色褪せしにくい色を用いて外壁塗装を行いたいという方へ
多くの方は、やや古びた外観をしていたり、年季が入っていたりするような見た目の建物をご覧になられたことがあるのではないかと思います。
では、具体的にどのような理由で、その建物は古いように見えたのでしょうか。
例えば、建物周りに植物が生い茂っている、外壁が汚れている、外壁塗装が色褪せている、といったものが挙げられるでしょう。このように外壁は建物の印象を大きく左右する重要なものです。今回は、外壁塗装の色褪せについて解説していきます。
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ご住宅の周辺に雑草が生い茂っている状態だと、空き家と見なされやすくなり、空き巣などの犯罪に遭いやすくなってしまいます。虫や動物の住処にもなってしまうため、周辺にお住まいの住民の方に迷惑がかかってしまうかもしれません。見た目が古く見えてしまうこと以外にも様々なデメリットがあるので、雑草は定期的に処理してください。
また、ご住宅の外壁だけでなく、塀や門の汚れも建物全体が古く見えることに繋がります。建設からまだ数年しか経過していない場合は清掃によって汚れを落とせますが、築年数が経過している場合は汚れが染み付いてしまっていることも多いです。
汚れに加えて、色褪せも放置しておくと建物が古く見えてしまいます。色褪せは汚れと違って、清掃によって対処できません。また、外壁は常に雨や風に晒されているため、経年劣化を完全に防ぐことは非常に困難です。よって、定期的な塗り替え、色褪せしにくい塗料の使用が必要となるでしょう。
色褪せが発生する原因について
塗料の色褪せは外壁以外の場所でも発生します。身近なものでは車の車体、ご住宅の内装材、花壇やレンガも色褪せを起こします。これらの共通点として、日当たりがいい場所で使用されることが多い、雨にさらされる機会が多いことが挙げられるでしょう
太陽光に含まれる紫外線を長時間浴びると、これらの表面がダメージを受け、結果として色褪せが発生します。また、酸性雨にあたることでも対象物の表面にダメージが蓄積され、塗料の剥がれや色褪せに繋がります。これらの自然の力は強く、特に近年はオゾン層破壊や環境の変化に伴って、紫外線量が増加しています。
塗装技術も進歩してきましたが、それでも自然の力に立ち向かうのは依然として困難です。
色褪せの対処方法を学ぶためにもまずは、紫外線や酸性雨が色褪せの原因になっていることを理解することが重要です。
色褪せが発生する2つの仕組みとは
色褪せが発生する仕組みとしては主に以下の2つのものが挙げられます。上記の内容と併せてご確認ください。
(1)顔料に含まれる色素原子同士の結合破壊
ダイヤスーパーセランシリーズの塗膜に関する記事でもご紹介したように、全ての元素は原子同士が結びつきあって、物質を構成しています。
外壁塗装に使用される塗料の色の元は顔料で、この顔料も元素同士が結合して構成されています。元素同士の結びつきの強さは「結合エネルギー」として表すことができ、この結合エネルギーを上回る量のエネルギーが元素に与えられると、元素間の結合は破壊されてしまいます。
例えば、窒素元素は窒素原子同士の結びつきが弱いため、結合が破壊されやすいです。
反対に、銅を中心とした結合は結合エネルギーが大きいため、容易に切断されません。太陽光に含まれる紫外線のエネルギーは約410kl/molであるため、これよりも結合エネルギーが大きい場合は色褪せが起きづらく、弱いと色褪せが発生しやすくなります。
(2)酸化などの化学変化
身近な化学変化としては、酸化が挙げられるでしょう。古い鉄が錆びて赤くなっている場合、その鉄は酸化しています。酸化した結果、鉄は酸化鉄という異なる物質に変化し、色も赤や黒に変わります。こうして発生した変色は、赤サビや黒サビと呼ばれています。
銅も鉄と同様に、酸化すると酸化銅という異なる物質になり、色は緑青に変化します。別の物質に変化することで色も変化すると覚えておきましょう。
化学変化は酸素や水に加えて、熱によっても促進されます。そのため、紫外線や熱に長時間さらされる外壁や屋根などでは色褪せが発生しやすいです。
人間が健康的な生活を送るには太陽光が必要不可欠です。よって、太陽光や雨による色素元素の結びつきの破壊や化学変化は完全には防ぐことができません。
