【点検】
S様邸はモルタル塗り仕上げの外壁で屋根は勾配のある化粧スレート屋根材にて葺かれているおしゃれな建物でした。屋根のドーマーがアクセントとなっていて大通りからでもとてもわかりやすい目印になっています。外観上での気になる部分は東面に数か所目立つクラックがありました。一階部分の開口部にまで達するほどの長さのある物もあり、要確認です。
モルタル塗り外壁の宿命ではありますが、クラックは構造上どうしても発生いたします。室内の雨漏りの跡を拝見させていただきました。こちらはクラックのある東面とは真逆の西面側のベランダ下になるところです。
S様邸では4カ所の雨漏りがあったとの事で、他の場所もお教えいただきました。こちら側は先ほど見た西側の大きなクラックのある出窓の部分とキッチンの窓の周辺です。
外部に再度戻り、出窓廻りの雨漏りの原因となりそうな部位を確認して参ります。開口部周りはクラックの発生しやすい場所です。このクラックが雨漏りにつながったという確証は有りませんが、可能性は高いかと思われます。
東側の雨漏りの原因を探ります。図面をもとに位置の確認をおこなっていくと、ベランダ面というよりはサッシの直下のあたりが漏水痕がある場所であるとわかりました。ベランダ面も表面上の汚れも多く破損などの状況は全て確認できる状況ではありません。
ベランダの上に棟違いの屋根がありますが、壁と屋根の取り合い部分に修復の跡がありました。過去に雨漏りを修理した跡であると、S様はおっしゃっていました。ベランダにある掃出し窓の上部にはやはりコーキングによる補修の形跡があります。しかし、クラックの下側で塞いだとしても、これでは入口である部分を塞いでいないため、効果はいかがなものでしょうか?もしかするとクラックは補修の後に発生したものかもしれませんので判断は難しいですが。
ベランダ防水の立ち上がり部分には破損の様子は見られませんでした。S様邸の屋根は勾配が8寸勾配と言われるとても傾斜のある屋根です。屋根面や棟の状態は、上ることが出来ないため工事の際に足場を組んでからの詳細確認しかありません。この様に、まずは雨漏りをしない様にするという一番の目的を達成するにあたって、ご提案する工事としては塗装であれば、クラックの補修をまず完璧に行って行かなくてはなりません。また各開口部廻りへのシーリングも行っておきたいところです。外壁には建物の動きに追従できる弾性系の塗料を使用することでクラックの発生を防いでいくような施工が必要になります。今後の省メンテナンスの件もS様はとても気にされていらっしゃいましたので、塗装以上の省メンテナンスと防水性を確保できる工事という事でガルバリウム鋼板製の金属サイディングボードを使用した外壁カバー工事のご提案をさせていただきました。金属サイディングといいますと、工場の壁やトタンの壁のイメージをもたれるお客様もいらっしゃるかと思いますが、現在は印刷技術の向上で煉瓦やタイルの実物と遜色のない位の見た目の物が普及しています。塗装では絶対に不可能な外観のイメージ変更にも非常に有効です。更に既存外壁との間に胴縁を施工して空間が出来るため、空気層が造られることによる断熱性能の向上というメリットもあります。 本題の雨漏り対策に関しましても、開口部周りには雨仕舞の水切りが設置されますので二重の防御にもなるため万全になります。当初S様も塗装でご検討をされていらっしゃいましたが、いいことづくめの外壁カバー工事のご提案にご納得いただけまして工事を承らせていただくこととなりました。漏水の可能性のある部分に関しては全て改修をおこなうというもとに、屋根は重量低減と防水紙劣化による雨漏り防止のためにガルバリウム鋼板屋根材への葺き替え、またベランダに関してもウレタン防水にて再施工を行うこととなりました。 【工事(外壁カバー工事)】
工事を承って、外壁カバー工事に使用する部材の種類の確定、細かい部分の納まりの確認などの打ち合わせを経ていよいよ着工となります。屋根の葺き替え、外壁カバー工事、ベランダ防水と大きく分けて三つの工事が入ってきます。工期も塗装工事やや屋根カバー工事に比較して少々長めにかかります。しっかりとご近所様への挨拶をおこなって工事を行ってまいります。トラブルは誰の徳にもなりませんから。近隣挨拶を済ませた数日後よりまずは足場架設を行いました。組あがったころにはすっかりと陽も暮れてしまいました。冬場の工事は日照時間が短いため、工期には十分な注意が必要となります。
工事は屋根葺き替え工事と外壁カバー工事を並行しながら行ってゆくこととなりました。とはいえ、両方が施工を行うと効率が悪い場合もあります。たとえば外壁サイディング施工にあたっての下地作成です。既存のモルタル外壁にガルバリウム製外壁サイディングボードを留めるための胴縁という木材を打ち付けていきます。この工事は屋根工事と重複すると効率が悪いため屋根工事の数日前に終了させている状況にいたしました。胴縁は防腐処理のされた杉材を使用しております。厚みは2センチまでは無い程度です。この胴縁の厚みと新たに着くガルバリウム金属サイディングボード分の厚みが新しくなる壁の厚みになります。
