
「築50年になる我が家。そろそろメンテナンスを考えたほうがいいのだろうか?」
そんなご相談をいただき、今回は清水区にあるレスコハウス(現100年住宅)のお住まいの建物診断を行いました。
レスコハウスは、現在の“100年住宅”として知られる住宅ブランドで、頑丈なPCパネル(プレキャストコンクリートパネル)を使用した非常にしっかりした造りが特徴です。
一般的な木造住宅とは構造が異なるため、メンテナンスの考え方にも少し特徴があります。
今回のお住まいは築50年ほど。
それだけの年月が経っているにもかかわらず、これまでの外装メンテナンスは塗り替えが1回のみとのことでした。
「かなり傷んでいるかもしれない」と思いながら診断を進めましたが、実際に確認してみると、良い意味で予想を裏切られる部分もありました。
外壁の状態|築50年としては想像以上に健全な状態


まず確認したのは外壁です。
外壁の表面を触ってみると、手に白い粉がつく状態が確認できました。
これはチョーキング現象と呼ばれるもので、塗膜(塗装の膜)が紫外線や風雨によって劣化し、防水性能が落ちてきているサインです。
今回の外壁状態を5段階で評価すると、4程度の劣化状態でした。
決して良好とは言えませんが、築50年・塗替え1回という条件を考えると、「思った以上に頑張っている」というのが正直な印象です。
ただし、レスコハウスの外壁は一般的なサイディングではなく、PCパネル(工場で製造されたコンクリートパネル)です。
コンクリートは非常に強い材料ですが、塗装が劣化して雨水を吸いやすい状態になると、**中性化(コンクリートが徐々に劣化していく現象)**が進む可能性があります。
簡単に言えば、
「塗装は見た目のためだけではなく、建物の構造を守るために必要」ということです。
そのため、今回の外壁は
“まだ致命的ではないが、しっかりメンテナンスを考えるタイミング”
という判断になりました。
課題は屋根防水にありました

今回の診断で、より大きな課題だったのが屋根です。
レスコハウスのお住まいは、傾斜のある屋根ではなく、陸屋根(ろくやね)と呼ばれる平らな屋根形状になっていることが多くあります。
陸屋根はスタイリッシュな見た目が魅力ですが、雨水を完全に防ぐためには防水工事の品質が非常に重要になります。
新築時のレスコハウスでは、シート防水が施工されているケースが多く見られます。
シート防水とは、防水性能のあるシートを屋根に貼り付けて雨水を防ぐ工法です。
しかし、レスコハウスの屋根は梁(はり)が出ていたり、段差があったりと複雑な形状をしていることが多く、防水メンテナンスの際には施工しやすいウレタン防水が採用されることがよくあります。
今回のお宅も、過去にウレタン塗膜防水によるメンテナンスが行われていました。
ところが、その状態は決して良いものではありませんでした。
防水塗膜に多数の膨れ・浮きが発生


屋根を確認すると、防水塗膜に膨れや浮きが多数見受けられました。
これは防水層の内部に湿気や空気が溜まり、逃げ場を失って表面を押し上げてしまっている状態です。
例えるなら、
濡れた床にビニールを密着させて貼った結果、中で蒸れて膨らんでしまった状態に近いイメージです。
この原因のひとつとして考えられるのが、下地の湿気が十分抜けきらない状態で防水工事をしてしまったことです。
防水工事は“ただ塗れば良い”わけではありません。
見えない下地の状態こそ、実はとても大切なのです。
軒天に多数の漏水痕…でも室内への雨漏りはなし


気になったのが、軒天(のきてん)です。
軒天とは、屋根の裏側に見える天井部分のことですが、この部分に漏水の痕跡が多数確認されました。
実はこの年代のレスコハウスでは、この症状は比較的よく見られます。
構造的な特徴もあり、防水性能が落ちてくると軒先側に影響が出やすいのです。
ただ、幸いだったのは、現時点で室内への雨漏りは発生していなかったこと。
これは非常に大きなポイントです。
なぜなら、室内まで雨漏りが進行してしまうと、内装の補修だけでなく、生活に影響が出てしまうリスクが一気に高まるからです。
今回のケースは、
「まだ手遅れではない状態で発見できた」
と言えます。
正攻法の補修は…かなり大掛かり
では、この防水をどう直すのか。
正攻法で考えるなら、
- 既存の防水塗膜をすべて撤去
- 下地をしっかり乾燥
- 新しい防水を施工
という流れになります。
理屈としては間違いありません。
しかし現実問題として、これはかなりハードルが高い工事です。
理由は大きく2つ。
①費用が高額になりやすい
既存防水の撤去だけでも大きなコストがかかります。
②天候リスクが大きい
防水を剥がして乾燥させている間に雨が降れば、逆に建物へダメージを与える可能性もありますし、再び乾燥させなくてはいけません。
実は“簡単な正解”がないケース
「じゃあ湿気の影響を受けにくい工法にすればいいのでは?」
そう思われるかもしれません。
実際、そのような工法も存在します。
ただし、今回のレスコハウスは屋根形状が複雑。
梁や立ち上がり、細かな取り合い部分が多く、理想的な工法をそのまま採用しにくい条件でした。
つまり今回のケースは、
・費用
・耐久性
・施工現実性
・仕上がり
・将来的な安心感
これらのバランスをどう取るかが非常に難しい案件なのです。
私たちが大切にしているのは「正解を押し付けない提案」
こういったケースで怖いのは、
「この工法しかありません」と決めつけた提案です。
建物の状態は一棟一棟違います。
同じレスコハウスでも、劣化状況も過去の施工内容も違います。
だからこそ私たちは、
“売りたい工法”ではなく、“その建物に合った方法”を考えることを大切にしています。
高額な正攻法が本当に最適なのか。
現実的な補修案で十分なのか。
今後どこまでの耐久性を求めるのか。
お客様と一緒に整理しながら、最適な方法を考えていきたいと思います。
レスコハウス・100年住宅の防水や外壁でお悩みの方へ
レスコハウスのようなPC住宅は、とても丈夫な建物です。
しかし、丈夫だからこそ
「まだ大丈夫だろう」とメンテナンスが後回しになりやすい
という側面もあります。
今回のお宅のように、見た目以上に判断が難しいケースも少なくありません。
「うちはまだ平気かな?」
「この膨れって危ない?」
「他社で見てもらったけどよく分からなかった」
そんな時は、ぜひ一度ご相談ください。
建物の状態を正しく見ることが、余計な出費を防ぐ第一歩です。
記事内に記載されている金額は2026年05月29日時点での費用となります。
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