皆さんはベランダやバルコニーに施されている防水についてご存知でしょうか。新築で注文住宅を建ててから何十年も経過している方や、中古住宅を購入された方の中にはどのような防水加工が施されているのかご存知ない方も多いでしょう。しかし、ベランダやバルコニーの防水性は重要であり、万が一劣化して水漏れが発生すると外壁や住宅の基礎が損傷されてしまいます。そのためマイホームオーナーの皆さんは、住宅で用いられる防水工法の種類や特徴について知っておく必要があるのです。今回は、住宅で採用されることが多いFRP防水の特徴と施工方法について解説します。
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FRPについて
FRPとは繊維強化プラスチック(Fiber Reinforced Plastics)の略称で、軽量で耐久性・耐水性に優れているという性質を持ちます。身近なところでは、自動車のボンネットや浴槽の部材として採用されています。
FRPは強度が大きく耐水性が高いため、ガラス繊維などの硬化剤と合わせて使用することで強靭な防水層を形成することが出来ます。
1905年頃から採用されているアスファルト防水や、1960年代頃から使用されているシート防水・ウレタン塗膜防水と比べるとFRP防水の歴史は短いです。一方で、FRP防水特有の長所が評価され、現在では多くの住戸で施工されています。具体的なメリットとして、以下のものが挙げられるでしょう。
FRP防水のメリット
1. 軽量である
FRPはプラスチックと同様に非常に軽量です。
他の防水材と比較しても軽量であるため、屋根や外壁に使用しても耐震性が損なわれません。
このように住宅に負担をかけない素材であるため、住宅の安全性を確保しつつ防水性能を維持、あるいは向上できるというメリットがあるでしょう。
2. 耐久性が高い
ベランダやバルコニーは、洗濯物を干したり、ガーデニングを嗜んだりする際に、人が歩行する場所です。そのため、歩行による摩耗に負けない耐久性を持った防水材が必要になります。
FRP防水を使用することで継ぎ目のない、シームレスかつ高耐久の防水層を形成できるので、ベランダやバルコニーにおすすめの防水材と言えるでしょう。
FRP防水と並んで頻繁に使用されるウレタン防水は、摩耗に弱いことから人が歩かない屋根に使用されることが多いです。用途や場所、面積を考慮して最適な防水を採用しましょう。
3. 硬化が早い
FRP防水は短時間で硬化するため、バルコニーやベランダでの施工も1~2日ほどで完了します。一方のウレタン塗装防水の場合は硬化が遅いため、4~5日ほど施工期間を要します。
梅雨の時期等は防水塗装の施工に時間がかかる傾向がありますが、FRP防水を採用することで工期の短縮、あるいはスケジュール通りの施工が可能になります。
これらの長所が評価され、FRP防水の施工数は年々、増加傾向にあります。一方でFRP防水にも短所があるので採用前に確認しておきましょう。
1. ヒビが生じやすい
FRP防水を使用することで強固な防水層を形成できますが、伸縮性が低いためヒビが発生しやすいです。特に木造住宅の場合は、時間の経過と共に木材が収縮しますので、FRP防水が動きの影響を受けてヒビ割れを起こしやすく、相性に難があります。
そのため広範囲の使用は避ける、定期的にメンテナンスを行う、といった対処が必要です。
2. 紫外線に弱い
FRP防水はプラスチック繊維で構成されているので、紫外線に弱いです。そのため、トップコートによる表面保護が必要になります。一般的にトップコートのひび割れは施工後、数年経過すると発生しますが、防水層自体のひび割れも一見すると同じようなひび割れ方をします。
防水層のひび割れの場合は症状がより深刻となりますので、ベランダやバルコニーにひび割れがあるのを発見した際は、それがトップコートのみのヒビ割れか、あるいは防水層までダメージを受けているのかを確認するようにしてください。
3. 費用が高い
FRP防水は他の防水と比べて高性能である一方で、価格が高いというデメリットが存在します。一般的にFRP防水を施工する面積は限られているため、全体の価格に大きな影響を及ぼすことは少ないです。ただ、他の工法との差額は確認しておきましょう。
ウレタン塗膜防水とFRP防水は、どちらもメンブレン(塗膜)防水であるうえ、シームレスな構造です。そのため、外見で違いを判断することが難しいと感じる人も多いでしょう。
しかし施工時にはそれぞれの特徴を理解して適切に使い分ける必要があります。それぞれの防水の違いは以下の通りです。
ウレタン塗膜防水について
ウレタン塗膜防水とは、ウレタン樹脂を何層も塗り重ねて防水層を形成する防水工法です。弾力性に富むため、ご住宅の動きによるヒビ割れも発生しにくいです。
