近年の外壁・屋根リフォームを検討される方の中でガルバリウム鋼板の使用を希望される方が増えています。ガルバリウム鋼板は従来の金属系素材より軽量で錆びにくいため耐久性が高くおすすめの建材です。そこで今回はガルバリウム鋼板によるリフォームを行う際にどういったポイントに気をつければ良いか、メリット・デメリットとメンテナンスも含めた使用方法をご紹介いたします。
窯業系サイディングから金属系サイディングへ
サイディングは現在、多くのお住まいで外壁に使用されています。皆さんの中にも、外壁材としてサイディングを使用しているという方は多いのではないでしょうか。サイディングにもいくつか種類がありますがその中で特に多いのがセメントを主材料としている「窯業系サイディング」になります。モルタルよりも扱いやすいので作業性が良く、デザインの幅も広いため多くの方に好まれており多くのお住まいに使われています。
そんな人気を博している窯業系サイディングによる外壁ですが、近年は窯業系から金属系サイディングにその人気が移りつつあります。その理由として窯業系サイディングは表面塗膜や目地のシーリング材の劣化により強度が低下してしまうからです。いわば経年劣化による強度低下ですがセメント系の外壁材にとって避けて通れない課題になります。
金属系サイディングはそんな窯業系サイディングの弱点をカバーできる外壁材として注目されています。窯業系に代わる新たな外壁材として人気を高めつつある金属系サイディングで、主に使用されているのがガルバリウム鋼板です。
ガルバリウム(GL)鋼板とはどんな素材?
そんな新しい外壁材の潮流となりつつあるガルバリウム鋼板ですが素材自体は最近開発された素材というわけではありません。
ガルバリウム鋼板自体は屋根材として多くの住宅で広く使用されております。ガルバリウム鋼板はJIS規格における正式名称を「55がアルミでできている合金素材です。アルミに亜鉛やシリコンを混ぜ込みメッキを施すことでガルバリウム鋼板の元となる合金になります。
ガルバリウム鋼板とは異なり100%亜鉛の鋼板にメッキ処理を施したものがいわゆるトタンになります。このトタンとガルバリウム鋼板を比べた時、実はトタンの方が犠牲防食性能、つまり合金の腐食を遅らせる性能は優れているのです。
トタンの犠牲防食性能
そう言われるとどうしてガルバリウム鋼板が人気なのか不思議に思われるかもしれません。しかしガルバリウム鋼板はアルミニウムの腐食への耐性と、先ほどご紹介した亜鉛の防食性を兼ね備えるため、結果的にトタンより高い防食性になっているのです。
ガルバリウム鋼板の犠牲防食性能と酸化被膜(不動態被膜)
さて、ガルバリウム鋼板という素材は先ほどもご紹介した通り最近開発された素材ではありません。開発されたのは今から50年前の1972年のアメリカで、商品化されたのはその10年後の1982年なので商品としては40年の歴史があるのです。有名な建物では高校野球の聖地、甲子園球場の銀傘の架け替えにも使用されておりテレビを通してあるいはその目で一度は見たことがある素材と言えます。
さてここからはガルバリウム鋼板の具体的な特徴をご紹介していきます。外壁材として非常に優れた性能を持つガルバリウム鋼板ですがどんなものにもメリット・デメリットはつきものです。そこでここからガルバリウム鋼板を使用するメリットと注意点をご紹介していきます。こちらをご覧いただき皆さんのお住まいとの相性はどうかを検討してみて下さい。
外壁材としてガルバリウム鋼板を使用するメリットの1つ目はその軽さです。ガルバリウム鋼板は非常に薄いため重さは軽く、窯業系サイディングと比べると重量は1/3になります。
外壁材が軽いということはお住まいにかかる重量も軽くなり、それは耐震性の向上に寄与します。地震の多い日本では、軽い建物は揺れによる影響を小さく留めてくれるので地震による損壊の抑制につながるのです。そんな軽量なガルバリウム鋼板は「外壁カバー工法」によるリフォームに適した外壁材と言って良いでしょう。
