【点検】
まずは屋根から点検を進めて参ります。一見するとやや苔の生えた化粧スレートの普通の屋根かな?という感じに見えます。
特に北面には多くの苔が生えてきており、塗り替えのタイミングといった感じです。細かく見てゆくと、いたるところに細かい割れが発生していました。割れているだけでは無く、うっすらと白い曲線が見えるのはヒビ割れです。
なぜここまで割れやヒビ割れが起きてしまったのか、というほどに屋根全体に確認が出来ました。
K様からの事前ヒアリングでは、昔に雹害にあったことがあるそうです。棟の板金には確かに雹があたった時にできたと思われる無数の窪みが確認できました。もしかするとこの時の衝撃が経年とともに化粧スレートの割れやヒビ割れにつながったのかもしれません。
屋根チェックの際には、可能であれば必ずおこなっている小屋裏確認もさせていただきましたが、雨漏りの形跡や兆候は見られませんでした。
屋根材の大きな破損は下地の防水紙や野地板にダメージを与えます。よくあるのが防水紙が劣化して、屋根材を止めてある釘の周辺からの雨漏りだったりします。
屋根から降りる際に、外壁の様子も見ながら下りてまいりました。K様邸で印象的なのは玄関廻りの一階部分を取り囲むように施工された煉瓦ブロック外壁です。一階と二階の間には化粧幕板がありますが、すっかり色あせてしまっております。
ガレージの擁壁も汚れが目立つのが気になるとの事でした。なかなかこの辺りは掃除も大変ですのでわかっていても放置しがちになりますね。
全体的な外壁の様子は屋根に比較すれば苔の発生は少なく、経年なりに塗膜が劣化してきている、と言った状態です。色褪せが目立つのは鉄部の方がやや顕著でした。
K様の気になる部分のその2ですが、ベランダに面した壁面がパンチングメッシュとなっていて、その表面が塗膜の剥離なのかまだら模様になってしまっています。外からも良く見える場所なので確かに気になります。後は門扉です。門扉は素材に使用されている物がいろいろあって、再塗装に関しては非常にデリケートです。K様邸の門扉は鋳物のようでした。
点検の傍ら、軒天の廻りを確認しながら上を見ていたところ不自然な樋を確認いたしました。K様にもお話をすると、雨の日にポタポタと漏ることがあるとの事です。雨樋でこのような模様やシミがある場合は大抵そこから漏れが発生しています。
屋根の上からでは大きな歪みなども確認できなかった雨樋ですが、下から見ると漏れている場所はよくわかる物です。竪樋の納まりもなぜか微妙にクネクネとしています。接続部の漏れがありそうです。竪樋はパナソニックのPC30という角樋をしようしています。 以上の点検からとK様のご希望をシッカリとお聞かせいただいた上で、リフォームの方向性をお話合いさせていただきました。まず、屋根ですがK様のご希望は、葺き替え工事、でした。化粧スレートの屋根ですので予算や工期を考えるとカバー工法という手もあります。しかし、悪いものをそのまま蓋をしてしまうという事に抵抗があるとの事で葺き替え工事にて施工です。K様が今回のリフォームで一番直したいのも屋根の割れという事でした。外壁や付帯部分は原状回復の方向性で検討し、雨樋は全交換という案もあったのですがまだ十分使用に耐えるとの判断をおこない、漏水箇所の部分交換を行うこととなりました。一番のご要望の屋根は素材の塗膜にもメンテナンスの省力化を考慮されていらっしゃいましたので通常のポリエステル樹脂塗膜では無く塗膜のメーカー保証が20年と長期に安心なフッ素樹脂塗装を施されているタイプで施工方向が決定となりました。 【外壁・付帯部・擁壁塗装工事】
屋根葺き替え工事と外壁、付帯部分塗装工事のW工事となるわけですが、塗装工事を先行させて工事は着工いたしました。足場架設後は洗浄作業を行いました。広範囲を洗浄できるノズルを使用しての高圧洗浄です。屋根の洗浄が無い分、近隣への未洗浄水の飛散は比較的少ないですが、しっかりとご近隣挨拶をさせて頂いて当日の洗濯物の外干しは控えて頂きました。近隣の皆様ご協力ありがとうございます。
