新築当時はきれいだった外壁も、年月が経つにつれて劣化が見られるようになります。劣化のサインには色あせやチョーキング(白亜化現象)、そしてクラックなどがありますが、状態に応じて適切なメンテナンスを行うことが重要です。
今回の記事では外壁劣化のサインの一つ「クラック」について取り上げています。クラックとは外壁に発生した亀裂やひび割れのことです。外壁にひび割れが生じると「ここから外壁の割れが広がってしまうのではないか」と不安になってしまいますよね。そのようなご不安を解消するために、クラック発生の原因やクラックに伴うリスクについて、またクラックのレベルに応じたメンテナンス方法を徹底解説します。
これからも長く住み続ける大切なお住まいです。深刻な状況になる前に原因をつきとめ、最適なメンテナンスでお住まいの寿命を長く保ちましょう。
目次 【表示】 【非表示】
- ・クラックは危険サイン?
- ・クラックの種類と発生の原因
- -ヘアクラック
- -構造クラック
- -開口クラックにも要注意!
- ・クラックの幅で見るクラック補修必要度チェック
- ・クラックの幅を簡易的に計測する方法もあります
- ・クラックが引き起こすお住まいのリスク
- ・外壁クラックの補修方法と価格の目安
- -ヘアクラックのメンテナンス方法とは
- -構造クラックのメンテナンス方法とは
- -DIYでもクラック補修はできる?
- ・外壁のチョーキング現象(白亜化)にはクラック補修+全面塗装がおすすめ!
- ・外壁の劣化症状をチェックしよう
- ・外壁にクラックを見つけたら街の外壁塗装やさんの無料点検をご活用ください
- ・ストップ!飛び込み業者には注意しよう
- ・まとめ
お住まいの外壁に使用される建材は、窯業系サイディング、モルタル外壁、ALC外壁そしてコンクリートなどさまざまです。どれだけ耐久性・耐候性に優れている外壁材を使っても、外壁材が常に紫外線や熱、雨風に晒されていることに変わりはありません。他にも、地震や自然災害の影響も外壁劣化の原因です。新築時にどれだけ慎重に外壁材を選んだとしても、残念ながら経年による劣化や傷みを完全に排除することはできません。
特にクラック(ひび割れ)は目に見える劣化サインですから、見つけてしまうと心配になるかもしれません。しかもクラックが複数発生している場合や、大きいものだとなおさらです。しかしクラックがあるからといって、すぐに補修しなければいけないのでしょうか?
クラックは危険サイン?
クラックとは、外壁にできる亀裂やひび割れのことです。厳密に言うとクラックにはヘアクラックという幅0.3mm以下の細いクラックと、構造クラックや開口クラックという深いクラックの2種類があります。
外壁材にひび割れが発生すると、塗膜を破って表面にクラックとして現れます。表面の塗膜を破ってひび割れが入ると、外壁が脆くなるのではないかと思うかもしれません。しかしクラックの状態によって補修が必要かどうかの緊急性は異なります。クラックが起きる原因は経年劣化もありますが、そのほかにも外壁材の特性や施工不良などが考えられます。また地震などの外的要因もクラックの原因です。これからも安心して住み続けるためにも、クラックの種類と原因についてもう少し詳しくみていきましょう。
ヘアクラック
ヘアクラックとは名前の通り「髪の毛のように細い」クラックのことです。厳密に言うと幅が0.3mm以下、深さが4.0mm以下のひび割れのことをヘアクラックと呼びます。ヘアクラックはモルタル外壁や窯業系サイディング、コンクリート外壁などさまざまな外壁材に見られる症状ですが、ひび割れが外壁の表面だけで微細なものであれば緊急性はありません。ヘアクラックなら見た目が気にならない限り、たとえ構造上重要な柱や、コンクリート内部の鉄筋の錆でも焦って補修する必要はないでしょう。念のためクラックが大きくなったときの確認用に写真を撮っておくと参考になります。
ちなみにヘアクラックは塗装で改善することが可能です。塗装をご検討いただく際は、塗装業者にヘアクラックのことを相談していただくとより安心です。
ヘアクラックの特徴 | 髪の毛ほどの細い外壁表面のクラック |
クラック幅 | 0.3mm以下、深さ4mm以下の微細なひび割れ |
メンテンスの必要性 | 慌てる必要のないクラック |
●ヘアクラックはなぜできる?