いかに防食性が高いガルバリウム鋼板と言っても絶対錆びないというわけではありません。しかしガルバリウム鋼板はその高い防食性から非常に錆びにくく、先ほどご紹介したトタンの数倍の耐用年数と言われています。トタンの耐用年数は10年から長くても20年なのに対してガルバリウム鋼板は20年から30年以上の耐用年数が期待できるのです。
記事の最初でご紹介しましたが窯業系サイディングは塗膜の劣化による強度低下がつきものです。塗膜が劣化することでサイディングが吸水してしまい強度が低下するのですが、寒冷地では冬場に吸水された水が凍結し「凍害」を起こす危険性があります。しかし金属板であるガルバリウム鋼板は吸水しにくいため凍害の危険性はないのです。
ガルバリウム鋼板が外壁材として普及し始めた理由は性能面だけではありません。デザインのバリエーションが増えてきて選択肢が広がったという面もあります。金属素材は小さな傷でも錆の原因となり得るため加工が容易なシンプルなデザインがほとんどでした。しかし技術の進歩により現代的なデザインの加工も可能となったため現在では幅広いお住まいの外壁材として取り入れられています。和風のお住まいでもガルバリウム鋼板を取り入れることでモダンテイストに仕上げてみるというのも悪くはないのではありませんか?
ガルバリウム鋼板のカラーでよく見られるのが黒や紺などの濃色ですが、こういった色を採用することでお住まいに重厚感や格が出てくるので周りのお住まいと違いを出すこともできます。
ここからはガルバリウム鋼板を使用する上での注意点をご紹介していきます。
先ほども記載しましたが防食性の高いガルバリウム鋼板とはいえ全く錆びないというわけではありません。施工時に付いた小さな傷や強風で石が当たってできた傷など小傷から錆につながる可能性もあります。また空気中に浮遊する鉄粉などが付着するとそこから錆びる可能性は十分にあるのです。
そのため以下に耐久性の高いガルバリウム鋼板とはいえ定期的な点検と水洗い、傷の補修に塗装メンテナンスは欠かせません。
沿岸部では潮風による塩害に注意!
防食性の高いガルバリウム鋼板ですが沿岸部のお住まいに使用する場合は潮風による塩害にご注意ください。あるメーカーの実験によると田園地帯や工業都市と比べて沿岸部では耐用年数に10年も違いが出たという結果もあります。塩害はそれだけお住まいの耐久性に大きな影響を及ぼすのです。
とはいうものの、メーカーも何も対策をしなかったわけではありません。例えばIG工業のガルスパン等の製品は海岸線より5km以上離れた地域での製品の性能が保証されます。IG工業以外でも沿岸部向けの製品は販売されていて一定の条件で性能を保証されることもありますが、環境条件によっては保証の対象外になることもありますので、使用を検討する際は保証条件とメンテナンスのしやすさなどをよく確認しましょう。
ガルバリウム鋼板を外壁材として施工する際、断熱性を上げるために隙間なく取り付けていきます。そうすると気密性が向上し、その高い気密性が室内の湿気、水蒸気の行き場をなくし小屋裏に溜めこんでいまい、結露を起こす危険性があるのです。結露は木材を腐食する原因ともなりますので小屋裏の結露を防止するためにも断熱エリアの見直しや棟換気の使用で湿気を排出するなど結露の解消を検討しましょう。
先ほども記載しましたがガルバリウム鋼板は非常に薄いため遮音性と断熱性を不安に思う方もいらっしゃいます。しかし多くのメーカーはこれに対して断熱材と一体になった外壁材を販売しているため遮音性と断熱性の低さを懸念する必要はありません。
しかしそれでも「隣の家の生活音が聞こえる」「冬場寒く感じる」ということがあるかもしれません。そういう場合は性能の良い断熱材への交換や遮音性の高いボードを使用するなど外壁ではなく屋内への改修工事を行いお住まいの快適性を確保しましょう。
「SF-ガルステージシャインJ」の値は、JIS A 1420の実測値で、その他の値は熱伝導率から算出した値です。
