「次に塗装するとき、どの塗料がベストかな?」「業者が推奨する塗料で問題ないの?」
この解説では、塗装の必要性、様々な塗料の種類、そしてそれらの耐用年数に焦点を当てます。
ただ業者の言う通りに塗装するのではなく、塗料の性能と建物の材質に基づいた知識を持つことで、無駄な支出を減らすことが可能です。建物に合わせた最適な塗装を選ぶために、耐用年数と特徴を把握しましょう。
そもそも塗装メンテナンスはなぜ必要?
屋根や外壁の塗装は、どんなお住まいでも必要になるメンテナンスです。しかし、塗装時期や塗装への向き合い方については人それぞれです。
一般的な塗装の目安としてよく耳にするのが“築10年”です。その時期を目安にして「とりあえず塗り替えしようか」と考えるかもしれません。なかには、「ちょっと色褪せしているけれど、まだ塗装時期は先」と考えて後回しにしている人もいるでしょう。
そこで重要なのは“そもそもなぜ塗装が必要であるのか”を具体的に考えておくことです。
お住まいを守る屋根や外壁などの外装…実は水に弱いものが多い
屋根材や外壁材は家の外にあるため「水に強くて当然」とお考えの方もいらっしゃるかと思いますが、お住まいに使われる建材は実は水分に弱いものが多く、雨が降る屋外では定期的なメンテナンスが欠かせません。たとえばスレート屋根材や窯業系サイディング、モルタルなどセメントを主成分とした素材は、水分が染み込みやすい特徴があります。そのため、防水性に優れた塗膜によって表面を保護し、素材を雨水から守っています。
また、木材を使っているログハウスや付帯部などは、水分が原因で木が劣化して腐食することもあります。それぞれの素材によって耐用年数は異なりますが、木材が水分を含み傷んでしまうと、想定された耐用年数よりも早く寿命を迎えてしまうことになるのです。
雨水の接触を避け、屋根や外壁の劣化を防ぐために、定期的な塗装メンテナンスによって表面を覆い保護してあげることは、とても重要であると言えるでしょう。
塗料を選ぶときには建材の耐用年数も考えましょう
塗料には、それぞれ“耐用年数”があります。耐用年数とは、その塗料に想定される次の塗り替えまでの年数です。一般的には、メーカーが示している耐用年数の時期に行うことが推奨されますが、立地によっては耐用年数前に塗装が必要になるお住まいもあります。
また、建物にも国税庁によって発表されている耐用年数があります。木造住宅は22年、鉄筋コンクリート造住宅は47年という耐用年数が示されています。ただ、この耐用年数は減価償却資産の考え方によるものですから、「耐用年数」に到達したからと言って建物の寿命がやってくることではありません。たとえば木造住宅なら22年が過ぎたから家が倒れてしまうわけではないのです。
減価償却資産の耐用年数(建物)
鉄筋コンクリート造のもの
47年
22年
※国税庁ホームページ 建物の耐用年数より一部抜粋
この耐用年数は、建物の塗装とも深く関係しています。たとえば、窯業系サイディングは40年程度、モルタル壁は30年程度、スレート屋根材は20年程度が耐用年数です。屋根は外壁よりも耐用年数は短めです。
耐用年数が長く、耐久性に優れている建材でも、耐用年数を全うするには塗装が欠かせません。単純に考えると、耐用年数が短い塗料で塗ると塗り替えの回数が増え、耐用年数が長い塗料で塗れば塗り替えの回数が抑えられることになります。
しかし、どんな塗料が適しているかはお住まいの状態ごとに異なるため、適切な塗り替えのサインを見逃さないことが大切です。
塗料の成分とは?
お住まいの塗装をする際、塗装業者におすすめされた塗料を使うことは多いでしょう。しかし、その成分について詳しく知っている人は少ないかもしれません。「顔料」「溶剤」「添加剤」「樹脂」といった塗料の成分のそれぞれの役割をご紹介します。
1.顔料
顔料の役割 | 白は酸化チタン、黒はカーボン等の顔料を混ぜ合わせることでご希望色に仕上げることが出来ます。 |
顔料を含まない透明な塗料をクリアー塗料といい、反対に顔料を含んで着色された塗料はエナメル塗料と言います。
2.溶剤
溶剤の役割 | 塗料の粘度調整や仕上がりを綺麗にするための成分です。 |
塗料は、基本的に何かで薄めてから使います。水性塗料は水で希釈したもの、油性(溶剤)塗料はシンナーで希釈したものです。周辺に臭いがあまり広がらないことから、現在は水性塗料が定番と言ってもいいでしょう。また、「溶剤は健康に被害がないか心配」という方も水性塗料をお選びになる傾向にあるようです。以前は、油性(溶剤)塗料の方が耐用年数は長めでしたが、塗料が進化している現代では水性塗料もそれほど劣りません。
3.添加剤
添加剤の役割 | 分散剤や防腐剤は塗料の性能向上、性能低下防止に混ぜられています。 |
添加剤は、性能が良い塗料に含まれている化学物質です。塗料のなかには、「防藻」「防カビ」「艶消し」などの性能を持つタイプがありますが、その場合は何らかの添加剤が含まれています。
4.樹脂
樹脂の役割 | 塗膜の主要素となる成分ですが多くが石油を原料とした合成樹脂です。 |
樹脂の種類によって“塗料のグレード”が決まり、塗料の耐用年数も樹脂によって大きく変わります。石油を使った合成樹脂が多いですが、石油系は加工の際に二酸化炭素が発生してしまいます。そこで水谷ペイントのナノコンポジットWなど地球に優しい塗料が環境的な観点から注目されています。
塗料の種類・耐用年数と現在主流となっている塗料は?
