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塗装工事に使われる塗料にメーカー保証がないのはなぜ?
建材には保証があるのに、塗料には保証がありません
住宅の外壁・屋根塗装をする場合、外壁材・屋根材などの建材については、これらの状態や作業範囲に応じて業者が一定期間の保証をつける場合がほとんどです。この保証期間内に塗膜のひび割れや塗装の剥がれといった不具合が見られた場合、施工業者が塗り直しなどの適切な処置を施します。
このような、工事に関する保証は「施工保証」と呼ばれます。
こちらの施工保証は、業者によって保証期間が様々です。例えば、現在人気のパーフェクトトップという塗料があります。こちらの塗料の保証期間は、街の外壁塗装やさんで最長12年、短い業者で6年程度ということもあります。また、全く同じ外壁材が使われているお住まいでも、その状態や劣化具合は異なります。立地や環境によっても差が生まれるため、同じ外壁材であっても保証内容は異なることがあるのです。
外壁の張り替えや屋根の葺き替えをした場合、使用した製品によってはメーカーの一律保証が受けられます。保証の種類は様々で、初期の不具合のみ対応のものや、最悪の場合は保証書を発行してくれない、といったケースもあるようです。
しかし、外壁や屋根の「塗装」に関しては、メーカー保証が一切ありません。同じ外装のリフォームでも、このような違いがあるのはなぜでしょうか?これは、塗装工事が工程が多く管理項目が複数存在するためです。ごく稀に一律の保証を設けてあるメーカーや塗料もありますが、基本的にはないものとして考えて良いでしょう。
3種類の保証とその違い
保証と言っても様々で、外壁リフォームには複数の種類が存在します。よくあるのが、製品保証、メーカー保証、施工保証(自社保証)の3種類です。保証を詳しく理解するために、これらの違いについて学んでおきましょう。
1.製品保証
メーカーによる、製造した製品に対する保証。使用前の初期不具合や、正しく使用していたにも関わらず発生した不具合に対するものです。外壁・屋根塗装の塗料においても、製造・輸送上の問題や初期不良が起きた際に対応が受けられます。
2.メーカー保証
メーカー独自の製品に対する保証で、製品保証とは異なるものです。外壁材や屋根材の場合は、メーカーの規定に従って行われた施工に対する保証も含まれます。保証期間はメーカーによって様々であり、施工後に一定の保証期間が設けられる場合もあります。
3.施工保証
施工業者が行った工事に対する保証。工事箇所の状態や使用した建材・塗料に応じて保証期間が定められます。業者が独自に行う場合や、業者が加入する団体・組合が行う場合があります。
外壁材や屋根材に対する実際のメーカー保証
前述したように、外壁の張り替えや屋根の葺き替えを行った場合、使用した建材のメーカーから保証が受けられます。例として、以下でケイミューの窯業系のサイディングとニチハの金属屋根材の保証について記載します。
窯業系のサイディングのメーカー保証
ケイミュー株式会社では、 元請会社様(住宅会社様、工務店様)に対してカタログ掲載の外壁材のうち、 下表の外壁材とシーリングをセットで使用した物件の弊社製品の品質保証を実施しています
■対象外壁材:光セラ・シリーズ 各商品
■対象シーリング材:スーパーKMEWシール、スーパーKMEWシールZ
<保証内容>
- 1. 外壁材
製品色に著しい変褪色がないこと。
※「著しい変褪色」とは、建築後の年数を考慮して外壁外観が見苦しく、社会通念上、明らかに補修が必要となる場合をいいます。 伝い水等による汚れや、錆、苔、藻、カビ等の発生による汚れや変色は含みません。
- 2. シーリング
①本製品の材質そのものに起因する著しいひび割れが発生しないこと。
※「著しいひび割れ」とは、本製品が本来有すべき基本性能を果たせない状態のことをいいます。接着面の剥がれ、或いは建物の変形や 変位、施工上の瑕疵等に起因するひび割れは含みません。
②製品色に著しい変褪色がないこと。