※IG工業株式会社シンプルモダンシリーズカタログより引用
リフォームを考える際に「何より寒さ暑さや音の問題を解消したいけどガルバリウム鋼板を使いたい」という方は既存外壁の上から新しい外壁材を貼る「外壁カバー工法」を採用しましょう。
ガルバリウム鋼板を外壁リフォームで使用する際は外壁張替工事か外壁カバー工事がおすすめです。
外壁張替工事は今ある外壁材を剥がして新しい外壁材に張り替える工事です。既存の外壁材が雨漏りで腐食していたり、激しい劣化により外壁材が剥離しているようなお住まいは外壁張替工事をおすすめします。
外壁張替工事は既存の外壁材を撤去するため透湿防水シートなどの外壁の下地等の確認ができ、外壁全体の補修を行うことが可能です。また張替のため住宅の軽量化を望めるため耐久性の向上が見込めます。ただし既存の外壁材の撤去があるため外壁カバー工事と比べると撤去・処分費用がかかってくるため施工費用がかさむというデメリットがあります。
近年、外壁張替工事より多く施工されている外壁リフォームの工法が外壁カバー工法です。外壁カバー工法は既存の外壁材の上から新しい外壁材を張るため遮音性と断熱性の向上を見込めます。
外壁カバー工法は既存の外壁材を撤去・処分しないため撤去・処分費用がかかりません。また撤去・処分作業がないためその分工事日数が短縮できるのも特徴です。ガルバリウム鋼板は非常に軽量のため既存の外壁材の上から張り付けても住宅の重量に大きな影響を及ぼすことは無く住宅の耐久性を維持できます。
外壁カバー工法で外壁リフォームを行う際、注意すべきことがあります。それは既存外壁材がトタンなどの金属系の場合、経年劣化により錆びている恐れがあり、その上から施工を行うと「もらい錆」により新しい外壁材が錆びてしまう点です。
せっかく新しいガルバリウム鋼板を張り付けても、錆びてしまっては意味がありません。錆びが発生している材料が施工箇所にある場合、錆止めを行うか錆止めでは対応しきれない場合、撤去し下地を補強しましょう。
施工事例:ガルバリウム鋼板での外壁カバー工事
お問い合わせのきっかけ
屋根の傷みからリフォームを検討しているお客様は外壁の経年劣化と雨漏りについてもお悩みでいらっしゃいました。屋根と外壁、お住まい全体が経年劣化により傷んでいるため全体のメンテナンスが必要だと考えられていたようで屋根をカバー工法で補修する工事に合わせて外壁もカバー工法で施工することになりました。
点検の様子
既存外壁はモルタルです。塗装工事を行ったようですが塗り替えの際にできた塗膜も膨らみが生じている箇所が見られました。どれほど丁寧にメンテナンスを行っても屋根材と外壁材は傷み、張り替えやカバーなど大規模なリフォームが必要な時期が訪れます。
今回は外壁材の状態から屋根カバー工事だけではなくガルバリウム鋼板による外壁カバー工事もあわせて提案させていただきました。
施工の様子
今回の工事は全体的な外壁メンテナンス工事なりますのでお住まいの全体を囲むように仮設足場を設置します。また一部塗装工事も行いますので飛散防止用のメッシュシートで養生しました。
ガルバリウム鋼板を使用した外壁カバー工法では雨樋などの付属物は全て取り外さなければいけません。
外壁カバー工法という言葉では新しい外壁材を既存の外壁材の上からそのまま張り付けると思われるかもしれませんが、既存の外壁材の上に胴縁と呼ばれる木材を取り付け、下地にして通気層を確保します。これにより外壁材の下に空気の流れを起こし錆などの腐食を防ぐ効果が期待できます。
今回の工事ではニチハの金属サイディング「レフィーナウォール」を使用します。この外壁材は縦横どちらの向きでも使用できるのが特徴です。
厚み0.27mmのガルバリウム鋼板と断熱材が一体化しています。凹凸感のある石積み柄は艶消しの質感でお住まいを上品な外観に仕上げてくれます。