ヘアクラックができる原因は主に2つです。それぞれ詳しくみていきましょう。
原因①塗膜の経年劣化
ヘアクラックの主な原因は経年劣化です。外壁は常に紫外線や雨風の影響を受け、何度も乾燥・膨張を繰り返します。その加わる力に外壁材の塗膜が耐えられなくなることが、小さな亀裂が発生する原因です。
外壁材に使用する塗料にはそれぞれ耐用年数があります。しかし耐用年数に見合わず、短い期間でヘアクラックが発生してしまうのであれば施工の問題かもしれません。塗料には十分な乾燥時間が必要ですが、施工時の乾燥時間が足りなかった…外壁材と塗料の相性が良くなかった…または塗料の特性を理解しないまま施工してしまった…というケースです。
たとえば塗料の特性でいうと、塗装の下地に弾性塗料を使用し、上塗り塗料に硬質塗料を使用すると表面塗膜にクラックができやすくなります。弾性塗料は伸縮性がありクラックに強いのですが、上塗りの硬質塗料がその弾性特性についていけないからです。このように塗料に適した乾燥時間や特性を理解せずに施工することで、ヘアクラックが生じることもあります。
●ヘアクラックと乾燥収縮
外壁材の中でもモルタルやコンクリートはクラックが起こりやすい建材で、乾燥収縮によってヘアクラックが生じます。モルタルやコンクリートは「湿式工法」といって塗布する前に水を混ぜています。そのため塗布したあとは乾燥による収縮を起こし、その過程でヘアクラックが生じるのですが、モルタルやコンクリートの特性ですから、0.3mm以下のヘアクラックなら特に心配する必要はありません。
構造クラックとは
深刻で構造に影響を及ぼすひび割れ(クラック)を構造クラック、または貫通クラックと言います。幅0.3mmを超える深いクラックは外壁内部から外壁材自体が割れている可能性があり、補修が必要な緊急性の高いものです。クラックから雨水が侵入し、劣化や腐食を起こすだけでなく、建物の構造そのものが低下してしまいます。被害が拡大する恐れがあるため、専門業者に点検・メンテナンスを依頼することをおすすめします。
構造クラックの特徴 | 構造に影響を及ぼす可能性の高い深刻なひび割れ |
クラック幅 | 幅0.3mmを超えるクラックは構造クラックの可能性 |
メンテンスの必要性 | 補修が必要となるクラック |
ヘアクラックと違い、構造クラックは建物の構造が歪み、外壁内部から割れてしまっている状態です。構造自体に問題があるため、早急に点検・補修が必要です。構造クラックが起きた原因は2つ考えられます。一つ目は小さなクラックが構造クラックへ進行した可能性。そしてもう一つは、地震や不同沈下などの外的要因によるものです。また建物の構造を補強する筋交い等の不足などにより、建物が受ける揺れ・歪みが想定以上にかかってしまうと構造クラックが発生することになります。
●開口クラックにも要注意!