そのため、屋上や陸屋根といった高面積への施工も可能です。一方で、摩耗性や耐久性はFRP防水に軍配が上がります。
FRP防水について
FRP防水を施行する際は、まずポリエステル樹脂の上にガラス繊維のマットを敷きます。マットの設置後、再度ポリエステル樹脂を塗布し、表面を固めます。ガラスマットの密度によって工法が変わり、1枚のマットで防水層を形成する場合を「1プライ」、2枚のマットを使用する場合を「2プライ」と呼びます。
FRP防水は硬度が高いため、ウレタン塗膜防水のように弾力がありません。そのため、広い面積への施工や、木材や鉄上での施行は不適格とされています。一方で、耐久性が高く、摩耗に強いのでバルコニーやベランダといった比較的小さな面積へ施工されるケースが多いです。
FRP防水はガラス繊維を使用しているため、表面が摩耗するにつれて内部のガラス繊維が見えるようになります。また、施行中はスチレン臭というシンナーよりも強い刺激臭が発生するため、換気を入念に行う必要があります。
ウレタン塗膜防水とFRP防水は異なった特徴を持っているため、異なった場面で採用されます。一方で、どちらの工法も多少の凹凸がある表面にも施行可能で、シームレスな仕上がりになるという共通点があります。
FRP防水、ウレタン防水共に紫外線によって劣化をするという性質がありますので保護塗料としてトップコートを塗布することが重要です。
多数のお客様からご相談をいただく防水表面のひび割れの大半は、このトップコートのひび割れです。トップコートのみが劣化している場合は、基本的にすぐ雨漏りに繋がることはありませんので心配する必要はありません。しかし、亀裂が大きい、あるいは深い場合は深層まで被害を受けている可能性もあるので、調査が必要な際はお気軽にご相談ください。
ウレタン塗膜防水・FRP防水の耐用年数はどちらも10~13年程度ですが、下地に水分が含まれていると蒸発した際に塗膜に膨れやしわを起こすことがあります。これらの症状は施工が不良であった場合、築年数が長く雨漏りが発生している場合等に起こりやすいです。
こういったケースでは、表面に防水塗膜を塗り重ねてもトラブルは解決しません。まずは通気緩衝工法(絶縁工法)を用いて下地の密着を防いでから、内部の水蒸気を逃がす脱気装置を設置し膨れを防ぎます。
FRP防水は雨水や歩行による摩耗、紫外線によって経年劣化します。住宅の防水性能は重要であるため、定期的にメンテナンスを行う必要があります。
そこで、次に劣化レベルごとの状態と補修方法をご紹介していきます。
築3~5年程度で発生するひび割れの多くは、トップコートのものです。表面のみのひび割れであるため、防水性能に影響はなく緊急性も低いです。ただ、トップコートがひび割れた状態で放置しておくと下地の防水層にまでダメージが及んでしまいますので、5~7年ごとを目安にトップコートの塗り替えを行なってください。トップコートに使用されるのは、硬膜なポリエステル樹脂(新築向け)と軟膜なアクリルウレタン樹脂(改修向け)のいずれかです。用途に合わせて使い分けましょう。
トップコートの塗り替えを行う際は、まず下地の洗浄と油分の除去を行います。このようにすることで、トップコートの下地への密着力が高まります。その後、ローラーを使用してトップコートを塗布し完成です。
FRP防水の浮きや剥がれの主な原因として、密着力の低下や雨漏りによる雨水の蒸発が挙げられます。狭小面積での浮きが発生した場合、部分的なケレン掛けにより表面を削り、再度FRP防水を施工します。
高面積での浮きが発生した場合は、下地(合板)に問題がある可能性が高いです。そのため、まずは下地の補修、補強を行なってからFRP防水工事を行います。
FRP防水の劣化による雨漏りが発生した場合、まずは下地まで腐食が進行しているかを確認します。
下地がダメージを受けて水分を含んでいる場合、後々剥がれや浮きが生じる危険性が高いです。そのため、費用や下地との相性を考慮し、修繕の際には追従性の高いウレタン塗膜防水を用いた通気緩衝工法(絶縁工法)が多く採用されます。
施工事例:FRP防水を施工したバルコニー
施工のきっかけ
お客様が、築数年が経過したご自宅のバルコニーにひび割れが生じているのを発見し、補修工事を検討されていました。施行前の段階で雨漏りは発生しておらず、耐久性の高い施行方法をご希望されていたことから、FRP防水を施行しました。
使用材料:FRP塗膜防水材 ポリルーフ(双和化学産業)
1. 高圧洗浄・下地清掃
まずは高圧洗浄機を用いて下地の清掃を行います。はじめに入念に汚れを落としておくことで、仕上がりが綺麗になるうえ、耐久性の高い防水施工が可能となります。
2. プライマー塗布