工事の最初はサッシ周りに水切り板金の取り付けです。その後は胴縁に合わせて下からガルバリウム鋼板を張り付けていきます。この時、ガルバリウム鋼板がかみ合うように張り付けましょう。
ご覧のようにガルバリウム鋼板同士の間には窯業系サイディングのように継ぎ目が発生してしまいます。そこに外壁材と同質のキャップを取り付けると継ぎ目が目立たない外壁に仕上げることができます。
金属サイディングであるガルバリウム鋼板はカットが可能なため現場の状況に合わせて加工が可能です。工事個所の一部だけを変更するなど施工と組み合わせによってお住まいの印象を変えることもできます。
工事完了後は外壁の定期的な点検と水洗いなどのメンテナンスを行いましょう。耐久性に優れるガルバリウム鋼板ですが小さい傷から錆つき腐食で劣化する恐れもあります。施工から15年から20年を目安に塗り替えの検討も行いましょう。
台風などの災害により傷、へこみなどの損傷が見られる場合は早めに補修した方が耐久性の維持につながります。
ガルバリウム鋼板による外壁リフォームは最近になって注目されるようになったメンテナンス方法なので塗装工事のような工事実績はまだまだ少ないのが現状です。そのためガルバリウム鋼板の正しい扱いが分からず工事後に雨漏りを起こしたり、外壁材を雑に扱い錆びてしまったりするということもあります。
いくらガルバリウム鋼板が耐久性に優れると言っても誤った認識の下で施工すれば雨漏りや錆などの不具合につながりせっかくの新しい外壁材なのに早々に張替なくてはいけないという事態にもなりかねません。
業者にガルバリウム鋼板による工事を依頼する際は、ガルバリウム鋼板を使用した工事について正しい知識や実績があるか、工事後のメンテナンスについて正しく説明できるのかなどを見極めて依頼する業者を決定しましょう。
どのようなお住まいでも新築から年数が経っていなければ外壁塗装と塗膜による保護でお住まいの外観の美しさと耐久性は維持されます。しかしお住まいを長く綺麗な状態に維持したまま住み続けるためにはメンテナンスが必要不可欠です。
大規模なリフォームが必要になった時、信頼できる業者に頼むことができるのかというのは長く住み続けるための重要なポイントと言えます。
私たち街の外壁塗装やさんでは塗装工事はもちろん、外壁カバー工法によるリフォームや状態が悪ければ張替などお住まいに合わせた最適な工事をご提案させていただきます。
「塗装で検討しているけどガルバリウム鋼板を使った工事も気になる」「ガルバリウム鋼板でリフォームを検討しているけど張替にするかカバー工法にするかで悩んでいる」などどんなことでも構いませんのでご相談ください。
点検・お見積りに伺わせていただく際に皆さんに疑問・質問・興味のあることについて何でもお答えいたします。ご相談・点検は無料で承っておりますのでお気軽にご相談ください。
ガルバリウム鋼板による外壁リフォームは耐久性や長寿命という観点から近年注目され、工事件数も増加傾向にあります。
住宅用外壁材としてガルバリウム鋼板は近年注目され始めましたがガルバリウム鋼板自体は40年の実績と信頼性があります。
錆びにくく軽量で耐久性も高いガルバリウム鋼板はおすすめの外壁材ですが沿岸部に建つお住まいなど使用する住宅の向き不向きがあります。業者による点検や相談した上で使用をご検討ください。
ガルバリウム鋼板による外壁リフォーム工事は外壁カバー工法が人気の工法になります。人気の理由は既存外壁材の上からガルバリウム鋼板を張るため撤去・処分費用が掛からず費用を抑えられることと遮音性・断熱性に優れる点、大幅なイメージチェンジが可能などです。
ガルバリウム鋼板による外壁リフォームは近年増加してきた工法のため実績が少ないのが現状です。そのため正しい施工知識とメンテナンス方法についての知識がある業者を見極めることが非常に重要になります。
ガルバリウム鋼板を使用した屋根・外壁リフォームを検討する機会は、今後増えることが予想されます。その為にはメリット・デメリットを正しく知り、その上で外壁リフォームの判断をすることが大切です。