塗料は、時代の流れでさまざまなものが開発されています。ひと昔前よりも、格段に性能の良い塗料もあります。それでは、現在、さまざまな現場で使われている塗料の種類を見ていきましょう。
1.アクリル塗料
アクリル塗料の耐用年数 | 5~8年程度 |
とても安価な塗料として昔はよく使われていた塗料です。しかし耐用年数が5~8年ほどと短く、現在では性能の良い塗料の影に隠れ、“塗り替え”ではほとんど使われていません。ただ、構造の木材が動きやすい新築時は、ひび割れのリスクからアクリル塗料で塗られています。
また透湿性が高いという特徴もあり、太陽光や雨水の刺激を受けにくい軒天の塗装でも使われることがあります(日本ペイント:ケンエース等)。
2.ウレタン塗料
ウレタン塗料の耐用年数 | 7~10年程度 |
柔軟性と密着性に優れたウレタン塗料は、定期的にカラーチェンジをしたいと考えている方に適している塗料です。ただ、7~10年程度しか耐用年数がありませんから、塗り替えのスパンを長くしたい人には難点となり、塗り替えではあまり選ばれることがありません。
3.シリコン塗料(アクリルシリコン)
シリコン塗料(アクリルシリコン)の耐用年数 | 10~13年程度 |
シリコン塗料は、費用面と10~13年程度という耐用年数とのバランスからリーズナブルでコスパが良い塗料として知られています。現在、主流とも言える塗料です。
4.ラジカル制御型塗料
ラジカル制御型塗料の耐用年数 | 12~15年程度 |
ラジカル制御型塗料は、高耐候酸化チタンと光安定剤(HALS)を取り入れた塗料です。ラジカルは、塗料の成分となる顔料や樹脂を劣化させ、チョーキング現象を引き起こす原因にもなる成分です。このラジカルを制御し、発生を抑制し耐久性を高めた塗料がこのラジカル制御型塗料です。シリコン塗料以上もの耐候性を持つと言われているアクリル樹脂塗料、「日本ペイント:パーフェクトシリーズ」の耐用年数は12~15年程度と長く、注目されています。
5.ピュアアクリル塗料
ピュアアクリル塗料の耐用年数 | 15~20年程度 |
耐久性が高いアクリル樹脂ですが、可塑剤などの不純物が入るとどうしても耐用年数が短くなります。そこで不純物を除去し純度を上げたのがこのピュアアクリル塗料。耐久性(耐用年数)はもちろん、弾性や耐候性、防水性、遮熱性などをあわせもつ塗料です。塗膜が伸縮するため、クラックが起きやすいモルタル外壁でもクラックに追従するため隙間ができず、防水性を発揮することができます。しかも、フッ素樹脂と同等の15~20年程度の耐用年数も備えています。ブライトンのエラストコートなら、艶消しや骨材は使わず、既存の風合いを残したままの塗り替えが可能です。
6.フッ素塗料
フッ素塗料の耐用年数 | 15~20年程度 |
「蛍石」と言われる鉱物から採取した原料から成るフッ素樹脂塗料。紫外線や酸性雨に強い特徴があり、汚れも付きにくいです。15~20年程度という長い耐用年数がメリットですが、塗膜が硬めで塗装時には注意点があります。
密着性が悪い塗料とも言われるものの、下塗り塗料に適切なものを選べば、今後不具合が生じてしまうようなことはありません。
7.光触媒塗料
光触媒塗料の耐用年数 | 15~20年程度 |
酸化チタンが紫外線を吸収し活性酸素を出した際の化学反応により、外壁に付着した汚れを分解・消臭・無害化してくれる塗料です。紫外線により、“分解”と“親水”の効果を発揮し、分解で出た汚れは、雨水で洗い流されるセルフクリーニング機能を備えています。
価格は高いですが、15~20年ほどと耐用年数が長く、高機能です。また、塗装時の注意ポイントもあることから、光触媒塗料を知り尽くした業者へ依頼すべきでしょう。
8.無機塗料
無機塗料の耐用年数 | 15~25年程度 |
紫外線により劣化しないセラミックなどの無機物を使ったものが無機塗料です。耐候性と不燃性に優れ、苔や藻が発生しにくい特徴があります。耐用年数がかなり長く、15~25年程度です。また、ダイフレックスの有機ハイブリッド無機塗料「スーパーセランシリーズ」は無機物に有機物の特性を加えた塗料で、スタジアムなどを塗り替えるときにも選ばれます。