建物に負担がかかることで発生するクラックの中には「開口クラック」と呼ばれるものもあります。開口クラックとは、「開口部」つまり扉や窓の周辺に発生するクラック(ひび割れ)のことです。建物に歪みが生じ、外壁が上下左右にずれると扉や窓の角から斜めに亀裂が入ります。窓などの開口部は通常外壁から20mmほど外側に突き出ているため雨水の通り道になりやすく、ラックが外壁内部への雨水の侵入を許すと雨漏りを引き起こします。雨漏りにつながってしまう前に、早めのご対応いただくことをオススメいたします。
クラックの幅で確認!補修必要度チェック
ヘアクラックと構造クラックの違いをご説明しましたが、実際にお住まいのクラックの危険度を判断することは難しいかもしれません。緊急性の高いクラックであれば放置することは危険ですし、様子をみても大丈夫なクラックとはどこまでなのか不安になることかと思います。ここではクラックの幅からどのくらいの危険度(補修必要度)なのかをご紹介します。一つの目安としてご参考いただければ幸いです。
クラックの幅が0.3mm以下であれば構造には直接の影響がないレベルです。緊急性は低いため、このまま見守りの状態で構いません。ただしクラックの進行には注意が必要ですから、定期的に確認することをおすすめします。
幅0.3mmを超えるクラックの場合、構造クラックの可能性があります。このまま放置して大規模な補修が必要になってしまう前に、専門業者に点検をご依頼ください。そのうえで必要な補修について相談することをおすすめします。
幅1.0mm以上のクラックは構造クラックです。建物の構造自体に問題がある可能性が高いため、早急な点検・補修が必要です。外壁表面の補修に留まらず、下地や構造部分の点検・補修まで専門業者にご相談ください。
幅3.0mmを超えるひび割れであれば、クラックがかなり進行しています。この状態で長期間放置されていたとすると、かなりの雨水が建物内部に侵入していることが予測されます。構造部分にかなりの影響が出ているため、緊急に改修が必要です。信頼できる専門業者にご相談ください。
クラックの幅を簡易的に計測する方法もあります
外壁に不具合が生じた場合、そのまま放置しておくと、そこから雨漏りや外壁内部の腐食につながる恐れがあります。なかなか外壁をじっくり観察する機会は少ないかと思いますが、外壁を健康な状態に保つためには早期発見・早期補修が何より重要です。大切なお住まいに長く住むためにも定期的に見回ることをおすすめします。
クラックの深刻度を測るには「クラックスケール」というクラックの幅を計るツールが便利です。クラックスケールはホームセンターもしくはAmazonなどのオンライン通販で簡単に手に入れられます。価格は500円程度です。「わざわざ購入するのはもったいない」という方には、ハガキを使用する方法がオススメです。ハガキ1枚の厚さは約0.3mmですから、ハガキの厚みより細いヒビであればヘアクラックだと予測できるでしょう。発見した際に小さかったクラックでも、定期的にクラック幅を計測することで進行性のクラックかどうか確認することもできます。
クラックがないか定期的に確認を行い、そしてクラックを発見した場合には正しく対応することで被害を最小限に抑えましょう。
外壁を健康な状態で保つことは非常に大切です。外壁には、雨風や紫外線だけでなく、外気との温度差から私たちを守る重要な役割があります。しかしそれは外壁が健康な状態であればこそ。もしも外壁に問題が生じれば、私たちを守るべき外壁がたちまち生活を脅かすリスクへと変わってしまいます。
外壁のクラックはその隙間から雨水が浸入する危険があり、長期間放っておくと外壁材が剥がれたり、内部構造の崩壊を招くかもしれません。
室内への雨漏り
外壁の問題から雨漏りに発展することはよくあります。屋根から雨漏りする場合は雨漏りが階下に伝わるため原因が分かりやすいのですが、クラックからの雨漏りは原因を特定しづらいです。なぜなら外壁のクラックから侵入した雨水は、外壁内部を伝って思わぬところから現れることがあるからです。たとえば窓枠からにじみ出てくる水はサッシが原因かもしれませんし、外壁のクラックが原因のこともあります。水の侵入に気づかずにいると、深刻な被害につながりかねません。では実際にどのような被害が考えられるのでしょうか。
リスク①構造体の劣化・腐食
