旭化成のパワーボードを使用している住宅です。築10年目ということで屋根外壁塗装をご検討中とのことでした。
パワーボードはサイディングやモルタルの使用率よりも低く、メンテナンスについての情報も多くはありません。そこで今回はALCの特徴と長期的に使用していくための注意点をご紹介していきます。
ビフォーアフター
工事基本情報
点検の様子
スタイリッシュなデザインの2階建て住宅です。外壁材は全て旭化成のへーベルパワーボードですが、2種類の外壁材で色も塗り分けている為、全く違った印象を感じさせますね。
形状も複雑なため、見る方向によって住宅が別の住宅の様に見えとてもお洒落です。
正面の外壁材に染みのように見えるのは、目地の汚れやひび割れが関係していると思いますので、綺麗に塗り直し色違いを解消したいですね。
ALCって?
旭化成のパワーボードというと、ALCと呼ばれる外壁材です。ALCというとへーベルハウスと連想できるほど注目されている建材です。
ALCとはまず、Autoclaved Lightweight aerated Concreteの頭文字をとり名付けられましたが、簡単にいうと「軽量気泡コンクリート」のことを指します。
コンクリートは不燃材ですので耐火性はもちろん、遮音性・耐久性・気密性に優れています。但し、コンクリート自体が重いためもっと使いやすく、軽量化を図り耐震性を向上させたのがALC外壁です。
ALCは材料を高温・高圧の蒸気で養生することで内部に無数の気泡の穴を作り、コンクリートの約1/4程の重量を実現させました。コンクリートの良い部分はそのまま残し、内部の気泡の穴が空気の層を作り断熱効果まで手に入れることが出来ました。
大型建築物には75㎜以上の厚型パネル、一般住宅では50㎜以下の薄型パネルが使用されていることが多いです。
50年といわれる高い耐久性、住み心地の良い室内の実現と良いことが詰まった外壁材ですが、もちろんどの外壁材にもデメリットが存在します。
ALCには早めの塗装が必須です
ALCはサイディングと同じくパネル形状の為、施工でできたジョイント部分はシーリングで埋められています。その為、シーリングが劣化してしまうとその部分から雨水が浸入し、外壁材だけでなく室内に影響を及ぼす恐れがあります。
またALCの主成分がセメントのため吸水性が高い性質を持っています。吸水を防いでいるのは塗膜の為、塗膜の劣化=外壁材の劣化に直結してしまう外壁材でもあります。
最後のデメリットは費用です。耐久性・機能性に大変優れている為、施工単価は高額です。そのような外壁材をメンテナンスを怠ったせいで張り替え補修…ということにはしたくないですよね。目地と塗装は必ず行っていきましょう!
スレート屋根も主原料はセメントと繊維質ですので塗装必須の建材です。スレートの劣化サインとしては、全体的な色褪せ、雨染みや汚れ・カビ・苔の付着、ひび割れです。
雨水を吸い込むことによって、屋根材の浮きや反りを起こし割れやすくなってしまいますので、10年程度での塗装メンテナンスを意識していきましょう。
塗装の際には棟板金の固定や、雪止めの破損がないかの確認も合わせて行いましょう。
バルコニーです。FRPとウレタン防水は見た目が似ている為判断しにくいのですが、防水面に爪を立てて押した際に凹むような柔らかさがウレタン、堅いのがFRP防水です。
また、FRPは下地に繊維状のガラスマットを使用している為、細かな凹凸が確認できます。
FRPの耐用年数は10~13年程度ですので、塗装工事の際には補修が必要な時期かと思います。
防水表面にヒビがあるからと不安に感じるかもしれませんが、表層のヒビはトップコートですので、防水性能自体に問題はありません。
しかし放置すると防水層が劣化し、知らぬ間に雨漏りを起こしていることもありますので、定期的な点検と補修はしっかりと行っていきましょう!