※「著しい変褪色」とは、建築後の年数を考慮して外壁外観が見苦しく、社会通念上、明らかに補修が必要となる場合をいいます。 伝い水等による汚れや、錆、苔、藻、カビ等の発生による汚れや変色、シーリング未硬化時に付着した汚れ、市販の洗剤などで 取れる汚れ、シーリングの薄層白化による変色は含みません。 なお、保証内容に抵触するか否かは弊社が判断するものと致します。
<保証期間>
1. 通常の環境下において、施工完了日より15年間とする。
※但し、本保証に基づき補償が行われた場合、その後の保証期間は当初の保証期間の残余期間とします。
■保証対象者
保証書の発行対象者は、原則として元請会社様(住宅会社様、工務店様)とする。
【参考】「セラミックコート外壁材&スーパー KMEWシール」セット色保証について
ここで注意しておかなければならないのが、保証対象者が「元請会社様」となっている点です。建物の所有者であるお施主様に対する保証ではないのです。不具合が見られる場合、お施主様が施工業者に連絡し、施工業者がメーカーと連絡を取る、という形になります。
もしも外壁の交換や張り替えが必要であれば、メーカーが施工業者に保証の外壁材を発送し、それを使って業者が施工するということです。
金属屋根材のメーカー保証
ニチハ株式会社は住宅会社(元請会社)様に対し、以下の製品保証をいたします。
■対象製品:超高耐久 横暖ルーフαS、超高耐久 横暖ルーフS、超高耐久 横暖ルーフS 1820
<塗膜15年保証>
塗膜のヒビ、割れ、剥がれが著しく目立たないこと
<赤錆20年保証>
赤錆の発生面積が全施工面積の5%以下であること
<穴あき25年保証>
塗膜の劣化による腐食によって、鋼板表面の穴あきが認められないこと
■保証対象者
住宅会社様を対象とします。また保証対象者は、本保証書によって発生する権利義務の一部または全部を第三者に譲渡し、引き受けさせ、あるいは担保のように供することはできません。
※保証期間の始期は施工完了日といたします。ただし、弊社出荷後6ヶ月を超える製品を使って施工された場合、出荷日から6ヶ月を経過した日の翌日を保証期間の始期といたします。なお、本保証に基づき補償が行われた場合、その後の保証期間は当初の保証期間の残余期間といたします。
【参考】品質保証–ニチハ
こちらも、保証の対象者は「住宅会社様」となっています。やはり外壁材も屋根材も、メーカーの規定した仕様書などに準拠して業者が施工することが前提で保証が用意されているのです。
外壁・屋根塗装にメーカー保証がない理由
外壁材・屋根材に関してはメーカーが作成した仕様書や説明書に準じて、施工業者が作業を進める前提で保証が成立しています。
外壁塗装・屋根塗装では、どうして同様に保証ができないのでしょうか?理由を日本三大塗料メーカーに確認しました。
「戸建住宅については、特に保証を行っていません。理由は、現場での施工を各業者が行うからです。これでは弊社の作成したマニュアル通りの作業が行われているかの管理が困難です。大規模建築の改修工事など、弊社が現場調査員などのスタッフを派遣する場合は、保証をお付けできる場合もあります。」
「建物の規模や塗装する面積にもよりますが、マンションなどの大規模建築の改修工事の場合は保証が可能なケースもあります。戸建住宅では保証ができませんが、施工業者独自の保証がある場合があります。」
「特に、戸建住宅では保証を行っていません。理由は、施工の品質管理が難しいからです。大規模建築の改修などで、弊社が現場を直接調査できる場合は保証をお付けできる場合もあります。」
保証のない理由は作業や品質管理の難しさ
複数の塗料メーカーに同じ質問をしましたが、どちらも同じような回答でした。共通点として挙げられるのが「戸建住宅の保証はない」「大規模建築の改修については保証される場合もある」という点です。戸建の保証が行われていない理由は「作業工程や施工品質の管理が困難であること」が挙げられています。
建物の塗装業者は、全国に約5万社存在するそうです。それらの業者全てが、メーカーの規定に準拠した工事を行っているわけではありません。メーカーの想定した耐用年数はほど遠く、その3分の1程度の期間で塗装に不具合が生じたケースが何度も発生してしまっています。
塗料は「半製品」