木造住宅も鉄筋コンクリート造(RC造)も建物の大敵は水分です。木造住宅には外壁材の下に防水紙があり、建物の構造部分にまで水分が入り込まないように施工されています。しかし雨水の侵入を長期間放置しておくと、水分や湿気によって次第に防水紙が傷みはじめるのです。防水紙が劣化すると構造部分にまで雨水が侵入し、カビや木材腐朽菌が繁殖する原因になります。カビや木材腐朽菌が繁殖すると、そこから木材が腐食を起こして建物の耐久性が著しく落ちてしまうため、その前に早急な対策が必要です。
一方鉄筋コンクリート造(RC造)はコンクリートのアルカリ性によって鉄筋が守られています。しかしクラックから雨水や空気が浸入すると、徐々に耐食性が失われて酸化し錆の原因になります。錆は金属の腐食です。構造部分の鉄筋が錆びると建物全体の強度の低下に繋がります。
リスク②爆裂現象
クラックが引き起こす被害の一つに「爆裂現象」があります。爆裂という物々しい名前に驚く方もいらっしゃるかもしれません。爆裂現象とは外壁内部の鉄筋が錆びて体積が膨張し、表面のモルタルやコンクリートを内から押し出して外壁を破壊することです。外壁表面が割れてしまうため、そこからさらに雨水が侵入し腐食が進行してしまいます。
クラックの種類やそれぞれの発生原因、そしてクラックが招くリスクについてご説明させていただきましたので、ここからは本題の「補修方法」について解説します。クラックの補修方法は大きく分けて3種類です。クラックの状態や深刻度によって最適な補修方法は異なります。費用も補修方法によって変動しますが、目安の料金を掲載しておくので参考にしてください。ただし実際にはこの料金に加え、足場の架設費用や諸経費がかかります。またメンテナンスと一緒に外壁塗装を行う場合は、その塗装費用も頭に入れておかなければいけません。
●補修方法①外壁塗装
ヘアクラック(幅0.3mm以下のひび割れ)には外壁塗装が有効です。クラックを埋めるように弾性塗料を使って塗装します。外壁塗装はクラック部分だけでなく、全面の塗り替えが必要です。そのため費用は塗装面積に応じて変動します。
●補修方法②シーリングの充填
軽度なクラック(ヘアクラックなど)にはシーリングの充填を行います。ひび割れ部分をシーリングで埋めて補強するのです。シーリングの充填にかかる費用は1mあたり500円~900円です。
●補修方法③カット工法(Vカット・Uカット)
クラックが0.3mm以上ある場合は、カット工法を行います。クラックとその周りをあえてカットしてクラック幅を広げ、接着面を大きくしたところで樹脂を充填する方法です。カット工法にかかる費用は1mあたり1,500円~2,000円です。
ヘアクラックのメンテナンス方法とは
幅0.3mm以下のヘアクラックであれば、ヒビは表面の塗膜で対応できます。微細なクラックなので塗装でカバーできますが、塗装の際には今後のクラック発生リスクを抑えるためにも「弾性塗料」を使用することをおすすめします。
具体的にはヘアクラックの発生個所を下塗りフィラーで埋め、その上から弾性塗料で上塗りをし外壁表面を保護する方法です。弾性塗料を使用するとその伸縮性によって、膨張・収縮といった建物の動きに追従でき、将来のクラック発生リスクを下げることができます。
弾性塗料はゴムのような伸縮性のある塗料のことです。伸縮性のある弾性塗料を使用することで、外壁表面を衝撃や雨水の侵入から守ることができます。特に弾性塗料の使用をおすすめしたいのはモルタル外壁です。モルタル外壁は前述したとおり乾燥収縮を起こしやすい建材であるため、伸縮性のある弾性塗料でなければクラックが発生しやすくなります。
塗装による補修
モルタル外壁のクラック発生を止めることは難しいことです。今回ご紹介する補修例では筋状のクラックが複数発生したお客様からご相談いただいた事例です。点検させていただくと、どのヒビもヘアクラックであり建物自体に大きな影響がないことが確認できました。お客様には現状をご説明したうえで、塗装で補修可能な旨をお伝えしました。
お客様のお住まいの外壁は弾性塗料で対応可能でした。まずは下塗りの工程でパテのような機能を持つフィラーを用いてクラックを埋めていきます。その後中塗り・上塗りを重ねるとクラックは全く確認できなくなり、外壁もきれいに塗り替えられて生まれ変わったようになりました。
ヘアクラックなら塗装で対応できますが、クラックが進行してしまうと塗装だけでは済みません。クラックが大きくなると補修費用がかさんでしまいます。コストを抑えるためにも、またきれいな外壁を保つためにも、ヘアクラックのうちに早めに対処をしておくことがおすすめです。
●窯業系サイディングと弾性塗料の相性は悪い?
