フッ素塗料や無機ハイブリッド塗料、弾性塗料は、長い耐用年数や性能の高さで注目されている塗料です。塗り替えのときには、高性能の塗料で塗ってメンテナンス性を高めたいという方もいらっしゃるかと思います。ただ、これらの塗料は、実はすべての外壁材で“高い性能”を発揮できるとも限りません。
塗装時には、高性能塗料の良さを引き出せるような“相性”をチェックすることが大切です。
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【外壁塗装で注意したいポイント】塗料には外壁材との相性があるもの?
一般的な戸建住宅には、外壁や屋根のほか、付帯する木部や金属部分、さらには塀やブロックなど塗装が必要な部分が多数あります。
素材ごとに適切な塗料が存在するため、塗料の種類は多岐にわたるのです。
たとえば、木部を塗るときは、木部に塗りやすく効果を発揮する塗料が存在しています。金属の性質に合わせた「金属用の塗料」では、木部にはしっかりと密着しないのです。見かけ上、問題なく塗装ができたように思えても実際の効果は半減してしまうでしょう。
塗装メンテナンスには美観性を向上させるという役割はもちろん、耐久性を向上・回復させるという役割も担っています。雨風や紫外線などの影響を少しでも軽くするため、それぞれの素材や特性に合わせ、屋根には屋根用、外壁には外壁用…というように、たくさんの塗料が開発されているのです。
戸建住宅の外壁は、モルタルや窯業系サイディング、金属サイディング、ALCを採用しているケースが多いです。外壁の種類ごとに特徴が異なるので、外壁材に適した塗料で塗るのが基本です。
また、塗装の工程には、下塗り・中塗り・上塗りがあります。初めに塗る下塗りは、中塗りと上塗りを密着させるための大事な工程ですが、この下塗り用の塗料も外壁によって適したものが異なります。
「外壁材の種類」「その外壁材に合わせた下塗り材」「仕上げとなる塗料」と、それぞれを使い分けて塗ることが、塗装後の寿命を長く維持することにもつながっています。
モルタル、窯業系サイディング、金属系サイディング、ALCなど、外壁材はそれぞれに特徴があり、メリット・デメリットも異なります。どんな外壁でもデメリットは存在しますから、それを補ってくれるような塗料を選ぶことがより効果的な外壁塗装をするためのポイントです。
主な外壁材の重視するべきポイントをまとめてみました。外壁によって、塗料で重視したい性能は大きく異なります。弱点をカバーできる塗料かどうかで、「相性の良い・悪い」が分かります。デメリットを解消できなければ、塗装後にトラブルが続出しますから、結果的に相性が悪いと言わざるを得ないのです。
次に、外壁材ごとに合う塗料を詳しく説明していきます。
モルタルは、下地にラス網を貼り、セメントと砂を練ったものを塗って形成していく外壁材です。「モルタル」という外壁自体には、防水性がありません。そのため、防水性を付与するために必ず塗装をします。モルタルは以前よりも改善されてはいるもののひび割れしやすい特徴があります。小さなひび割れに見えても水分が入り込むため、その度合いによっては補修して塗装をしなければ、お住まいの劣化につながってしまうでしょう。
ひび割れのなかでも、最も軽度なものが「ヘアークラック」です。幅0.3mm未満のもので、補修の緊急性はまだありません。
0.3mmを超えたひび割れは「構造クラック」と言われています。こちらのひび割れの場合、雨が入り込みやすく、外壁の剥離のリスクが高まります。軽視せずに、早めに対応すべきひび割れです。
モルタル外壁で相性の良い塗料を選ぶためのポイント!
クラックが起こりやすいモルタル外壁を塗り替えるときは、クラックに塗膜が追従してくれる弾性塗料が最適です。塗膜には防水性がありますが、モルタル自体に水が染み込みやすいことを考慮して、透湿性のある塗料も選択肢の候補となります。純度が高いアクリルを使った塗料は寿命も長めで、塗膜の伸縮性もあり、おすすめの塗料です。
サイディングは、繊維を混ぜ込んだセメントを工場で成型した外壁材です。モルタルと同様に、サイディングボードも素材自体に防水性はないため、塗装をして防水性を保たなければなりません。
熱を蓄えやすい性質を持つサイディングボードは、塗膜が膨れるなどの問題が起こるケースもあります。
また、雨水を吸収すると膨張が起こり、その後乾燥する際に収縮するという変化を繰り返すことによってボードの反りも発生します。雨水の浸入がサイディングの劣化原因を作ってしまうのです。
窯業系サイディングで相性の良い塗料を選ぶためのポイント!
