適切なメンテナンスを行えば50年以上使用できる外壁材、それがALCパネルです
ALC(Autoclaved Lightweight aerated Concrete)パネルは現在では戸建住宅の外壁材として広く使用されていますが、かつてはビルやマンションなどの大規模建築物にのみ使われていました。しかしその性能の高さに注目したハウスメーカーなどが戸建住宅の外壁材に採用し現在に至っています。
ALCパネルは外壁材に採用する上で多くのメリットを持ち、外壁材に備わるべきほぼ全ての性能を兼ね備えています。そんな外壁材として優秀過ぎるALCパネルですが唯一の弱点は水に弱いことです。ALCパネルはその表面に無数の細かい穴が開いているため非常に水を吸収しやすい構造になっています。基本的に表面の細かい穴は塗膜で覆われており防水性が確保されていますが適切にメンテナンスを行わなければ防水性は損なわれ耐久性が落ちてしまいます。
そのためALCパネルは適切な時期に、手順に則って塗装とシーリングでメンテナンスを行い、防水性を維持する必要があります。ここからはALCパネルの特徴の詳細とお住まいを長持ちさせるためのメンテナンスのポイントをご紹介していきます。
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ALC唯一の弱点は適切な外壁塗装とシーリングの補修で乗り越えましょう
住宅用の外壁材には窯業系サイディングやモルタルなど様々な種類があります。その中でも表面に無数の細かい穴があり優れた性能の外壁材というALCパネルは特殊な建材です。
先ほども軽く触れましたがALCパネル表面の無数の細かい穴は露出しないように塗膜に覆われています。この塗膜が失われると雨水を吸収してしまうので、適切な時期に外壁塗装と目地のシーリング材の打ち直しをすることで塗膜を維持し防水性を保つのがALCパネルのメンテナンスの基本です。他の外壁時とメンテナンス方法自体は変わりませんがALCパネルは他の外壁材以上にメンテナンスに気を配る必要があります。
適切な時期に適切な外壁塗装と目地のシーリングを打ち直すことで半世紀を超える耐用年数を実現できる外壁材、それがALCパネルです。
ALCパネルは外壁材の中でも特に寿命が長い建材で、適切にメンテナンスを行えば50年以上その性能を発揮することもあります。日本の戸建住宅の寿命は海外よりも短く、30年前後ですのでALCパネルであればお住まいを建ててから住人がいなくなり解体する時までお住まいを守り続けることも可能なのです。
ALCパネルの外壁塗装には透湿性の高い塗料をおすすめします
ALCパネルは表面に無数の細かい穴があるため雨水を吸収しやすいのですが、その穴は細かいため目視で分からない部分で浸水してしまうこともあります。
「吸水させないようにするなら弾性の高い塗料もしくは防水塗料で塗装すれば良いのでは?」と思われるかもしれません。しかしそういった塗料は防水の観点では優れているかもしれませんが水蒸気などの内部からの水分の蒸発を妨げてしまうため、内部から蒸発する水蒸気をALCパネルが吸収し、結果的にALCパネルの耐久性が落ちるというリスクがあります。
そういった事態を防止するためには透湿性の高い塗料でALCパネルを塗装しましょう。透湿性の高い塗料であれば内側からの水蒸気は通して外からの雨水の水滴は弾くため耐久性に与える影響も小さくなります。
水に弱いALCパネルの塗装について検討する際に「水性塗料より油性塗料の方が良いのでは?」と思われる方もいらっしゃるかもしれません。昔は油性塗料の方が耐候性が高く、塗料としては優れていました。しかし現在は化学と技術の進化により水性塗料でも耐候性に優れ、嫌な臭いもしない塗料が増えたためむしろ水性塗料が主流の傾向があります。
住宅密集地など「隣の家が近くて臭いが気になる」という方は水性塗料を、「そういった問題はないので耐久性の高い塗料を使いたい」という方は油性塗料を使用しましょう。