ヘアクラックには弾性塗料の使用をおすすめしました。しかし窯業系サイディングは弾性塗料と相性がよくないため注意が必要です。窯業系サイディングには蓄熱性が高いという特性があります。内部に熱を溜め込みやすいため、密着性の高い弾性塗料を使用すると内部にたまった熱が行き場を失って外壁が膨張し、表面の塗膜の膨れや剥がれに繋がるのです。窯業系サイディングに発生したクラックを塗装によって補修する場合には、知識と経験の豊富な業者に依頼することをおすすめします。
構造クラックのメンテナンス方法とは
構造クラックはヘアクラックよりも幅も奥行きもあるため、通常の塗装では対応できません。まずはクラックに溜まったゴミや汚れをきれいに落とし、補修材が密着しやすいように整えます。そのうえでプライマーを塗り、シーリング材(コーキング材)や樹脂モルタルを、もしくはコンクリート外壁の場合はエポキシ樹脂を充填して外壁のクラックを補修しなければいけません。
状態によってはクラックを広げる作業も加わります。グラインダーという機械でクラック面をVまたはU状にカットして広げ、樹脂モルタルをクラック断面に入り込みやすくするためです。
<構造クラック補修事例1>
シーリング材による補修
築30年のお住まいに発生した深い亀裂について、補修のご依頼がありました。外壁には目視だけでも複数の深い亀裂が確認できたため、亀裂箇所にシーリング材を充填して補修します。この深い亀裂の原因はいくつか考えられますが、地震が多い地域ということも大きいかと思います。
補修にはよく晴れた日を選ぶことがポイントです。シーリング材は雨に濡れると接着力が弱くなってしまうため、天気予報も確認します。補修はまずクラック部分の汚れやゴミを十分落とすことが重要です。汚れを落としたら専用ガンを使用して、上から塗装可能なシリコンシーリングを充填していきます。シーリング充填時は、クラックの奥までしっかりと入るように多めに埋め込むことがポイントです
シーリング材をヘラで亀裂箇所をならしながら押し込んでいきます。さらにシーリング材が盛り上がった部分を丁寧に取り除いていきます。
これで亀裂の補修は完了です。シーリング材によって亀裂跡はほぼ目視では分からない状態に回復しました。施工期間は1日のみですが、完全に乾くまでには3日ほど必要です。この上から塗装を加えるとさらに美しく仕上げられます。
<構造クラック補修事例2>
Vカット後、樹脂モルタルにて補修
2階窓部分からの雨漏りに関するご相談です。お伺いした現地調査で被害箇所を拝見させていただいたところ、木部の窓枠に雨水による染み、加えて窓下の壁に雨漏りによるクロスの破れも確認できました。
外から窓廻りの外壁を確認すると、外壁表面に多数のクラックがあります。ヘアクラックだけでなく、窓周辺からは開口クラックも伸びていました。以前にも雨漏りがあったのか、オーナー様ご自身がシーリング材で補修したような跡がありました。
さらに点検をすすめると基礎巾木(きそはばき)に大きな構造クラックまで確認できました。基礎巾木とは地面から出ている基礎の立ち上がり部分のことを指します。構造クラックの原因にはコンクリートの乾燥収縮以外にも地震や不同沈下の影響などさまざまです。しかし放置するとお住まいの強度自体が低下する恐れがあるため、早急に補修する必要があります。
構造クラックに補修材を充填する前に、グラインダーを使用してVカットでクラック面を広げます。Vカットを施す理由は補修材がクラックの奥まで行き届くようにするため、そして充填する補修材に厚みを持たせるためです。基礎巾木も同じようにカットしていきます。クラックを広げるこの工程は傷口を広げているように見えますが、充填する樹脂モルタルには十分な強度があるため心配する必要はありません。
