現在住宅の外壁にもっともよく使われている建材は「窯業系サイディング」と言われるものです。窯業系サイディングの魅力はやはり、バリエーションが豊富で、好みのスタイルを手に入れられる点ではないでしょうか。レンガ風、タイル風、木目調などさまざまなスタイルに加えて色や柄、デザインまで豊富なラインナップから選ぶことができます。
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バリエーションがたくさんあって、新築時にはいろいろ迷われた方も多いのではないでしょうか?
「窯業系サイディング」のことを一部の業者では「メンテナンスフリー」と営業しているようですが、窯業系サイディングでも年数が経てば当然メンテナンスは必要です。たとえば外壁塗装の塗り替え、コーキングの打ち替えなど、見た目の美しさや防水性を高めるために、メンテナンスは欠かせません。外回りのお掃除をするときや、悪天候のあとなどこまめな点検をおすすめします。
窯業系サイディングはセメントと繊維質原料、そして砂や砂利の役目をする混和材から作られています。変形に対する強度を持たせるために「繊維質原料」、そして軽量化のために「混和材」が配合されています。この原材料を混ぜて成形し、窯で熱と高圧を加えて化学反応を起こしたあと乾燥させたものが「窯業系サイディング」です。
原料がまだ柔らかいうちに型に流し込んで成形するので、型さえあればデザインやパターン、テクスチャーは思いのままに造れます。乾燥後は規格サイズにカットされ、防水性を高めるための塗装が施されると窯業系サイディングの完成です。
窯業系サイディングは12mmのものが主流でしたが、現在では14mm以上のものが使用されるようになりました。これはデザイン性を高める凹凸を考慮しているからです。窯業系サイディングの厚さの違いは釘を使っているかどうかで判断できます。たとえば14mmのものですと釘打ちで固定するのですが、16mm以上のものは釘が使えないため固定には金具を使います。ただしコーナーや面積の小さな箇所には16mmの窯業系サイディングでも釘で固定することがあります。
使用される窯業系サイディングの変化は厚みだけでなく、その原料にもあります。「ニチハ」から防火外壁材として窯業系サイディングの「モエン」が販売されたのは1974年です。その当時の窯業系サイディングにはアスベスト(石綿)が含有されていました。しかしアスベスト(石綿)の危険性が認識されるようになり、2004年4月にはアスベスト(石綿)を使用しないサイディングが製造されるようになりました。この時期と同じくして施工方法も変わりました。
以前行われていたのは「直貼り工法」という施工方法です。これは「透湿防水シート」と呼ばれる防水シートの上からサイディングを直接貼るやり方になります。しかしこの直貼り工法には外壁内部に通気層がないため、湿気が抜けず内部結露を起こしやすいという欠点がありました。
2000年以降になると直貼り工法から「通気工法」と呼ばれる施工方法が標準工法となり、内部結露の問題が解決します。通気工法とは銅縁を設けてサイディングを固定し、そこに通気層を持たせるやり方です。空気の層ができることで湿気が逃げるだけでなく、高い断熱効果を得ることができます。
胴縁はサイディングの裏側に敷く下地材で、サイディングとは垂直の関係性を持ちます。縦張りサイディングの場合は胴縁を横向きに設置し、横張りサイディングの場合は胴縁を縦向きに設置します。
外壁のサイディングが直貼り工法なのか、通気工法なのかはサイディングのした端にある「水切り板」の隙間に定規を差し込んで奥行きを測ると確認できます。通気工法の場合は胴縁の幅も含めると奥行きは2cmほどです。もしも1.5cm程度しか奥行きがない場合は、窯業系サイディング分の厚みしかないため、「直貼り工法」だと判断できます。
1か月に1回ほど外壁の点検を行うことをおすすめします!
掃除をするついでに外壁の点検も定期的にしてあげましょう。悪いところは早めに発見し迅速に補修してあげるのがベストです。
早めの補修であればその分費用も安くなります。2階など高所の外壁部分は無理にチェックしなくてもよいので、見える箇所だけ傷んでいるところがないか確認してください。台風が過ぎたあとなど悪天候のあとのチェックも大切です。
以前よりも外壁が汚れやすくなったように感じませんか。外壁に苔や藻、カビが発生していませんか。
以前と比べて外壁が汚れやすくなったり、苔や藻、カビなどが発生していたりしませんか?