洗浄が終わった後は下処理という塗装では非常に大切な工程をおこなっていきます。下処理の良し悪しで仕上がりが変わってしまうほどです。まずはサイディングボードの目地部分の施工をおこないました。大手住宅メーカーの施工だけに目地部分も施工基準に則ってしっかりと施工が行われていました。それでも経年の劣化は避けられませんのでサイディング目地は打ちかえを行います。目地を外すとボンドブレーカーという二点接着の為の保護膜がバックアップ材とともに入っています。こちらも既存野目地を外す際に取れてしまうことがありますので新しいものを入れて施工を行っていきます。
目地の両サイドはマスキングにて保護を行います。無用にはみ出たシール材は仕上がりも悪く見えますしよくありません。コーキングをヘラを使って摺り込んでいきます。この摺り込んでいくことが大事なことです。もちろん使用するコーキングはノンブリードの物を使用しています。
開口部周りは、増し打ちという方法になります。全体のシール作業が終了したら下地調整という段階に入ります。それは、ケレンともよばれる磨き作業も含まれます。洗浄だけでは落としきれない汚れや凹凸をマジックロンやミガキロンといった不織繊維でできたやすりのようなものでこすっていきます。
樋や霧除け屋根も同様なケレンを入念に行います。
玄関横のポーチ柱もケレンします。
玄関門扉のような入り組んだ形状の部分にはブラシを使用したりします。汚れや錆は塗装の妨げにしかなりません。今回のK様邸工事で使用する塗料です。左からパーフェクトトップ、中央上がケンエース,中央下がファインパーフェクトトップ,右はパーフェクトサーフです。パーフェクトトップが二種類あるのはファインパーフェクトトップは弱溶剤型だからです。弱溶剤型のパーフェクトトップは雨樋、霧除け屋根、鉄部塗装に使用いたしました。
外壁の塗装工事に入ります。下地補修やサイディングボード目地の処理が終わったあとに、下塗りを行います。下塗りには窯業系サイディングボード改修用下塗り材、パーフェクトサーフを使用します。下塗り塗料でありながら防藻、防カビ機能を有しております。また微弾性もあるのでヘアークラックへの追従性もあります。
軒天上には、ケンエースG-Ⅱを使用いたします。シーラー不要で塗装が可能ですので、下塗りが二度塗りするうちの一回目となります。雨樋も工程は二度塗りを行いますので下塗りが一回目の塗装工程になります。雨樋にはファインパーフェクトトップを使用いたしました。
金属部分の塗装でも、土台水切りには下塗りで錆止め塗料を塗装しています。
金属部分でも玄関ポーチ柱や門扉には金属用のプライマーを下塗りに行っています。ローラーに色が付いていないのでお解りになりますでしょうか?
外部の擁壁も通常の外壁サイディングボードを塗装する工程と一緒で、パーフェクトサーフを下塗りいたしております。
下塗り塗装が終わりましたら、三工程あるうちの二工程め、中塗りに入ります。中塗りには外壁サイディングボードには、パーフェクトトップを使用いたしました。一液水性ラジカル制御形ハイブリッド高対候塗料という難しい名前の塗料の種別になっていますが、簡単に言いますと日本ペイント独自の紫外線対策技術を盛り込んだ比較的新しい塗料です。同社の一般的な水性シリコングレードと比較しても非常に優れた耐候性を有しています。お客様にも人気の高い塗料です。
外壁サイディングボード同様、外部擁壁にも同じ工程で施工しています。
鉄部には、同じパーフェクトトップでも弱溶剤型を使用しています。
塗装工程の最終工程の上塗りです。パーフェクトトップは隠蔽性も高く、施工もしやすいという面もあって施主様にも施工側にも双方にメリットがあります。
軒天上も上塗りを行っていきます。もちろん二回で仕上がらない場合は三回ぬって仕上げます。玄関ポーチ柱も上塗りをおこなっています。
外壁サイディングボードはもちろん、換気扇フード、エアコンのダクトカバーなどもシッカリ塗装を行っています。霧除け屋根もツヤツヤピカピカです。
K様の気にされていた、ベランダのパンチングメッシュ部の塗装もうまく仕上がりました。夕日にあたってキレイですね。
門扉と同素材でできているフェンスもキレイになりました。ただし、門扉やフェンスの塗装は施工保障の対象外となりますのでご了承願います。タッチアップはこの後施工に入る屋根葺き替え工事が終了した後に行うことになります。 【屋根葺き替え工事】