Vカットを施したら、削った際に生じた粉塵を刷毛で丁寧に取り除いていきます。クラックの中に入り込んだものもきれいに除去しなければ、このあと充填する補修材が外壁にうまく密着しません。密着しないとせっかく補修してもすぐに剥がれてしまうため、このような細かい作業も非常に重要です。
粉塵がきれいに取り除けたあとは、下地材のプライマーを塗っていきます。プライマーには接着剤のような役割があるため、補修材を定着させるために必要です。補修材の浮きや剥がれを起こさないよう、プライマーの塗り残しやムラには注意します。
プライマーを塗ったあとはクラックに樹脂モルタルを埋めていきます。樹脂モルタルをひび割れや欠損部分に塗布することで、構造クラックによって強度が低下した外壁・基礎の補修が可能です。塗布する際にはクラック内部に空洞ができないようにコテでしっかりと奥まで樹脂モルタルを押し込んでいきます。
基礎巾木のクラック箇所は壁面よりも少し浅く充填します。これは塗装終了後に左官仕事で仕上げるためです。
補修したクラック部分を下塗りしていきます。画像で少しグレーになっている箇所が補修箇所で、この段階ではまだ塗膜から補修箇所が透けて見える状態です。ここから壁面に吹き付けでモルタルのパターン付け(模様付け)を施し、より壁面となじませていきます。
中塗り・上塗りを重ねて頑丈な塗膜を形成していきます。また塗り重ねることで色ムラもなくなります。画像の〇で囲んでいる部分が、今回の補修箇所です。色ムラもなく、クラックが入る前の状態に復旧していることがお分かりいただけるかと思います。最後に吹き付けによるパターン付けをしたことによって、補修箇所周辺との違和感もなく馴染ませることができました。
※基礎巾木クラックの左官仕上げ
基礎巾木のクラックには樹脂モルタルを少し凹ませて充填します。凹んでいる部分の仕上げには下塗り剤を塗り、既存の巾木に似た材料を塗り込んでいきます。凹みが平らになれば完成です。
塗りたては湿り気があるためクラックの補修部分が目立ちますが、乾燥すればほとんど目立たなくなります。基礎巾木のクラックは建物強度にかかわるものですから、これでお客様も安心してご生活いただけるようになります。
コンクリート外壁に行われるエポキシ樹脂注入とは
コンクリート外壁には厚みがあるため、エポキシ樹脂を注入して補修するケースがあります。ビックス工法と呼ばれる方法で、ひび割れの奥まで確実に埋めることが可能です。まず注入器固定用の器具をひびの部分に数か所取り付けて、周りをシーリングでふさいだ後、インジェクター(注入器)でエキポシ樹脂を亀裂部分に流し込みます。注射器のような形のインジェクターからゴムの力でゆっくりとエキポシ樹脂を充填していくのですが、時間をかけて樹脂を流し込むため、ひび割れの奥まで空洞を作らず樹脂がいきわたります。
DIYでもクラック補修はできる?
「小さなクラックならDIYでクラックを補修できるのでは?」と考える方もいらっしゃるかもしれません。確かにシーリング材やスプレー式の補修材などはホームセンターやオンライン通販などで簡単に手に入ります。たとえ構造クラックであっても、幅1mmに満たないような小さなクラックであればDIYで対応できるような気がするでしょう。
しかしヘアクラックと構造クラックの違いを判断することや、外壁内部に起こっている重大な劣化を見つけることはプロでなければやはり難しいです。補修箇所は目に見える小さなクラックだけではないことが多々あります。ご自身で補修するにしても、高い場所にあるクラックの補修は危険ですし、複数個所のクラック補修は想像以上に労力がかかるものです。そうして労力をかけてDIY補修をしても、正しく補修されていなければ割れや剥がれはすぐに再発生してしまいます。将来深刻な劣化を引き起こさないためにも、正確な状態把握および必要な処置はプロの目で診断してもらうことが重要です。もしもDIYで補修する場合は一時的な応急処置に留め、専門業者に依頼をしましょう
外壁のチョーキング現象(白亜化)にはクラック補修+全面塗装がおすすめ!