特殊セラミックを使用した、日進産業のガイナ。遮熱性・断熱性・遮音性に優れた無機系の断熱塗料です。
屋根は外壁よりも高いグレードの塗料がオススメ
お住まいの中でも、「屋根」と「外壁」では太陽と雨風の受け方も異なります。やはり、お住まいの最も高い位置に設置されている屋根の方が太陽熱と雨風の刺激を受けやすいため、早めにダメージが出てしまうものです。そこで、塗料のグレードを決めるときには、両者のメンテナンスサイクルとコストを考えながら決めるといいでしょう。
たとえば、シリコン塗料を屋根と外壁の両方に塗装した場合、外壁よりも早く色褪せや汚れが屋根の方に目立つようになったということも少なくありません。
同じシリコン塗料でも、屋根の方が2~3年ほど早く塗料の寿命の限界を迎えてしまうかもしれません。両者のメンテナンスのタイミングを合わせるには、外壁塗装をシリコン塗料で行った場合はシリコン塗料よりも耐用年数が長いフッ素塗料を屋根に…という選び方がおすすめです。
ただ、注意したいのは屋根材や外壁材といった、そもそもの素材の耐用年数です。塗装メンテナンスを行うと、屋根材や外壁材は防水性が高まり劣化しにくくなります。しかし、素材が寿命を迎えてダメージがひどい屋根や外壁に塗装工事を施しても状態を改善することは難しく、劣化を止めることはできません。
たとえば、素材の寿命を越えた屋根材のメンテナンスをするときは、「高耐久塗料を塗る」という方法のほか、「カバー工法」や「葺き替え工事」という方法も視野に入れながらしっかりと吟味したメンテナンス計画を立てることが必要です。
外壁や屋根塗装のとき、付帯部も一緒に塗装をするのが一般的です。それでは、付帯部に使用する塗料のグレードはどうしたらいいのでしょうか。
塩ビ製雨樋も屋根や外壁と同グレード塗料で塗装できる?
耐用年数が20年ほどの塩化ビニル製雨樋は、たくさんのお住まいで使われています。年数とともに、可塑剤が染み出して硬化が起こると割れるリスクが高まります。さらに色褪せも併せて起こるため、定期的に塗り替えしなければ、美観を損なうばかりか、素材の安全性をも脅かしてしまうでしょう。
塩ビ製雨樋の耐用年数 | 20年程度 |
伸縮する塩化ビニルの場合、塗膜が硬くなるフッ素系塗料ではひび割れを起こし、強風や雪の重みで破損しやすくなるでしょう。弾性塗料なら耐用年数が長いので塗装も可能ですが、雨樋交換に備える事も大切です。
鉄部の劣化を防ぐ錆止め塗料の耐用年数
通常、鉄部には錆止め塗料が下塗りとして塗られます。錆止め塗料には、酸素や水と接触を防ぐ目的があります。エポキシ樹脂系の錆止め塗料が主流で、素地を補強するために素地にしっかりと浸透させます。
また、錆止め塗料は、かつては原料が鉛だったこともあり、赤茶色をしていることが一般的でした。ただ、現在は環境的な観点から鉛を使わない錆止め塗料が多く、さまざまな色があります。
錆止め塗料の耐用年数 | 5年弱と短い |
錆止め塗料は5年弱と耐用年数が比較的短いです。そのため、基本的には必ず仕上げ塗料を塗って保護しなければなりません。日本ペイント「1液ハイポンファインデクロ」や「エスパーワンエース」など、速乾性や防錆力に優れた下塗り塗料が使いやすくて人気があります。
木部に使用される塗料の種類
お住まいの付帯部には、木材が使われていることも多いです。“木”は調湿作用を持っており「呼吸」をしています。それにより塗料の耐用年数に関わらず塗膜は剥がれやすいものです。塗装では、そういった木材の特徴に合わせた塗料を選ぶ必要があります。
1. 造膜型塗料
「造膜型塗料」とは、木材の表面に膜を作って耐久性や耐水性を高める塗料です。浸透型塗料と比べると耐用年数が長いという利点があり、通常は、簡単に塗装できない高所などに使われます。本来の木の質感が塗膜によって失われることから、「仕上がりの見た目をそれほど気にしない」という目立たない箇所に使われることが一般的です。
いったん造膜型塗料で塗った箇所は、次の塗り替えでも同様の塗料を使わなければなりません。また、塗料が密着しない場合、塗装後に剥がれる可能性が高まります。そのため、塗装時には古い塗膜をしっかりと除去するなどの下地処理が大切です。