下地の作成を行いながら、開口部周りのクラックをコーキングにて補修していきます。万が一、新規の金属サイディングの下へ水が廻ったとしても壁内部への浸水をさせないためです。
サッシ廻りへの水切りは写真のように施工されていきます。木材の胴縁と新たに壁面に付くガルバ製サイディングの厚みがおよそ30mmあるため窓のサッシの壁からの出っ張りは無くなってしまう形の納まりになります。
出隅と言われる建物のコーナーにあたる部分の同質役物です。これだけではイメージがつかみにくいとは思われますが使用する模様は煉瓦のようなデザインの物になります。全体の貼り上がりが楽しみです。
ベランダの外側と内側では違うデザインのガルバ製サイディングを使用いたします。ベランダ外壁外側にはIG工業のNFブレンダスタという種類の金属サイディングを使用いたしました。2015年5月に発売されたばかりの商品です。色はダークブルーを用いております。
ベランダ外壁内側にはメイン外壁に使用する金属サイディングと同じものを使用いたしました。IG工業のガルバロックi モード3 ウエザーストーン柄というものです。色はウエザーケーブです。柄の中にブラウン系の色もグレー系の色も入っているのでベランダ外壁外側に使用いたしましたNFブレンダスタのダークブルーとの色合いもバッチリです。
全ての工事が順調に進んだわけでは無いのも事実です。ご覧のようなサッシと既存モルタル外壁のような狭い空間をどのように施工していこうか?といった悩みも付きまとって参ります。
水切りの金物をうまく加工して施工できないのか?といったようなシミュレーションを地上で施工部と繰り広げながら上手く施工を行うことが出来ました。知恵と経験が織りなす技とでもいうのでしょうか?施工スタッフの努力には脱帽です。
この様な努力もあって、外壁のガルバ製金属サイディングの施工は終了が見えて参りました。細かい部分でいけば、一階と二階の外壁の間にある幕板部分も金属サイディングにて幕板のように仕上げてあります。通常幕板は外壁の上から付けられているので厚みの分外壁よりも出っ張るのですが、今回の工事ではサイディングの中の模様として施工をいたしました。そのため外壁に関しては出っ張りもなくフラットな仕上がりになっています。
もう一部分苦労をしているのはベランダ外壁が二段となっていたことです。細かく分かれた段差がおわかりでしょうか?このような部分は手間が非常にかかります。形状が複雑になればなるほど工事代金が上がるのはそんな仕組みもあるからなんですね。屋根のアクセントになっているドーマー部分にもメインの外壁サイディングと同じガルバロックi モード3 を使用しています。外壁サイデングカバー施工はこれで終了です。 【工事(屋根葺き替え工事)】
屋根の葺き替え工事が行われます。S様邸の屋根勾配は8寸勾配という急傾斜な屋根です。屋根足場という通常の足場架設工事ではない、屋根専用の足場を設けての作業が必要となります。
屋根の葺き替え工事では、既存の屋根材を剥がす必要があります。剥がした屋根材は降ろさなければなりませんので梯子にリフトが付いたような専用の荷揚げ機を使用して屋根材の搬出を行います。
既存の屋根材、S様邸は化粧スレート、コロニアルとも言われます、を使用されていました。工程としてはまず棟板金を外して棟の下地木材を外すことから始まり、棟側から化粧スレートを野地板に止めている釘を抜きながら一枚一枚はがしていきます。化粧スレート板が剥がされた後は、古い防水紙と野地板が現れます。一部、防水紙が剥がれてしまっているのは、化粧スレート板を剥がす際にくっついてしまっていることがあるからです。防水紙はアスファルトルーフィングとも言われます。アスファルトと言えば道路の舗装に使っているので、皆様イメージは付きやすいかと思います。あの黒くドロッとしたものを板紙に染み込ませたものを使っていますので屋根材にくっついてしまうのです。
剥がした屋根材はトラックに積み込んで処分となります。建物の施工時期で有害なアスベストを含んでいる物もあります。その為、廃棄は慎重に行わなければいかないのと費用もアスベスト処分費がかかるため割高になります。
S様邸の野地板はOSB合板と言われるもので貼ってありました。補強の意味もあり針葉樹構造用合板を既存の野地板に重ね張りします。
針葉樹構造用合板による野地板増し張りの次は防水紙の敷設を行います。防水紙も通常のアスファルトルーフィングでは無く改質アスファルトルーフィング、通称ゴムアスと呼ばれるものを使用いたします。通常のアスファルトルーフィングと比べて熱の変化に強く柔軟性があることで屋根材を野地板に止める際の釘穴廻りの防水性を高めてくれます。
野地板増し張り、新規ゴムアスルーフィングの敷設が終わるといよいよ新規屋根材ガルテクトの出番となります。ガルテクトはIG工業の製品で、塗膜の性能がより高い遮熱性フッ素樹脂塗装を施したタイプもラインナップされています。今回S様邸で使用するのは通常の遮熱性ポリエステル樹脂塗装を施したものですが、塗膜の保証はメーカーでも10年をうたっている商品です。お選びいただける色は、フッ素タイプで2種類、ポリエステルタイプで5種類となっています。ポリエステル塗装のラインナップにしかないのですがシェイドブルーという濃いブルーの色がお選びいただけるのはこのガルテクトのみかもしれません。素材はガルバリウム鋼板でできています。