乾燥した表面には汚れは付きにくいものです。特に苔や藻、カビは水分がないと生えてきません。このような状態は、外壁表面の塗膜の防水性能が落ちているために起こります。防水性能が落ちると水切れが悪くなり、苔や藻、カビが発生しやすい環境になってしまうのです。加えて現在ほとんどの塗料には防苔、防藻、防カビ剤が含まれているため、本来なら苔や藻、カビが生えることはありません。それらが外壁に付着しているということは、塗膜の劣化が始まっていると考えられます。
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防水性能が落ちると水切れが悪くなり、汚れが付きやすくなる
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苔・藻・カビの発生は外壁塗装が劣化している目安になる
サイディングボードの継ぎ目に充填されているコーキング(シーリング)に汚れが発生していませんか。
サイディングボードの継ぎ目に充填されたコーキング(シーリング)の汚れも劣化の目安です。これは劣化の初期段階で、コーキングに含まれる可塑剤が分離して染み出し、汚れが付着した結果です。
もともとコーキング材に含まれているものが染みでているので、結果としてコーキング材は痩せていきます。するとコーキングにヒビや割れが発生し、サイディングとの接着面が剥がれてきてしまうのです。コーキングはサイディングボードの膨張や収縮に対する緩衝材です。加えてコーキングは継ぎ目から雨水の侵入を防ぐ重要な役割を持っています。
コーキング材の可塑剤が染み出す現象を「ブリード現象」と呼びます。しかし可塑剤が含まれていなければ、そもそも黒ずみも起こらないため現在では可塑剤を含まない「ノンブリードタイプ」と呼ばれるコーキング材も多く販売されるようになりました。
コーキング材の柔軟性・弾性を高めるために可塑剤は使われます。そのため可塑剤を使わない場合は代わりになる成分が必要です。そこで「オート化学工業」は独自技術の「LSポリマー」を使った「超高耐久オートンイクシード」を開発しました。これによって従来のコーキング材の耐用年数が5年程度だったところを、オートンイクシードは20年超まで延ばすことに成功しています。
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経年でボロボロになったコーキング
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劣化により最終的に崩れ落ちてしまう
外壁を触ると手に白っぽい粉が付着してしまうのが、チョーキング現象(白亜化)です。
外壁劣化の一つに「チョーキング現象(白亜化)」と呼ばれるものがあります。新築から比べて色あせて見えるのは、塗膜が傷んできた証拠です。劣化が進むと外壁に触ったとき、手に白っぽい粉が付着するようになります。これが外壁塗装の時期の目安となるチョーキング現象(白亜化)です。
塗料は樹脂と顔料、各種添加剤で構成されています。樹脂は塗膜を形成するもの、顔料は色をつけるもので、添加剤には防苔・防藻・防カビ・粘土調整剤などが含まれます。塗膜は塗り替えた直後は強靭でも、紫外線により徐々に分解されて表面に顔料が露出してきます。チョーキングの白っぽい粉の正体は、この表面に露出した顔料です。顔料は色によって変わるので、外壁がグレーの場合は手にグレーっぽい粉がつきます。
チョーキング現象は塗膜の劣化が進行したことを意味します。外壁の防水性能が落ちているので、塗り替えの検討が必要です。
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外壁を触ったとき白っぽい粉が付着するのがチョーキング現象
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チョーキング現象は外壁塗装時期の目安
窯業系サイディングが水の染み込みと乾燥を繰り返すと変形し、反りが出てしまうことがあります。
吸水と乾燥を繰り返すと窯業系サイディングは変形し、反りが出て雨水が侵入しやすくなります。これは反りによって隙間ができるためです。雨水が侵入すると今度は別の部分のサイディングにまで浸み込んでしまうため、反っている箇所が広がってしまいます。
水が浸み込むとサイディングは体積が膨張します。昼間は太陽光によって外側から乾いていき、膨張した体積が元に戻るのですが、内側は湿っているので膨張したままです。サイディングの反りは、このような内側と外側の体積差でひずみが生じることが原因で起こります。
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サイディングが反って浮いた状態になっている
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変形度合いが大きいと割れてしまう可能性がある
窯業系サイディングは他の建材と同じようにビスや釘で固定されています。