プライマーには下地とFRP防水の密着性を高める効果がありますので、プライマーを下地全体に塗布していきます。
3. 下塗り
FRP防水用ポリエステル樹脂と硬化剤を混合させ均一に塗布します。下塗りを入念に行うことで施行後の見た目が良くなるほか、防水性能も高められます。
4. ガラスマット敷き
下塗りが硬化した後、再度ポリエステル樹脂を塗布します。その上からFRP防水用のガラスマットを貼り付けて、その表面にも樹脂の塗布を行います。
樹脂内部に空気が残ると後々FRP防水層の膨れ・浮きを起こす原因になります。そのため、脱泡ローラーを用いてFRP防水層からしっかりと空気を抜きます。
5. 中塗り
表面の樹脂が硬化したら研磨機を使用して表面を平らにします。そして調整の完了後、清掃を行い、油脂を除去するためアセトン拭きを行います。
6. トップコート
FRP防水層は紫外線によるダメージを受けやすいため、表面にトップコート(保護塗料)を塗布し、保護します。FRP防水は繊維状のガラスマットを使用しますが、研磨機で表面を整えているためツルツルとしたシームレスな仕上がりになります。滑りやすそうで足元に不安を感じる方は、骨材入りのトップコートの使用もおすすめです。
今回はベランダやバルコニーへの施工がおすすめのFRP防水をご紹介しました。ご住宅を長持ちさせるにあたって、一定の頻度で防水のメンテナンスを行う必要があります。また、防水工事を行う際は外壁塗装とセットで行うことがおすすめです。なぜなら、防水工事と外壁塗装を同時に行うことで、より効率的かつ経済的にご住宅のメンテナンスを行えるからです。
例えば、外壁の劣化により雨水が外壁の損傷部分から内部に入り込んでいるとします。この場合、雨水が外壁を伝ってバルコニーの下地にまで浸透している可能性が高く、防水の浮きや剥がれが同時に発生しているケースも多いです。このような場合、外壁と防水の両方を同時に工事しないと根本的な解決にはなりません。
そのため、どちらか片方のみの工事をするのではなく、両方同時に修復することが推奨されます。また、防水か外壁かのどちらかが傷んでいる場合は、築年数がある程度経っており、もう一方のメンテナンスも必要であることが多いでしょう。
外壁工事と防水工事の両方を同時に行おうとしても、別々の業者さんに依頼すると費用が余分にかかるほか、スムーズに作業を進めることが難しくなります。
また、二社の選定や工期の確認等を行うのはお客様にもご負担となってしまうのではないでしょうか。しかし、街の外壁塗装やさんであれば、屋根・外壁塗装と防水工事の両方を同時に依頼できます。
街の外壁塗装やさんでは屋根塗装・外壁塗装に加えて、ベランダ・バルコニーや陸屋根の防水工事も豊富な経験がございます。雨漏りが発生している場合であれば、外壁と防水工事の両方を同時に行う必要があります。また、外壁と防水のメンテナンスを定期的に両方行うことでご住宅の寿命を延ばすことができるでしょう。
点検・お見積もりは無料で承っておりますので、外壁や防水に気になる損傷がある方、ご住宅のメンテナンスをご検討中の方、その他ご不明点やご相談がある方はお気軽にご連絡ください。
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FRP防水は軽量かつ高耐久の繊維強化プラスチックを使用した防水工法であり、そのパフォーマンスの高さが評価され、近年多くのご住宅で採用されています。
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FRP防水とウレタン防水は、シームレスな仕上がりになるという共通点がある一方で、耐久性や弾性などが異なります。
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築年数が浅い場合に発生する防水表面のひび割れは、トップコートのみのひび割れのため、防水性能に問題はありません。トップコートの塗り替えのみで対応できますが、ヒビが深そうに見える等の理由でご不安な方は経験豊富な専門業者にご相談ください。
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外壁工事と防水工事は同時に行うことで、経済的かつ効率的にご住宅のメンテナンスを行うことができます。屋根や外壁・ベランダ等のメンテナンスが必要な際はぜひ弊社にお任せください。
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FRP防水は軽量であることから、ご住宅の耐震性向上にも役立ちます。FRP防水の特徴や工法を理解したうえで適切な防水工事、メンテナンスを実施することで、大切なお住まいをより長く維持することに繋がります。