ALCパネルの外壁はサイディング系やモルタルと比較すると費用が高いのも特徴です。そのため使用されている住宅はサイディングやモルタルより少ないので塗装業者の中にはALCパネルに塗装をした経験がないという業者もあります。ALCパネルの塗装経験が豊富な塗装業者であれば透湿性の高い塗料を提案してくれるはずですが、不安な時は透湿性の高い塗料を使用するか確認しましょう。一生に一度の大切なお住まいだからこそALCパネルの特徴を理解した上で安心して任せられる塗装業者に塗装の依頼をしましょう。
ALCパネルのALCは日本語で表記すると「軽量気泡コンクリート」となります。普通のコンクリートでは除去される気泡をあえて除去せず残すことで重量が軽く断熱性の高い物質となるのです。コンクリートのため耐火性が非常に高く、ここまでの特徴をまとめると軽く、断熱性・耐火性が高いという建材としては非常に優れた特徴を有しています。
前述しましたがALCは軽量気泡コンクリートなのでセメントに生石灰と珪石、補強のための鉄筋と金網と一緒に成型します。セメントに気泡を発生させるためにアルミニウム粉末を混ぜているのがポイントです。
成型後は高圧・高温の蒸気で加工します。これによりALCパネルの強い強度を生み出すトバモライト結晶という物質が生成されるため、ALCパネルは反りやたわみも小さく、クラックも発生しにくい外壁材となるのです。
冒頭からご紹介している通り、ALCパネルの表面には無数の気泡が存在します。これがALCパネルの高い断熱性と軽さの元になっているのですが、防水性に難があるという弱点の要因にもなっています。
ALCは吸水しただけで強度が下がるとまで言われており、実際にそういったデータを公表しているメーカーもおります。吸水による軽量気泡コンクリートの強度低下というのは乾燥してしまえば元に戻るためそれほど問題ではありません。しかしALCパネルには補強のために鉄筋や金網が使われています。手金や金網は金属のため何度も吸水してしまうと錆が発生し徐々に強度が低下してしまいます。
鉄筋は錆びると体積が膨張するためALCパネルにクラックや剥がれなどの欠損を生む原因になるのです。そのためALCパネルは水から守らなければいけません。
ALCパネルには様々な厚みの外壁材があります。一般的な住宅の外壁に使用される窯業系サイディングの場合、厚さは14mmや16mmです。しかしALCパネルの厚さは最薄でも35mmからで厚いものでは200mmもある外壁材もあります。厚みがあると乾燥しづらそうに思えますが、メーカーが行った試験によると吸水から7日から12日で元の含水率に戻るというデータもあり、ALCパネルは乾きやすい外壁材と言われています。乾燥しやすい要因はALCパネル表面の細かな気泡が独立しているためとされています。
ALCパネルの外壁材には窯業系サイディングと同様にパネルの継ぎ目、いわゆる目地があり、ここに防水のためにシーリング材を充填し雨水の浸入を防ぎます。
目地にはバックアップ材や取付金具が取りついており、ALCパネル同士が噛み合ってつながるように凹凸の継手構造となっています。またALCパネル同士の隙間に充填するシーリング材は、厚さの分だけ充填が必要というわけではありませんがシーリング材の量が不十分だと浸水の危険性はもちろん、紫外線による劣化のリスクも高まり耐久性が低下する要因になります。
※旭化成建材株式会社 Hebel Technical Information 水に関するQ&Aより引用
建物よって使い分けられている薄形パネルと厚形パネル
【薄形パネル】(パネルの最も厚い部分で厚さ35~75mm未満のもの)
- 木造の建築物用
- 厚さ50~75mm未満 木造・鉄骨造の建築物用
【厚形パネル】
- 厚さ75~200mm以下 鉄骨造・鉄筋コンクリート造の建築物用
ALCパネルは厚みがあるほど耐火性に優れ、強度も高い外壁材です。しかし吸水等により劣化してしまえば厚みがもたらす強度も意味をなくしてしまいます。色褪せや汚れの付着、クラックの発生など注意すべきポイントはサイディングやモルタルと同様です。強度の維持のためにも数年おきに目視で点検し、塗装から一定の年数が経過したら外壁塗装によるメンテナンスを心掛けましょう。
ALCパネルは窯業系サイディングと同様に目地から雨水が浸入します。目地に充填されるシーリング材は基本的に外壁塗装よりも劣化が早く傷みやすいため点検する際に特に注意が必要です。