窯業系サイディングの固定には他の建材と同じようにビスや釘を使用します。サイディングが反りなどで変形してしまうと、固定するビスや釘に無理な負荷がかかってヒビ(クラック)が入ることがあります。反りや変形が大きくなるとヒビも大きくなり、最悪の場合割れてしまうことも考えられます。
さらに水が浸み込んだ状態で気温が下がると、水分が凍り凍害で割れてしまうことがあります。サイディングに限らずどんな建材でも、劣化を早める水分は大敵です。なるべく早めにメンテナンスを施し、水分の侵入を防ぎましょう。
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釘穴から広がるヒビに注意
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反りや変形の仕方によっては釘が抜ける可能性がある
外壁についた苔・藻・カビは洗って落とします。使うのは台所用中性洗剤です。酸性やアルカリ性の洗剤は外壁に悪影響を及ぼす可能性があるので避けてください。外壁に水をかけ、洗剤を含ませた柔らかいブラシやスポンジで軽くこすり、汚れを落とします。汚れが落ちたら水で洗い流し、軽く拭き取ればOKです。
高圧洗浄器は便利ですが、塗膜や表面を傷めてしまう恐れがあるため使わないでください。カビの種類によってはアレルギーの元になります。気づいたら早めに洗って取り除くことをおすすめします。
苔やカビが付着する原因は塗膜の劣化によるものですが、植木が多い面や陽に当たりにくい北面は苔が繁殖しやすい場所です。苔やカビが発生しやすい条件がある場所は、築年数に関わらず定期的にチェックしておきましょう。
傷んだコーキングは取り除いて新しく打ち替えます。低いところならご自分でも打ち換えられるかもしれませんが、高所など危ないところは無理をせず専門業者にお任せしましょう。
コーキングの打ち替え、外壁塗装を行うときは、耐用年数が同じくらいの塗料とコーキング材を選びましょう。おすすめは「オートンイクシード15+」のような高耐久のものです。打ち換えと塗装の工事を一緒に行うと足場の仮設も1回で終わるので、その分費用を抑えられます。
コーキングの打ち替え時に注意すべきは「2面接着」と「プライマー」
窯業系サイディングの目地は両面と奥面を合わせて3面あります。コーキングは3面すべてに接着させる方がよいと思われがちですが、3面に接着してしまうとすべての面の動きを受け止めることになり、かえってヒビや割れを招いてしまいます。
そこで目地はあえてボンドブレーカーやバックアップ材を入れ、接着箇所を2面にします。こうすることによってコーキング材が柔軟に動くことができ、ヒビや割れを起こす恐れがなくなるのです。
コーキング材を打ち込む前には、プライマーを目地に塗らないといけません。外壁は隙間を作らないように施工しなければいけないため、プライマーを塗っていかに密着性を高められるかが重要なポイントになります。プライマーを塗った日にコーキング材を打ち込まないといけないため、作業範囲を決めて手際よく進めていく必要があります。
塗膜が傷んでいる場合は、外壁塗装をして防水機能を回復させなければいけません。使用された塗料の種類にもよりますが、新築後10年が外壁の塗り替え目安です。10年ほど経つと、ほとんどの窯業系サイディングは艶を失いチョーキングが発生します。
10年たってもたまにきれいなサイディングを見ることがありますが、これは新築時にフッ素や無機、光触媒塗料で仕上げられている「難付着サイディング」だと思われます。耐久性に優れた塗膜を形成しているため、10年で塗り替える必要はありません。
その場合は「10年たったから」といって塗装するとかえって塗膜が密着せず、剥がれてしまう恐れがあります。外壁塗装の目安は10年ですが、あくまで目安なので塗装はサイディングの艶がなくなり既存塗膜が寿命を迎えたころに行いましょう。その後は塗料の種類によりますが、10~15年を目安に外壁塗装を行ってください。塗装の際には前述したとおり、コーキングの打ち替えを同時にすることがおすすめです。
意匠性サイディングの方へ
レンガ調や石壁風など、デザイン性の高いサイディングのことを「意匠性サイディング」と呼びます。素敵なデザインが多く、新築時には慎重に選ばれたのではないでしょうか?しかし塗り替えでせっかくのデザインや雰囲気が変わってしまうとがっかりです。イメージチェンジしたい場合はよいのですが、そのままのサイディングの雰囲気を壊したくない方には「クリア塗装」をおすすめします。「クリア塗装」とは名前のとおり透明色の塗料で塗膜保護を行うもの。色味や雰囲気を保ったまま10年ほど過ごすことができます。
ただし落とせないような汚れや傷、経年劣化による色褪せがサイディングに見られる場合は、汚れや傷などもクリア塗装ではそのまま残ってしまうので注意が必要です。デザイン性を保ったまま外壁塗装を施す場合は、外壁の劣化がまだ軽い時期(8~10年)に「クリア塗装」をすると良いでしょう。
冒頭でもご紹介したとおり、築年数の古い家では直貼り工法を使っている場合があります。内部に水分が溜まりやすい直貼り工法では、水分の抜け道はサイディングの表面のみです。そのため塗装してしまうと水分の抜け道がなくなり、塗膜の膨れや剥がれを起こす恐れがあるため塗装をおすすめしていません。