メーカーが保証をできない理由は他にもあります。昔から外壁塗装業者の間で「塗料は半製品」とよく言われます。「半製品」とは、工事が完了するまで目的を果たさないという意味です。塗料が職人の手によって塗装され乾燥し、外壁や屋根に防水性などが現れて初めて完成と言えます。
外壁材や屋根材は、メーカーから出荷される際にほぼ完成しています。使用する場所によっては、加工が必要ありませんし、雨に濡れても問題ありません。したがってメーカー側も、塗料に比べて保証がしやすいと言えるでしょう。
それに対して、塗料は現場で必要な作業が多くあります。2液型の場合はまず攪拌し、塗料と硬化剤を比率を守って混ぜ合わせます。もしも塗料が乾く前に雨が降ってしまうと、塗料は流れてしまいます。塗料は液体であり、その多くは建物の仕上げが目的で使用されます。
外壁材・屋根材・塗料は全て、メーカーの検査を経て出荷されます。しかし、塗料だけが出荷後の仕上げという工程を控えています。外壁材・屋根材も、施工が必要ですが、工事の複雑さが全くの別物なのです。
工事が複雑だからこそ、品質は塗装する職人の技術に依存します。また、塗装工事はメーカーの目の届く範囲の外で行われます。これにより、メーカーが保証をつけるのは極めて困難と言えるでしょう。
現場の管理はメーカーではなく施工業者が行う
建築塗装業者は、全国に約5万社あると言われています。これらの業者が毎日フル稼働しているとは考え辛いので、仮に全国に塗装現場が5000個あるとします。
この数の現場をメーカーが管理するのは容易ではありませんよね。メーカーが現場に直接調査員を派遣するケースは、大規模建築の現場のみであるそうです。
メーカーとして目指すところは、管理の徹底ではなく製品の品質向上です。耐久性の高さと扱いやすさを両立させた塗料をつくるのがメーカーの仕事です。そして、これらは各種塗料において日々向上しています。最近は、塗りやすさを最重要視したレオロジーコントロールの研究も盛んです。さらに、建築塗料の世界シェアトップ10に、日本のメーカーは2社がランクインしています。
メーカーが開発した塗料をメーカーが定めたルールに従って施工することで、半製品が完成形になり、住宅の防水性などが存分に発揮されるのです。
ここでいうレオロジーとは物体の粘度を意味します。液体の場合、粘度は温度の変化がなければ一定だと思われがちですが、実はかき混ぜる力などで変化します。レオロジーコントロールとは、塗料に調整剤を混ぜることで塗料の粘度をコントロールする技術のことです。
塗料は、かき混ぜるなどして力を加えると粘度が下がります。しかし、力が加わっていない時は粘度は高いままです。塗装作業中は、ローラーやハケなどの力が加わっているため粘度は低いですが、塗装後は力が加わらないため粘度が上がります。塗りやすく垂れにくいのは、塗料の性質によるものです。
マヨネーズやケチャップも同じ性質を持ち、圧力の変化によって粘度が変わるために想定より多い量が出てしまうわけですね。
塗装の工程は複雑であり、耐用年数の算出が難しい
外壁・屋根塗装には沢山の工程があります。基本的な工程は「高圧洗浄→下地調整→下塗り→仕上げの中塗り→上塗り」です。メーカーが想定する耐用年数や仕上がりを確保するには、全ての工程を過不足なく行う必要があります。
汚れや脆くなった塗膜を落とします。剥がれかかった塗膜の上から新しい塗装をしても、すぐに剥がれてしまいます。また、洗浄後は乾燥時間を十分に確保します。湿った上から塗装しても、塗膜が上手に形成されません。
ケレンとは、ヤスリや専用工具を使用して塗装面の汚れやサビを落とす作業を指します。金属面や樹脂面は滑らかなため、塗料が乗りにくいです。そのため塗料が乗りやすくするために、ヤスリなどで細かいキズをつけることもあります。キズがあることで塗料の付着面積が大きくなり、塗料が落ちにくくなるのです。また、下地処理には、高圧洗浄などの工程も含まれています。
下塗りは、仕上げ用の塗料をより密着して塗装するために行います。塗る場所の状態に応じて2回行ったり、別の塗料で重ね塗りする場合もあります。適切な処置を施すためには、現場経験値が求められます。
中塗り、上塗りは仕上げで、どちらも同じ塗料・色で行います。同じ色なので、きちんと管理しないと「重ね塗りしていなかった」などの見落としが発生します。
実際の現場管理は複雑で難しい?
