うと「住宅メンテナンスのためにお隣の敷地を借りるお願いをしても良いけれど、借りる場合はお隣の許可が必要です」ということ。民法で明記されているので、お隣にお願いすることを躊躇する必要はありません。
ただしお隣への配慮は必要です。外壁塗装の際に塗料やゴミでお隣に迷惑をかけることがあってはいけません。街の外壁塗装やさんでは、外壁メンテナンスでお隣の敷地を使用させていただくときに、お隣の方にも事前に説明をさせていただいております。当然お隣にご迷惑にならないよう、ゴミや塗料の飛散に関しても塗装の過程で十分注意を払いながら行っています。
お隣へ事前に挨拶をし許可をもらうことが大切ですが、中にはいい顔をしてもらえないケースもあります。外壁塗装では、塗料の臭いや飛散などでご迷惑をおかけしてしまうことがあります。またトラックや足場の組み立て作業では音の問題も考えなくてはいけません。作業中にはお隣から敷地を借りるだけでなく、このように音や臭い、ゴミなどの問題が生じるものです。当然作業は細心の注意を払って行いますが、お隣の方が不自由な思いをすることは十分考えられます。
こういうとき重要になってくるのが「お隣への挨拶」です。現実問題としてお隣の敷地を借りることに嫌な顔をする方もいらっしゃいます。こういう場合は「2週間」など期間をきってお願いするとよいでしょう。
【挨拶例】
「今度外壁塗装をするのですが、スペースが狭いので足場を設置するのに少し〇〇さんの敷地に越境してしまうかもしれません。ご迷惑をおかけしますが2週間だけですので、スペースをお借りできないでしょうか?」
足場の越境が問題になる事例がもう一つあります。ガーデニングを趣味にしている方の場合、お庭に足場が置かれることに抵抗を感じることがあるのです。敷地に足場があると花や木のお手入れに不便が生じたり、庭の芝が傷んだりすることを心配されるのでしょう。
実際「庭に足場を組まれるのは困る。でも下につかないのなら空中で越境する分には構わないわ」という方も一定数いらっしゃいます。街の塗装やさんでは、お隣の方の事情や施工主様の要望を事前にお伺いし、お互いに一番良い方法で足場を組むことを心がけています。工事のときには事前にお隣へご挨拶に参りますが、よりお隣の方へご安心いただくためにはお施主様からのご挨拶がなにより効果的です。
業者だけがご挨拶に伺うと「常識がない」とお隣の方が憤慨されることがあります。トラブルを避けるためにも、街の外壁塗装やさんでは特別な事情がない限りお隣の方へお施主様からのご挨拶もお願いしています。
耐用年数が長い塗料を選ぶのもおすすめ!
足場を組むことが大変な場所では、耐用年数が長い塗料を選ぶのもおすすめです。一般的に外装塗装は10~15年に1度の頻度で行います。そのたびにお隣の方に敷地の一部をお借りしたり、ご挨拶に気を使ったりするのは気が重いものです。「できれば外壁塗装の頻度を少なくしたい」というのは多くの人が思うことでしょう。
塗料は種類によってそれぞれ耐用年数が違うことをご存じですか?なるべく耐用年数が長い塗料を選ぶことで外壁塗装の回数を減らし、負担を軽くすることができます。
フッ素塗料や無機系塗料は寿命が長く、通常10~15年に1度の外壁塗装のメンテナンスが20~25年に1度でよくなります。メンテナンスの時期を約10年延ばすことができれば、お隣の方はもちろんご自身の負担も軽くなりますよね。
耐用年数が長い塗料を選ぶこと以外にも、外壁塗装をする際に他のメンテナンスを一緒にしてしまうこともおすすめの方法です。外壁塗装と他のメンテナンスをバラバラに行うと、たびたびお隣へご挨拶に伺うこととなり、そのたびにご不便をおかけすることになります。
例えば外壁塗装をするからとお隣の方からご挨拶をいただいたあと、今度は屋根のメンテナンスで…雨樋の交換で…と数年単位で言ってきたらどう思いますか?きっとお隣の方は「またか…」とウンザリしてしまうに違いありません。騒音や塗料の臭い、埃など多少なりともご近所にご迷惑をおかけすることを考えると、メンテナンス関連は1度に終わらせる方が効率的なのです。
貴方とお隣の方、お互いの負担を減らすためにも次の塗り替えまでが長い耐候性の高い塗料を使ったり、足場が必要な工事はできるだけまとめて行うべきです。
狭い場所に足場を組むときの注意点とは?
外壁塗装の際には気を付けることがありますが、狭小地の施工の場合は特に注意するべき点があります。トラブルになりがちなのが足場を組むときと撤去するときです。また狭い場所では外壁塗装中にも塗料の飛散がないように細心の注意が必要になります。
特に狭い場所で足場の仮設や撤去の作業をする際には、資材を特に慎重に扱わなければいけません。なぜなら狭い場所では資材(パイプなど)の先端が外壁にあたって傷つけてしまうことがあるからです。
外壁塗装の前の傷ならば、施工主様に説明・謝罪をしたあとで傷を上から補修し塗装してしまえば傷は元通りに直りますが、足場を撤去する際に傷をつけてしまうと困ったことになります。
塗装が終わったにも関わらずもう一度足場を組みなおして補修・再塗装となると、工期が延びてしまうと同時にお隣の敷地をお借りする期間も延びてしまいます。謝罪したとしても施工主様やお隣の方に大変なご迷惑をかけることは間違いありません。
一番問題なのは、傷つけた壁がお隣の壁だった場合です。謝罪は当然ですが、足場の組み立てや塗装工事で大変ご迷惑をおかけしているうえに、壁まで傷つけてしまうのですからお隣の方にとってはたまったものではありません。
そのほか強風にも注意しなければいけません。強風に煽られると資材が家屋にあたって傷つけてしまうことがあるからです。このように外壁塗装の際には注意しなければ、施工主様だけでなくお隣の方にもご迷惑をかけてしまうことがあります。
街の外壁塗装やさんではこのような事故がおこらないために、足場の組み立て、撤去、塗装中など最初から最後まで徹底した現場管理を心がけています。
●お隣との距離が狭く足場仮設が難しい場合は「狭小地用の足場を使う」「お隣に越境させてもらう」ことで解決する
●「外壁塗装などのメンテナンスのために必要であれば、お隣の土地の使用を求めることができる」と民法で定められている
●「耐用年数が長い塗料を選ぶ」「外装リフォームをまとめて行う」ことで足場仮設の回数を減らし、外装メンテナンスの負担を軽くすることができる