屋根の葺き替え工事は最初の段階は大人数で入ることが多いです。それは、葺き替え工事は今まで付いていた屋根材を一度すべて取り外してしまわなければならないからです。そして新規の防水紙を敷設するところまでは最低限でも終了させなくてはなりません。まずは屋根材の化粧スレートを剥がすにあたって棟板金などを外していきます。
入母屋の形態になっている屋根の一部分です。こちらの破風部分の板金も一度剥がしてしまいます。屋根材を剥がすうえで障害となっていたものがすべて撤去された後は化粧スレートの屋根材を屋根の棟側から釘を抜きながら剥がしていきます。
簡単に剥がれるもの、防水紙のアスファルト成分とくっつきなかなか剥がれないもの、と混在する中とにかく作業は急ピッチで進められます。化粧スレート屋根材の1枚当たりの重量は約3キロちょっとですが10枚も重ねるとなかなか屋根の上では動くのが難しい重さです。昇降機を使用してトラックに乗せ換えます。この化粧スレートの処分ですが、有害なアスベスが含まれているかいないかで処分費も大きく変わります。K様邸の屋根材にはアスベストが含まれておりました。
既存の屋根材をほぼ取り去った様子です。既存の防水紙にくっついて剥がれない化粧スレートの欠片を削って完全に撤去し終わってから新たな防水紙の施工となります。K様邸で葺き替えに使用する屋根材はIG工業のガルテクトフッ素です。屋根材には飛び火性能や耐風圧性能、水密性が求められますのでメーカーも一定の基準を設けて認定を得ています。その際に問題となるのが屋根材の下地の仕様です。防水紙はアスファルトルーフィング940以上の物、耐水合板12mm、タルキの間隔は455mmでの条件です。
新規屋根材のガルテクトフッ素です。三層構造になっており、表面材はエンボス加工遮熱性フッ素樹脂塗装ガルバ鋼板でできています。厚みは0.35mmです。真ん中にはポリイソシアヌレートフォームという断熱材があり、裏面はアルミライナー紙で覆われています。ガルテクトは遮熱性フッ素樹脂塗装では無い通常の遮熱性ポリエステル塗装のモデルもあります。遮熱の原理は通常の塗装で使用する高日射反射率塗料と同じで赤外線を反射させることで温度上昇を防ぐようになっています。鋼板屋根と聞くと暑いのではないか?といったご質問をよく頂戴いたしますが実際は化粧スレートの屋根と比較しても10℃も温度が低いのです。また、葺き替えで使用する際の一番のメリットは軽量化に尽きるでしょう。K様邸の屋根はもともと化粧スレートでしたので屋根の上にかかっている重さはガルテクト葺き替えで約四分の一になります。
屋根の棟と言われる部分には親棟と言われる屋根の頂点で地面に対して平行な部分と隅棟と呼ばれる地面に対して下りている棟があります。K様邸の隅棟はよりデザインが美しい、差し棟キャップ、を使用して仕上げています。
また、ケラバ面にも通常は通しで納めるケラバ水切りという板金を使用しますが、差し棟キャップとの見た目の差異が出ない様に、ケラバキャップ、を使用いたしました。雪止め金具は各面に設置しています。
各部へのシール処理、親棟への棟包み、換気棟の施工を終えて屋根の葺き替えは終了です。 【最終確認】
屋根葺き替え工事も終了し、いよいよ足場の解体になるわけですが最終確認をおこなって、タッチアップをいたします。屋根工事の方が後だったこともあり若干の樋の擦れなどがあるためタッチアップをおこないました。タッチアップとはいえ、軒樋は塗り斑が出てしまう為、外周をグルット一回塗りなおしました。
細かい部分ですが、土台水切りに付着した塗料なども確認して処置いたします。施工職人と各部分の確認を終わらせ、お客様にもご確認をいただいていよいよ足場の解体になります。
足場とメッシュシートで全体像が見えにくかったのですが、一気に解放されたかの様です。外壁面に関しては現状復帰に近い方向性の施工もあり、大きな変化は感じられない様に思われるかもしれませんが、色褪せてしまっていた幕板や鉄部が塗装されてK様邸をよりいっそう引き立たせてくれるように見えます。
記事内に記載されている金額は2021年06月24日時点での費用となります。
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