カラーシミュレーション
塗装前のカラーシミュレーションです。玄関正面と側面での塗り分けは変えずに色の変更を検討中です。
塗り分けは濃淡をしっかりと出した方がメリハリがある住宅に仕上がります。
左画像はブラウン、右はブラックです。使用色は同系色でまとめると綺麗にまとまります。
例えばブラウンにはイエローやベージュ・ピンク・ホワイト系と合わせてカジュアルな印象を、ブラックにはグレー・ホワイト系でスタイリッシュな仕上がりがイメージできます。
今回は既存のネイビーも視野に入れ、塗り替え寸前までご希望の色を絞り込んでいきたいと思います。
屋根外壁塗装工事
ご近隣の方へ塗装工事のご案内とご迷惑をおかけしてしまう旨を伝え、工事開始です。
まずは足場の仮設です。安全のため一時的に車の移動をお願いする場合もありますのでご了承ください。単管や踏板を運び、作業が安全に行えるように組み立てていきます。
仮設後は水や塗料の飛散防止にメッシュシートを取り付け、玄関周りには単管に養生を行い衝突や怪我を防いでいきます。
希望の仕上げ色は既存外壁に近い色ですが、見本帳で見るとわずかな違いがある近似色は数色あります。そこで気になる見本板を取り寄せ実際に見比べて決めていきましょう。
全て艶消しで条件をそろえていますので、陽に当たった状態や日陰の様子を見て好みの外壁になるように選んでいきましょう。
塗装工事は必ず高圧洗浄で塗装部分を綺麗に洗い流していくことから始まります。
一般的な家庭洗浄機はせいぜい13MPaですが、塗装前に綺麗な状態にするためには14.7MPa以上の強烈な水圧が必要です。
屋根や外壁の表面をそぎ落とすイメージでこびりついた汚れや旧塗膜を洗い落としていきます。屋根から徐々に下に向かって流していきますが、だんだんと流れる水が黒くなっていくことが確認できます。
洗浄し乾燥後は硬化に時間がかかるシーリング工事から行っていきます。シーリングは目地と開口部周りですので、目地通りをよくするためにマスキングテープで養生し、打設していきます。
この段階ではシーリング用の養生ですが、硬化後は塗料が付着しないようにサッシに養生を行い直していきます。
シーリング補修には増し打ちと打替えの方法がございますが、目地は打替え、開口部は増し打ちとすることが多いです。開口部はカッターでシールを撤去する際にサッシに傷を付ける可能性がある為、目地はシーリング本来の耐久性を発揮しなければ、亀裂や剥離が早く出てしまう恐れがあります。
既存のシーリングを撤去し綺麗な下地に整えていきます。シーリングが密着するようにプライマーを塗ってからの施工です。
使用したのはオート化学工業のオートンイクシードです。通常のシーリングは5年程度でひび割れが起き始めてしまいます。するとシリコンやフッ素の高耐久塗料を使用しているのにシーリングの補修が必要になるというメンテナンスサイクルのずれが生じます。
そこで高耐久・高耐候で20年長持ちするオートンイクシードを使用することで、塗装と同じくもしくは2回目の塗装時にシールの補修が不要になる可能性もあります。
メンテナンスサイクル・コストどちらを考えても効率的ですので、ぜひお勧め致します。
外壁のシーリングが硬化し次の作業に入れるまで屋根の塗装工事を行っていきます。今後錆びることが考えられる棟板金や雪止め等の錆止め塗装をしていきます。
以前は錆止め=赤茶色というイメージでしたが、白やグレー・ブルー等もございます。原料の鉛が公害問題から使用されなくなったためです。
鋼板は表面が滑らかなため、塗装前にペーパー掛けで目荒らしを行ってから塗装をしていきます。
浮いている釘は打ち直しコーキングで雨水の浸入を防いでいきます。
スレートのひび割れもコーキングで補強してから下塗り塗装を行っていきます。この後にもひび割れを見つけ次第こまめに補修を行っていきます。
下塗り後は屋根材間にタスペーサーを差し込んで隙間を作っていきます。屋根は雨が降った時にすべてを屋根材で防いでいる訳ではなく、下地の防水紙でも雨水を流しています。
その為どの屋根材でも入り込んだ雨水が排出できるように隙間が必ずある構造になっています。
しかし、スレート屋根材は薄いため塗装をすると屋根材同士がくっつきやすくなります。そこで雨水の出口がなくなり、内部で毛細管現象を起こしてしまいます。するとじわじわと室内に染み込んで雨漏りを起こしてしまいます。
このようなことにならないようにスレート屋根材はタスペーサーか皮スキ等での縁切りをする必要があります。
タスペーサーを設置することで屋根が割れやすくなったりといった不具合は起きませんのでご安心ください。
続いて中塗り・上塗りです。下塗りとW遮熱機能を持つサーモアイSiのクールディープグレーを使用しています。
日射反射率は32.9%、暗くなりすぎず落ち着いた印象で外壁色とも合わせやすい仕上がりになりますね。
中塗りの時点ではまだ下地の色が透けていることもありますので、2回重ね塗りで本来の塗料の色と機能を発揮させます。