ご自宅に構造クラックが確認された場合は、早急なメンテナンスが必要です。またクラック以外にもチョーキング現象(白亜化現象)が見られるのであれば、一緒に外壁塗装もおすすめします。チョーキング現象は外壁塗膜が劣化したサインです。外壁を触ったときにチョークのような粉が手につくことから、チョーキング現象と呼ばれます。
クラック補修と同時に外壁塗装を行うことには、大きく4つのメリットがあります。
・クラック補修の跡が目立たなくなる
・既存塗膜と補修箇所の色ムラがなくなる
・経年による外壁の汚れや苔を除去し美しい外壁を取り戻せる
・チョーキング現象が起きて防水性能が落ちた外壁の機能を改善する
またクラック補修時に足場を仮設する場合は、全面塗装やその他のメンテナンスを同時に行うことで将来の足場仮設費用を節約できるのでおすすめです。外壁材にもよりますが、外壁塗装の目安は約10年と言われています。いずれ行うのであれば同時に依頼する方が、数年後にまた依頼するよりもお得なのです。前回の塗装から耐用年数が近づいてきているのであれば、外壁全体のメンテナンス時期だと考えてみてはいかがでしょうか。
外壁の劣化症状をチェックしよう
外壁に発生するクラックはわかりやすい劣化症状です。しかしクラック以外にも外壁にはさまざまな劣化症状があります。これから外壁劣化のサインをご紹介しますので、このような症状が見られる場合は塗装・補修をご検討ください。
外壁の色褪せは、紫外線を浴び続けたことで塗膜を守る樹脂が劣化し、色のもとになる顔料が影響を受けることで起こります。新築当時は光沢のあった外壁でも、経年と共にツヤが失われていき、色褪せは汚れと違うため洗浄しても元の状態には戻りません。
・色褪せしやすい色、しにくい色について
詳しくはこちら>>
外壁塗膜が劣化し、樹脂に覆われていた顔料が露出している状態がチョーキング現象(白亜化現象)です。外壁に触れ、白い粉が手に付着するかどうかをチェックすることでチョーキング現象を確認することができます。一般的には白い粉ですが、顔料によっては色がつくこともあります。
・チョーキングについて詳しくはこちら>>
塗料の耐用年数が過ぎると、塗膜の剥がれが発生します。しかし耐用年数の限界よりも早い段階で塗膜が剥がれてしまうことがあります。原因として考えられるは、塗料の乾燥不足、下地処理や下塗り作業の手抜き、塗料の選定ミスなどです。また外壁材の中には塗装ができないものがあり、外壁材の特徴や塗料との相性を考えずに塗装してしまったことで剥がれが起きるケースもあります。
・塗料の乾燥時間について詳しくはこちら>>
・塗装の仕上がりを左右する
「ケレン作業」について詳しくはこちら>>
・塗装が難しい外壁や屋根について
詳しくはこちら>>
窯業系サイディングが経年により劣化すると、反りや浮きが発生します。サイディングの塗膜が劣化し、防水機能が落ちることで雨を吸水するようになり、膨張と乾燥による収縮の繰り返しが起こり、徐々に反りが発生するのです。反りが大きくなっていくと目地のシーリングが剥がれ、浮きへと進行します。
・窯業系サイディングの反りや浮き等の
補修について詳しくはこちら>>
・窯業系サイディングの詳細は
こちらもご覧ください>>
目地が劣化すると外壁内部に雨水の侵入を許すことになるため、硬化やひび割れ、隙間などは要注意です。外壁自体の健康を保つためにも、定期的なメンテナンスが欠かせません。
・シーリング補修については詳しくはこちら>>
金属製のトタン外壁や金属サイディングなどは、劣化すると錆が発生します。錆は金属の腐食です。錆を放置していると外壁に穴が空くこともあるため、進行する前に補修することをおすすめします。
・金属サイディングのメンテナンス方法について 詳しくはこちら>>
・トタン外壁のメンテナンスについて
詳しくはこちら>>
クラックには様子見でも大丈夫なヘアクラックと早急なメンテナンスを要する構造クラックの2種類があります。クラックは建物のSOSサインです。劣化がどのような状態なのか、塗膜だけでなく外壁内部でも何らかの不具合が起きていないか、じっくり点検し正しい補修を行わなければいけません。
クラックについての知識がない場合は、軽度のシーリング補修や塗装で対応できるはずのクラックをそのまま放置してしまい、被害を悪化させることにもなりかねません。被害が雨漏りや外壁の剥離、建物内部の腐食まで発展してしまえば簡単な補修では済まなくなります。大切なお住まいに長く安全に住み続けるためにも、症状が軽度なうちに適切なメンテナンスを行うことが重要です。