窯業系サイディングを塗り替えるなら、「湿気だけ」を逃がす塗膜を作ることができる透湿性の高い塗料がおすすめです。塗り替えでは、「ボードの意匠性が悪くなるかもしれない」という思いから、クリヤー塗装をお考えの方もいらっしゃるかもしれません。街の外壁塗装やさんではクリヤー塗料による塗装実績も豊富です。透湿性のあるクリヤー塗料もありますので、クリヤー塗料をご検討されている方はお気軽にご相談ください。
金属系サイディングは、金属を加工した外壁材です。最近は、新築住宅でのシェアも増えてきました。一般的な住宅で使われている金属素材は、主にガルバリウムです。そのほか、ステンレスやアルミがありますが、高額という理由からそれほど使われていません。金属素材の一番の弱点は錆です。いったん傷や錆が発生すると、「もらい錆」として周辺に広がることもあります。塗り替えでは、錆を取り除いてから塗装する工程が大切です。また、金属には熱を伝える性質から表面が高温になりがちのため、弾性塗料の使用は適切ではありません。
金属サイディングで相性の良い塗料を選ぶためのポイント!
金属系サイディングは、近年になってからシェアが増えつつある外壁材です。フッ素コートや親水性加工が施されている場合、下塗りにシーラーやプライマーを使わなければ塗料は密着しません。パーフェクトトップは下塗り材を変えることで、多くの外壁材に塗装が可能になる塗料です。しかも、透湿性も高いとあって、注目度が高い塗料と言えます。
「軽くて丈夫」「断熱性や遮音性が高い」「コンクリートのため燃えない」という特徴を持つALC。さまざまなメリットがある一方で、デメリットがあります。
まず、無数の細かい穴があいている「多孔質」という素材のため、吸水しやすいです。水が入りこむことで、内側からの破壊が起こるリスクが高まります。そのため、細かい穴から吸水することのないよう塗膜によって保護をしてあげることが大切です。
ALCで相性の良い塗料を選ぶためのポイント
ALC外壁には、透湿性の高い塗料が最適です。吸水しないことが最重要ポイントとなる外壁材ですが、何らかの拍子で発生した傷から浸水することもあるでしょう。また、劣化したシーリングも吸水の経路となってしまいます。そこで、浸水したらスムーズに水分を外に出せるしくみが不可欠です。そのため、内部にこもりにくい透湿性の高い塗料を塗るといいでしょう。
極めて塗料が付着しにくい外壁材も存在する
21世紀に入ってからは、綺麗が持続する「汚れにくい外壁材」が広まっています。光触媒や無機系ハイブリッド塗料なら、外壁についた汚れを分解することができます。雨が降るほどに汚れが落ちる親水性機能、汚れにくさを実現するフッ素コートなどの技術が応用されたのが「難付着サイディング」です。
ただし、かなり汚れにくいということは、言い換えれば「塗料が塗りにくい」ことにつながります。塗装をしても塗料が密着しないため、塗装時には「難付着サイディング」に特化した下塗り塗料を用いるなどの入念な計画をしていくことが重要です。
高性能塗料だからどんな外壁でも対応できるわけではない!