新築の場合は建ててから5,6年経過したタイミングでお住まい全体の目視点検を行いましょう。次回の塗り直しの際に外壁塗装と同じくらいの耐用年数のシーリング材を選ぶことでシーリング材の傷みと塗装の劣化を揃えることができるため工事費の節約にもつながります。
ALCパネルの目地のシーリング材は外壁と同じ色でそのまま塗装されることが多いです。そうすると地震や強風などで衝撃が加わった時に外壁に合わせて伸縮し塗膜にヒビが入ったり塗膜がはがれることがあります。しかしシーリング材自体は問題ないというケースも多いです。
点検する際のポイントとしては①弾力性があるか②ひび割れや肉痩せが起きていないか③下地のバックアップ材が露出していないかなどに注意してください。点検したけど心配という方は専門業者にご相談ください。
街の外壁塗装やさんではALCパネルの塗装のシーリング材にオート化学工業のオートンイクシードをおすすめします。オートンイクシードは一般的なシーリング材の10年という寿命と比べて20年と長寿命なため外壁塗装のタイミングで打ち直しが可能です。
一般的に使用されている安価なシーリング材だと柔軟性を高めるために「可塑剤」という物質が含まれていますがこれは打ってから数年経過すると染み出しはじめて、外壁を黒く汚す要因になります。この黒く汚れることをブリード現象と呼びますがブリード現象で染みついた黒ずみは高圧洗浄でも落とすことができないためお住まいの美観を損ねます。
それに対してオートンイクシードは可塑剤を含まないためブリード現象は発生しません。そのため美観を損ねることもなく長期間にわたって弾力を維持します。
ALCパネルはわずかな塗り残しから吸水する恐れがあるため業者選びは慎重に
ALCパネルの外壁塗装は表面の気泡を塗装によって埋めることで耐久性を上げます。そのためサイディングなどよりも丁寧な塗装が必要です。しかし塗装業者の中にはそういった意識が低く、塗り残しを起こす業者もいます。
そういった業者でも塗装完了後にパッと見た際、色はしっかり塗られているのですが細かい気泡は埋まっていないケースもあります。こうなると埋まっていない気泡部分から雨水が浸入しALCパネルが劣化する危険性があります。経験豊富な塗装業者は外壁材の特性や注意点を理解しており塗り残しなどの危険性は低いため、ALCパネルの塗装は経験の豊富は優良業者に依頼しましょう。
ALCパネルを使用したお住まいに多い陸屋根の劣化にも要注意
ALCパネルを使用しているお住まいの場合、鉄骨造にALCパネルの外壁という構造が多いのではありませんか?ALCパネルの外壁もお住まいから独立しているわけではなく必ず取り付けるための下地材が必要です。ALCパネルを使用したお住まいの場合、鉄骨造が多く、屋根の構造が切妻や寄棟ではなく屋上になっているかフラットな陸屋根になっていることが多い傾向にあります。陸屋根の場合、雨漏りを防ぐために伸縮性の高い防水シートやウレタン塗膜による防水が施されている場合が多いです。
陸屋根はビルやマンションに多く採用され、スレートや瓦よりも頑丈のように思われますが、それでもメンテナンスは必要になります。陸屋根の防水層が劣化してしまえばALCパネルに関係なく雨漏りを起こし室内の湿度に影響し、結果的にALCパネルの外壁に悪影響をとなるため、バルコニーやベランダなどと併せて注意が必要です。
屋根の防水とALCパネルの外壁塗装はまとめて工事がおすすめです!「そろそろALCパネルの塗装時期」や「陸屋根が劣化する時期かな」などが気になったら外壁塗装と屋根の防水工事の両方を施工できる業者に依頼することで依頼者自身の手間の削減と費用を抑えることにもつながります。
ALCパネルの外壁塗装施工例をご紹介
ここからはALCパネルの外壁塗装の実際の施工例をご紹介していきます。こちらのお住まいは新築から10年経ち、外壁を塗装したいということでご相談をいただき施工しました。お客様は目地に充填されたシーリングのひび割れやALCパネルの劣化を気にされており「新築時に近づけたい」とのご要望を承りました。その要望を満たすためにALCパネルにはシーラーと日本ペイントの下塗り塗料、パーフェクトフィラーで2回下塗りします。