艶感も蘇りますし雨水をしっかりと弾いてくれます。耐用年数は10年程度といわれていますが立地によっても多少前後します。定期的な点検は行っていきましょう。
霧除けも屋根と同じ色にすることによって住宅に統一感が生まれます。
外壁塗装です。シーリングが指に付着しないことを確認してから3回塗りで仕上げていきます。
使用するパーフェクトトップはラジカル制御型ハイブリッド高耐候性塗料と呼ばれ、シリコンともフッ素とも違うグレードに位置します。
特殊な技術により、耐候性はシリコングレード以上ですが、下地の隠ぺい性も高い為仕上がりも美しく、水性塗料の為臭いもきつくありません。
更に通常塗料では難しい艶の調整が細かく出来るのです。色は日本塗料工業会の見本帳からお選びいただけますので、お客様のご希望通りに仕上げていくことが可能です。
白い部分はND-400、濃い部分は75-30Bです。どちらも艶消し塗料を使用していますので新築当時のようなマットな質感です。
下塗りの段階で下地の色が気にならないほどかぶりが良い為、色が綺麗に発色しています。
細かい部分は先行して塗り、ローラーで液だれやムラがないように塗装していきます。塗り分けで重要なのはいかに綺麗に区切るかです。
外壁材の柄や向き等わかりやすい色分けが出来れば良いのですが、目印がない場合は丁寧に揃えていきます。
残りは付帯部塗装です。外壁や屋根と比べると小さく目立ちにくいと思われがちですが、軒天・雨樋・笠木は住宅をぐるっと囲うようにあります。塗装をするしないでは住宅の明るさが全く違いますので、ぜひ色にもこだわって欲しいですね。
軒天はなるべく明るい色での塗装をお勧めしております。暗い色は住宅に重厚感を与えますが、全体的に重い印象を与えてしまいます。
付帯部は外壁と同じくパーフェクトシリーズのN-90です。完全な白ではないため汚れも目立ちにくく柔らかな印象を与えます。
溶剤(油性)塗料ですので耐久性にも優れ長期間に渡って付帯部を保護してくれます。特に破風板や鼻隠しに木材が使用されている住宅は、塗膜の剥がれで木部が腐食してしまいますので、素地が見えるまで放置せずに塗装もしくは板金カバーで状態を維持していく必要があります。
雨樋は劣化しないと思われている方が多いのですが、紫外線により硬化していきます。すると少しの衝撃で割れやすくなってしまいますので、色褪せの解消だけでなく表面保護が必要なのです。
笠木までしっかりと塗り直しタッチアップを行えば外壁塗装は完了です。外壁はもちろん、破風板や軒天を塗り直すことで、新築の頃のような輝きを取り戻すことが出来ました。
ND-400は薄いグレーですので、浮いた印象もなく爽やかに仕上がりました。
最後にバルコニー防水の補修工事です。剥がれそうな部分は剥がし、アセトンで拭き表面の油脂を取り除いていきます。その後プライマーを塗り防水剤の密着性を高めます。
工程は屋根外壁塗装と大きく変わりませんがバルコニーやベランダは歩行することが想定されるため、密着力や塗料の厚さは非常に重要です。
防水の再施工は必要ないほどの劣化は防水1層やトップコートのみでも補修は可能です。
今回は剥がした部分がある為凹凸解消に防水を1層、乾燥後にトップコートで保護を行いました。
漏水を起こしている場合は、すでに防水層に問題があるので補修や再施工が必要です。内部木材が腐食するような事態になるまで放置をせずに早めに補修を検討していきましょう。
習志野市の屋根外壁塗装工事完了致しました。
屋根に遮熱塗料サーモアイを使用することで、屋根表面の蓄熱を抑え室内の温度上昇の低減にも繋がります。結果的にエアコンの設定温度も下がり節電、地球温暖化対策にも貢献します。
艶の蘇った屋根材が太陽光を綺麗に反射し光り輝いていますね!
今回の外壁塗装で塗り替えだけでなく、ALC外壁の弱点である吸水性を塗膜保護によって解消できました。
高耐久オートンイクシードで目地からの雨水浸入を防ぎ、パーフェクトトップで色褪せしにくい・汚れにくい・自由な艶感の外壁を実現しました。
下地にフィラーを使用することで経年によってできた細かな凹凸も埋まり、滑らかな表面に仕上がっています!
屋根材・外壁材の特徴を理解し、適切な塗料・施工でメンテナンスを行うことが出来ました。お客様には仕上がりと今後のメンテナンスのしやすさを含め、大変満足していただけました!
塗装と一言で言っても実際にはお住まいによって注意点・補修箇所・向き不向きの塗料があります。また塗り替えだけでなく、特殊機能を持つ塗料を使うことで生活が快適になることもあります。
外壁材・色についてのご質問、施工上の不安等気になることがございましたらお気軽にご相談くださいませ。お悩みを解決し、新築時の綺麗を取り戻しましょう!
記事内に記載されている金額は2019年12月05日時点での費用となります。
街の外壁塗装やさんでは無料でのお見積りを承っておりますので、現在の詳細な費用をお求めの際はお気軽にお問い合わせください。
外壁塗装、屋根塗装、外壁・屋根塗装、ベランダ防水の料金プランはそれぞれのリンクからご確認いただけます。