塗膜剥がれは見栄えが悪いだけでなく外壁材の吸水を早める原因になるため、塗装前に徹底した点検を行ってください。直貼り工法の場合の塗装は「透湿性塗料」を使用します。透湿性塗料は湿気を逃がすことのできる塗料です。
サイディングの反りが少ない場合に、釘やビスを増し打ちして反っている箇所を矯正することもできます。しかし打ち込むと余計な力がかかるため、ヒビや割れが生じることがあります。街の外壁塗装やさんでは、できるだけ外壁材に負担をかけないようにキリで穴をあけてからビスで固定しますが、反りや浮きが再発することもあり、長持ちしないケースもあります。
反りが大きい箇所はその部分だけ新しいものへ交換することもできます。ただ同じ色のサイディングを選んでも新しい部分だけ目立ってしまうため、できれば同時に外装塗装を行うほうがよいでしょう。厚みが12mmのサイディングの場合は全体的な張替か外壁カバー工法を、サイディングデザインが廃盤になっている場合は似たデザインのサイディングで対応いたします。「外壁カバー工法」とは既存のサイディングの上から新たな外壁を張りつける工法のことです。
ヒビやクラックが軽い場合はパテなどで補修できます。ヒビやクラックの発生場所によってカットしたり穴をあけたりしてパテを埋め込み、クラックの進行を防ぎます。パテで補修しただけではその箇所が目立ってしまうので、外壁塗装が必要です。
ヒビやクラックの進行が激しい場合は全体的な張り替えか、外壁カバー工法を行います。外壁カバー工法は外壁材が二重になり重量が増してしまうため、軽い金属サイディングを使用します。外壁カバー工法のメリットは既存外壁材をはがす工程がないので工期が短く、全体張り替え工事よりも費用を抑えられることです。また外壁材が二重になるため、遮音性・断熱性も向上します。
ほとんどの新築住宅は、現在窯業系サイディングが使用されています。そのため塗り替えの時期や塗料の種類などはよく知られているのですが、直貼りや二面接着、難付着サイディングなど…意外に確認事項が多いことはあまり知られていません。
特に20年以上前に建てられたお住まいの場合、まず塗装ができる状態かどうかを確認しなければいけません。自分で判断せず、専門知識を持つプロの塗装工事業者に点検してもらう必要があります。
サイディングには継ぎ目があるため、1階と2階で塗分けたり、バルコニーのみ塗り替えたり…いろいろな仕上がりから選べます。どんな仕上がりになるのか、ご希望の完成イメージを掴んでおくことも大切です。
街の外壁塗装やさんではお住まいの調査を徹底して行い、そのうえで築年数やサイディングの状態に合わせた最適なメンテナンスをご提案いたします。
塗装前にはカラーシミュレーションで塗分けイメージを作成することによる、イメージチェンジのサポートも行っております。
「そろそろ窯業系サイディングの塗り替え時期だな」「サイディングや目地の劣化が気になるな」というメンテナンスのご相談はもちろん、外壁のイメージチェンジもぜひご相談ください。定期的なメンテナンスを行い、大切なお住まいを長くきれいに維持していきましょう!
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窯業系サイディングとはセメントや繊維質原料を原料とする外壁材。昔は厚み12mmのものがよく使われていたが、現在は厚み14㎜~16㎜が主流になっている
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2000年から従来の「直貼り工法」から「通気工法」へ標準工法がシフトされた。水切り板金の奥行きを測ることでどちらの工法か確認できる。
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サイディングの落ちにくい苔やカビは、塗膜の劣化が進行している証拠。塗装メンテナンスをご検討されることがオススメ。
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ブリード現象はコーキング材の劣化サイン。現在改修に使用されるコーキング材のほとんどは「ノンブリードタイプ」です。コーキングを打ち替える際は3面接着とならないよう注意しましよう。
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チョーキング現象は外壁の塗り替えサイン。高意匠サイディングや難付着サイディングはチョーキングが発生しにくいタイプがある。
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窯業系サイディングは吸水・乾燥を繰り返すことによって浮きや反りが生じる。再固定での補修も可能だが、その前に塗膜保護を行うことが重要。
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サイディングの劣化が進行し塗装メンテナンスで改善できない場合は、張り替えか外壁カバー工法を検討する。