ガルテクトを軒先から施工していきます。S様邸のような急傾斜屋根には雪止め金具は必須アイテムです。暖かい土地柄の千葉県とは言え、おととしの大雪は記憶に新しい所です。備えあれば憂いなし、ですね。S様邸の屋根で象徴的なものは南北面につけられているドーマーです。鳩小屋ともよばれることがあります。ドーマー周りは雨仕舞に十分注意しなければならない箇所です。ドーマーの廻りにはしっかりと水切りが入り水の通り道も確保されています。また水切りの立ち上がり部分は防水テープでもしっかりと塞がれております。
ドーマー周りの施工の様子です。防水対策をしっかりと行います。
ドーマー部分への施工は工夫が必要です。平らな屋根面に使用するガルテクトでは無く同じ柄と色をしたガルバ鋼板のみを加工して施工いたします。ドーマーは屋根の形状が切妻であったりS様邸のようにR状であったりと形状に差があります。R状の屋根の場合は屋根の頂点部分が勾配0となるため雨の浸入に対する施工はより一層の注意を払います。
全体にガルテクトが葺きあがってまいりました。同時に施工している外壁カバーも終わりに差し掛かっていて全体のイメージが見えてきたところです。
屋根葺き替え工事も最終段階になりました。残すはドーマー周りのシール作業、屋根材表面の汚れ落とし、棟板金の設置工事です。
残っていた工事が終了いたしました。ドーマーの上部の屋根との接合部分はしっかりと板金での雨仕舞がされている上にシーリングを行っています。棟は換気棟の設置もいたしました。
屋根の清掃も終わり、屋根葺き替え工事は 終了となりました。あとは足場の解体です。 【工事(ベランダ防水工事)】
外壁も屋根も新しくなりました。ベランダの防水塗装も再施工を行いました。長い間に付いた汚れと苔などを高圧洗浄で洗い流します。
高圧洗浄の後は十分に乾燥させてから、表面の凹凸や既存面の補修をおこないます。今回S様邸のベランダでの防水工事は屋根の防水紙でも有名な田島ルーフィング社のウレタン防水仕様でおこないました。通気緩衝工法と呼ばれる方式で既存下地からの水分を逃がし、また下地からの動きをウレタン防水面に伝えないための専用特殊シートを敷設しその上に防水層を形成していきます。オルタックスカイという呼び名で、工法名はOSTW-3Aという一般的な工法です。
工程としては全5工程より構成され、OTプライマーA、オルタックGSシート、オルタックスカイ×2、OTコートAという流れです。写真はオルタックシートGSの施工、オルタックスカイの一回目の施工です。
オルタックスカイは主剤と硬化剤に分かれた二液形となっていてこの鮮やかな水色に特徴があります。
全体にオルタックスカイを塗布し終えた状態はまさに真夏のプールサイド!最終工程はこのオルタックスカイの防水層の上に表面を傷や紫外線から保護するための上塗りコート剤のOTコートAを塗布して5工程となります。
コート材のOTコートAにもお選びいただける色は複数御座いますが、よほどのことが無い限りはグレー系をお奨め致しています。
通気緩衝工法の通気において役割を果たすのがこの脱気塔です。ステンレス製でもちろん水が浸入しない構造となっています。広い面積のベランダやルーフデッキの改修工事ではこのような脱気塔や脱気盤が付いていますので見かけることがあるかもしれません。 【工事(最終確認)】
いよいよお引渡しに向けた最終確認です。屋根の葺き替えやカバー工事の際には雨樋の位置の兼ね合いもあり取り外しを行うこともあります。今回のS様邸の工事に於いては外壁をガルバ鋼板サイディングボードでカバー工事を行っておりますので竪樋は一度すべて外しています。せっかくなので樋もすべて新品に交換いたしました。また、玄関の上にあるベランダからの排水は鎖樋と呼ばれるものを使用しています。この辺りもなかなかのおしゃれな感じですね。
足場架設がある状態でないと確認、手直しが出来ない部分は確認、手直しが終了いたしましたので、足場架設の撤去をおこないした。足場が外れた事でいままで見えにくかった部分の建物した部分の確認、手直しに入ることが出来ます。
要手直し箇所は、一部塗装を行った際の塗料の付着やエアコンのホースカバーの再設置などがあります。
またベランダ塗装の際に移動をしてあったエアコンの室外機の戻しやせっかくなのでエアコンホースの劣化してはがれてしまっているテープのまき直しをおこないました。
足場架設の際にベランダを取り巻く笠木に足場のジャッキを掛けてあって塗装が出来なかった部分の塗装タッチアップもおこないます。これでやっと工事が終了となります。S様お待たせいたしました!
記事内に記載されている金額は2021年06月24日時点での費用となります。
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