密着性や高い耐久性(耐用年数)、柔軟性が求められる木部塗装には、日本ペイント「ファインパーフェクトトップ」や日本エンバイロケミカルズ「コンゾラン」が使われることが多いです。
2. 浸透型塗料
表面に塗膜を作る「造膜型塗料」に対し、木材内部に塗料を染み込ませることで保護するのが「浸透型塗料」です。浸透型は木材が持つ風合いや質感を残すことができる塗料ですが、造膜型と比べると耐用年数が短めという特徴があります。
浸透型塗料は、塗膜が剥がれやすいウッドデッキやログハウスなどに使われることが多いです。また、屋内の場合は、臭いが少なめの水性タイプ、屋外の場合は耐久性(耐用年数)に優れた油性(溶剤)というように、塗る箇所によって溶剤の種類も変えます。
日本エンバイロケミカルズ「キシラデコール」は水性と油性(溶剤)のどちらもあり、木部塗装でよく使われています。大谷塗料「VATON」は植物油を原料としているため、お子様やペットがいても安心して使うことができます。
木部塗装の耐用年数 | 非常に短い |
屋根塗装や外壁塗装と比較すると、木部塗装の耐用年数は短いです。造膜型塗料なら耐用年数は長いものの、剥がれは起こり得ます。そのため、施工保証は短く3年ほどしかありません。
また、木材にすでに腐食が進んでいれば、今後ますます剥がれがひどくなり、木材の耐久性が急激に衰えます。水分が浸透する前に塗り替えで保護するか、ガルバリウム鋼板でのカバー工事する方法などがおすすめです。
使用塗料を決める際は、お住まいの状態の確認が必須
塗装に使う塗料を決めるときは、屋根や外壁の素材、雨樋や木製付帯部などの耐用年数をチェックし、それぞれのメンテナンスサイクルを合わせることも大切です。また、使う場所によって塗料に期待する目的も異なるでしょう。たとえば、「部屋が暑い」というときは遮熱塗料、「冬の暖房が効きづらい」なら断熱塗料など、塗料が持つ性能によって生活の質を向上させる効果も望めます。
また、屋根や外壁などの状態を詳しく見なければ、「どんな塗料で塗るべきか」は判断できません。それぞれの下地に合わせて今後の耐用年数も考えながら適した塗料があります。
街の外壁塗装やさんは、まずは無料点検によりお客様の屋根や外壁などの状態を確認させていただきます。その後、お住まいの状態や環境、ご要望に合わせた工事内容をご提案いたします。お住まいの状態、建材・塗料の耐用年数など、ご心配な点がある方は、是非お気軽にご相談ください。
-
大切なお住まいを紫外線や雨水から守るには、塗装によるメンテナンスは欠かせません。
-
塗装に耐用年数があるように、建材にも耐用年数があります。
塗料を選ぶときには、建材の耐用年数も加味しながら考えましょう。 -
塗料は樹脂成分の違いで、耐久性(耐用年数)も異なります。
-
数ある塗料のうち、コストと耐用年数のバランスが良いのはシリコン塗料で、
現在の主流となっています。
現在では技術の進歩によって他にも耐久性に優れた高機能塗料がいくつも存在します。 -
外壁よりも屋根の方がダメージを受けやすいです。
屋根と外壁を一緒にメンテナンスしたいとお考えの方は、
屋根に高耐久の塗料を用いることをおすすめします。 -
雨樋は、高耐久塗料で塗り替えすることができます。
塗料によっては破損しやすいものがあるため、
耐用年数や破損のリスクなども踏まえて塗装計画を立てましょう。 -
鉄部には錆止め塗料を下塗りとして塗っていきます。
錆止め塗料が効果を発揮している限り錆びの発生を抑えてくれますが、
錆止め塗料の耐用年数は短めです。仕上げ塗料でしっかりと保護することが重要です。 -
木部には「造膜型塗料」と「浸透型塗料」の2つのタイプがあります。
耐用年数と仕上がりがそれぞれ異なるため、
塗装箇所に応じてどちらを使用するべきかどうか決めましょう。 -
塗装工事は建材と塗料の状態と耐用年数なども踏まえて、総合的な観点で
判断できるような業者へ依頼をすることが塗装工事を成功させるポイントです。 -
塗装は美観性と耐久性、快適性を高めることができます。
快適かつ効率よくお住まいを綺麗に維持するためにも、
定期的にお住まいの塗装メンテナンスを計画していきましょう。