点検の様子
今回のお住まいは白を中心とした塗装にアクセントのブルーグレーが映える素敵な外装です。外壁の色がブルーグレーのためサイディングのように見えますがALCパネルです。新築から10年が経過すると外観に傷みが表れ始めるお住まいも多いですがこちらは綺麗に保たれています。傷みが出始めるこの時期の外壁塗装は美観の維持の面でもおすすめです。
メンテナンスの部分でも触れましたがALCパネルのメンテナンスで注意すべきなのが目地のシーリングです。目地のシーリングがヒビや肉痩せにより劣化しているとそこからALCパネルに雨水が浸入し劣化する要因となります。
目地の部分はまだ大丈夫に見えますがサッシ周りはヒビ割れも目立ち、危険な状態です。外壁の左端がザラザラとして見えるあたりも気になりますね。こういった部分は塗料を厚く塗った方が良いでしょう。
足場の仮設と高圧洗浄
今回のお住まいは一見すると綺麗に見えますがよくよく拝見すると汚れも見てとれます。洗浄した部分としていない部分を比べると汚れていたことがよくわかります。ALCパネルは破損から耐久性の劣化につながるため高圧洗浄も威力が強い洗浄は控えましょう。
ALCパネルの塗装で発生するトラブルの多くが「塗膜の剥落」になります。塗膜が剥がれる原因は下地の処理が甘くなることです。汚れの洗浄不足や下塗りの塗りムラが後の塗膜の定着を阻害し後になって剥落を引き起こします。下地処理を丁寧に行うことこそがALCパネルの塗装の品質を決めると言えます。
シーリングの打ち替え
既存のシーリング材を剥がし、専用のプライマーを塗って新しいシーリング材を打ち直します。ALCパネルの耐久性にはシーリング材が重要なので必要量を確実に充填しましょう。充填後はしっかりと乾燥期間を設けることで既定の強度につながります。
外壁塗装
今回の工事では下塗りをパーフェクトフィラーとシーラーで2回行います。新築から10年のお住まいには過剰にも思えるかもしれませんが、このタイミングで念入りに行うことで外壁の耐久性を長期間に渡って維持します。
グレイッシュブルーのALCも2回の下塗りをおこなってから上塗りに入ります。
今回の依頼者は外壁塗料に艶消しタイプを選ばれました。塗装後すぐは白い部分がグレーに見えますが乾燥が進むと白くなります。グレイッシュブルーも同様で塗装後すぐは黒っぽく感じますが乾燥が進むと青みがかってきます。
今回のALCパネルの外壁塗装に使用した上塗り塗料のパーフェクトトップは耐久性の高いラジカル制御による水性塗料になります。艶仕上げも選べて透湿性が高いためALCパネルの外壁塗装に打ってつけと言えるでしょう。高耐候なパーフェクトトップに合わせるようにシーリング材には高耐久のオートンイクシードを使用しました。どちらも耐用年数は12年前後を見込めるので次回のALCパネルの外壁塗装時には目地の補修と外壁塗装を一度に行えます。
竣工
外壁や目地の他にも雨樋などの付帯部の塗装も終えて外壁と屋根塗装が完了となります。今回の塗装は新築から10年と建築技術が向上した現代にしては早く思われるかもしれません。しかし今後外壁の不具合が発生することを予防し耐久性を維持することを考えると早すぎるということもないのです。むしろちょうどいいタイミングと言えるでしょう。今後も定期的に点検し、10年を目安に塗り直しを行えばお住まいの健康をこの先長く維持できるでしょう。
ALCは多孔質という性質で雨水が染み込みやすいが、外壁材としての性能は超優秀!
ALCパネルの防水性の弱さは外壁塗装とシーリング材の打ち直しによるメンテナンスでカバーできるため心配する必要はなし!
発生した汚損や不具合に対応するのではなくそれらが起こる前にメンテナンスで予防する
適切なタイミングでメンテナンスを行うことで50年以上にわたって住み続けることができる
ALCパネルの外壁塗装には透湿性の高い塗料を使用し、塗膜の膨れや剥がれを防ぎましょう
雨水の浸入をしっかりと防ぐためには耐久性が高くひび割れなども起きにくいシーリング材を目地に充填してください