街の外壁塗装やさんではお住まいの無料点検を行っております。外壁のプロとして不具合がある箇所だけでなく30~60分ほどかけてお住まいを点検し、正確な劣化の状態のご説明および最適な補修方法をご提案させていただきます。クラックなどお住まいに関するご心配はぜひ街の塗装やさんにご相談ください。
ストップ!飛び込み業者には注意しよう
外壁のクラックは外から見て分かりやすいため、外装塗装の飛び込み営業が目をつけやすくなります。クラックを放置すると劣化が進行し、深刻な被害を招きかねないため、確かに補修は必要です。しかし安易に飛び込み業者に補修を依頼することはおすすめできません。なぜならその業者が果たして信頼できる技術と実績があるのか分からないからです。外壁には大切なお住まいを守ってくれる重要な役割がありますから、安易な補修は大きな被害を招くリスクが心配です。
訪問業者から説明を受けたら、すぐに契約するのではなく、数社に問い合せて見積もりをお願いしましょう。その際チェックすべき点は施工内容・見積内容・担当者の対応などです。外壁の補修・メンテナンスは技術と実績のある業者に依頼することをおすすめします。街の塗装やさんでは相見積もりも承っております。同じ内容のお見積りなら他社との比較も簡単です。無料でお住まいの点検に伺わせていただきますので、ご不明な点やご心配なこともお気軽にご相談ください。
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外壁のひび割れ(クラック)には、大きく分けてヘアクラックと構造クラックの2種類があります。
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ヘアクラックは幅0.3mm以下の髪の毛ほどの細いひび割れを指します。
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ヘアクラックは構造に影響を与えないため緊急性はなく、様子を見る形で進行しないように見守ります。
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ヘアクラックの発生原因は塗膜の劣化やモルタル・コンクリートの施工時の収縮です。
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構造クラックは幅0.3mm以上のひび割れを指し、建物の構造自体に影響を及ぼすリスクがあります。
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開口クラックは窓や扉周辺で発生し、雨水の浸入リスクがあります。
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クラックの幅はクラックスケールやハガキを用いて測れます。ご自身でも定期的な点検を行っていただくことが大切です。
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クラックが原因で雨漏りを起こす場合、構造体の腐食やコンクリート・モルタルの爆裂など深刻な被害を招く恐れがあります。
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モルタル外壁のヘアクラックは弾性塗料を使用した塗装で補修ができます。
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構造クラックの補修ではクラック部分をカット(Vカット・Uカット)で広げたうえで補修するケースがあります。
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ヘアクラック程度であればDIYでも補修可能ですが、外壁内部に劣化が発生している可能性も否めません。まずはクラックの状態を専門業者に点検してもらいましょう。
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外壁にチョーキング(白亜化)現象を確認できる場合はクラック補修と外壁塗装の同時施工がおすすめです。
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外から見えるクラックは飛び込み業者による指摘を受けやすいです。すぐに契約せず、技術・実績のある業者に補修を依頼しましょう。