高性能塗料の落とし穴
塗装をするとき、予算の都合が合えば、高額な塗料を選ぶ方が耐久性などに間違いがありません。塗料の性能は価格に比例するため「価格が高いほど高性能である」と考えることができるからです。ただ、高性能な塗料ほど、効果を発揮できる外壁材選びがとても大切と言えるでしょう。
外壁材において「高性能の塗料」とは、見た目も考慮したうえでの耐用年数を指しています。「外壁材と塗料」の相性がよくない場合、本来の力を発揮することはできず、本来期待できる耐用年数よりも前に劣化します。価格と性能が比例するとはいえ、価格のみで判断せず外壁材と塗料の相性も加味した上で塗料の選択をしていきましょう。
塗料と外壁の相性とは
外壁材の特徴を見据えた上で開発された製品であるかということ
現在高性能な塗料と言えば、フッ素塗料や無機系ハイブリッド塗料でしょう。フッ素塗料や無機系ハイブリッド塗料のメリットは、塗膜が固いことです。傷がつきにくく汚れにくい一方で、柔軟性はないため、割れやすいということも覚えておきましょう。
さまざまな外壁材のなかでも最もひび割れに注意しなければならないのがモルタル外壁。追従しにくい塗料を選ぶと、ひびやクラックに塗膜が適応できず塗膜にも亀裂が広がりやすいです。亀裂から雨水が入り、修復も大がかりとなってしまいます。フッ素塗料や無機系ハイブリッド塗料は注目したい塗料ですが、ひび割れしやすいモルタル外壁には不向きと言えるでしょう。
塗料メーカーによってフッ素塗料や無機系ハイブリッド塗料をモルタル外壁に塗ることができるように、弾性の高いフッ素塗料や無機系ハイブリッド塗料を製造されています。こちらであれば、安心してフッ素塗料や無機系ハイブリッド塗料を使うことが可能です。
ただ、街の外壁塗装やさんではモルタル外壁へ塗装を行う際には伸縮性が高いアクリル100%塗料を推奨させていただいています。アクリル100%塗料はモルタル外壁にクラックが発生しやすいという欠点を補うため、塗膜に伸縮性を持つ弾性塗料として開発された製品であり非常に好相性です。
弾性塗料は既にお話させていただいたとおりモルタル外壁と相性がよく、ひび割れが起こっても伸びるため亀裂が起こらず割れません。
塗膜がゴムのように伸びる弾性塗料はクラックに追従できるため隙間ができず、雨水の浸入をおさえることができます。フッ素塗料や無機系ハイブリッド塗料よりも高性能に感じますが、そうとも言い切れないのです。
窯業系サイディングを例に取ってみましょう。窯業系サイディングは現在の住宅のシェア率が高い外壁材です。真夏の気温では表面温度が60℃を超えるほど蓄熱すると言われています。サイディングの目地に充填されているシーリング材は紫外線などで傷みやすい部分です。傷んだ目地から雨水が浸透し、暑い日差しにより内部で水蒸気となります。水蒸気は逃げ場がないため、それが塗膜に膨れを起こすというメカニズムです。弾性塗料の塗膜は弾性により伸びますから、雨水が水蒸気に変化するとき、なんと1700倍にも膨らみます。
また、フッ素塗料や無機系ハイブリッド塗料などの固い塗膜のケースの場合は弾性が備わっていないため膨らむということはないのですが、圧力に耐えきれず塗膜が剥がれてきてしまいます。
ただ、現在では弾性塗料やフッ素塗料、無機系ハイブリッド塗料にも、透湿性により湿気を外に逃がせるタイプの塗料も開発されてきました。塗膜の膨らみの解消には、こういった機能にも着目するといいでしょう。
窯業系サイディングの場合、クラックがそもそも発生しにくい外壁材です。そのため、弾性塗料の“弾性のある”という優れた性能にあまり意味がありません。窯業系サイディングの場合、膨れの原因となる弾性塗料との相性は悪く、水蒸気を通過させられる透湿性を持つ塗料がぴったりと言えるでしょう。
- 高い性能を持つ塗料は魅力的ですが、外壁材との相性によっては機能が十分に発揮できません
- 外壁材と塗料の特徴を理解することで、相性の良し悪しを判断することが可能です
- 難付着サイディングは汚れづらく耐久性の高い外壁材ですが、塗り替えしづらいという一面もあります
- フッ素塗料や無機系ハイブリッド塗料は高性能で注目度の高い塗料という一方で、相性が悪い外壁材も存在しています
- 弾性塗料も性能の良さが魅力ですが、その機能が上手く活かされず相性が悪い外壁もあるため注意が必要です