天候の管理
建築工事は天候に工程を左右されることが多いです。天候はコントロールできないので、現場の作業管理をそれに合わせて行う必要があります。
作業日は天気予報は確認して組みますが、当日に天気が急変することも避けられません。夏場のゲリラ豪雨や冬場の急な降雪などが典型例です。
時間の管理
各工程にかける時間の管理も、非常に重要な項目のひとつです。例えば、高圧洗浄を入念に行っても塗料の乾燥時間が確保できないと耐用年数が落ちてしまいます。また、仕上げの重ね塗りに関しても、乾燥時間が十分でないと綺麗な発色がされずに色がくすんでしまいます。
乾燥時間は天候に左右されます。また、使用する塗料によっても変わってくるものです。乾燥時間が短いと塗料の機能を最大限に発揮できませんが、長すぎてもいけません。塗り終えてから次の塗装までの期間を開けすぎてしまうと、重ね塗りができなくなる塗料もあります。
塗料の管理
業者の仕事に対する管理も、重要な項目です。塗料の希釈については、水性塗料は清水で、油性(溶剤系)塗料ならシンナーで行います。希釈範囲はメーカーが規定しており、それに準じて行うことが前提です。しかし「薄い方が塗りやすい」「薄めれば塗料代が節約できる」という自分本位な理由でメーカーの規定を無視してしまう業者がいるのも事実です。
塗料の配合率にも気を遣う必要があります。本来は、塗料と硬化剤の重量をきちんと測って配合すべきです。しかし、慣れているからと目分量で配合してしまう業者もいます。最近の塗料は性能が良く、多少配合率が違っても不具合がすぐに出るとは言えません。しかし、長い目で見ると耐用年数に影響が出てしまいます。
※ポットタイム・・・塗料と硬化剤を混ぜてから、塗料が硬化して塗装できなくなるまでの時間をいいます。簡単に言うと、塗料が固まる前の塗料として使用できる時間ですね。
天候・乾燥時間・塗料の性能など、現場で管理しなければならない項目は非常に多いです。どれかひとつでも欠けてしまうと、高い品質を保つことができません。
メーカーは各種塗料の仕様書や使用マニュアルを作成していますが、現場での作業が全てその通りに行われているかの把握はできないのが現状です。従って、メーカーは塗料についての保証ができないのです。
外壁塗装の品質には業者の技術が大きく関係
外壁塗装・屋根塗装には、施工の際に守らなければならない規定や適切な管理が多くあることがお分かりいただけましたか?塗料の品質は勿論のこと、塗装工事の品質確保には業者の知識や経験が必要不可欠です。
街の外壁塗装やさんが最長15年の保証をお約束できるのは、施工技術に自信があるからです。
また、万が一の場合に備えてリフォーム瑕疵保険にも加入しております。保証期間の長さだけが問題ではありません。瑕疵保険の加入の有無や過去の施工事例、お客様からの評価を総合的に評価していただき、施工業者を慎重にお選びいただくことが大切です。