コート材を表面に塗布することで劣化の進行を遅くすることはできますが、劣化を完全に防ぐことは難しいです。
そのため、外壁塗装の色を選ぶ際は、色褪せしにくい色を選ぶことが重要になります。
色褪せは外壁のみでなく、服やインテリアでも起こりえます。そのため、色褪せしにくい色を知っておくことで、様々な場面で応用できるでしょう。
1位 赤色
赤色の顔料は複数種類がありますが、いずれも耐光性は高くありません。東京タワーにも赤色が使用されていることから耐久性があるように思われるかもしれませんが、実際は色褪せしやすい色です。塩害などの影響もあり、約5年に1度の頻度で塗り替えが行われています。余談ですが、東京タワーに使われている色の正式名称は「インターナショナルオレンジ」で、航空法と航空法施行規則で最上部から黄赤と白の順に交互に帯状に塗装することと定められています。
2位 黄色
黄色は特に色褪せしやすいものの1つです。赤色と黄色の共通点として、どちらの顔料にも窒素元素が多く含まれていることが挙げられます。前述の通り、窒素元素同士の結合力は弱いため、太陽光に含まれる紫外線によって切断されやすいです。
ただ、同系統の色のように思える黄土色は色褪せしにくいという特徴を持っています。
3位 紫色
自動車業界において、紫色は赤色の次に色褪せしやすい色とされています。紫には赤色が含まれているため、褐色しやすいです。このことから、同じ紫色でも赤みを帯びている紫色の方が色褪せの進行が早く、青みが強いものの方が色褪せしにくいです。
商業施設やテーマパーク内の建物以外で、これらの原色が外壁に塗られる機会は少ないでしょう。また、地域によっては景観条例規則に違反する恐れもあります。
黄土色は落ち着いたアースカラー系統の色なので、外壁に使用されることもあります。黄色系統ですが、黄土色は色褪せしにくいとされているので、過度に色褪せを心配する必要はないでしょう。。
1位 白色
白色は色褪せしにくい色の1つです。白色の顔料として使用されている酸化チタンは無機顔料なので、色素の結合力が高く、化学変化も起きにくいです。一方で、白色の外壁は汚れが目立ちやすいというデメリットが存在します。
色褪せはしにくいですが、汚れは目立ちやすいので、これらのメリットとデメリットの両方を把握しておきましょう。
2位 黒色
黒色の顔料の原料であるカーボンブラックの炭素結合は非常に強固であるため、紫外線によるダメージを受けにくいです。
ただ、白色と同様に汚れが目立ちやすいため注意しましょう。また、ピアノブラック等の色で光沢がある黒色の場合は、艶が経年劣化によって失われてしまうと色褪せしたように見えるので注意してください。
3位 青色
近年、様々なIT系企業のコーポレートカラーとして使用されている青色。青色に含まれる元素は結合力が高いため、耐光性も高く、色褪せしにくいです。一般的な住宅では鮮やかな青よりも、紺などの暗めの青色が用いられることが多いでしょう。
以上、色褪せしにくい色をご紹介しました。白と黒に関しては、どちらも外壁に使用した際に汚れが目立ちやすいため注意が必要でしょう。色褪せが発生しなくても、汚れが目立つようになれば洗浄や再塗装が必要になります。さらに、黒色は艶のあるタイプのものは艶が失われると色褪せしたような外観になってしまうのでご注意ください。
このように外壁の色を選ぶ際は、色褪せしやすいかどうかだけでなく、上記のような他の要素も考慮する必要があります。また、塗料が色褪せしやすいかどうかは、結合エネルギーだけでは決まりません。色褪せが発生する顔料(色素)と併せて使用される塗膜(樹脂塗膜)に関しても考慮することで、より間違いのない色選びをすることが可能になりますよ。アクリルやウレタン、シリコン、フッ素など、それぞれの塗膜の性質も理解することが重要です。
白色が外壁塗装に向かない理由とは
白色の顔料に使用されている酸化チタンが塗膜を破壊してしまう
酸化チタン自体は無機質であるため変質しません。ただ、触媒としての性質を有しているため、紫外線にあたると塗膜を破壊するラジカルを発生します。光を触媒として活用することができる塗料として光触媒塗料というものがあるのですが、この塗料は光を受けることで汚れを自然に分解するセルフクリーニング機能が備わっています。
ただ、通常の外壁塗装で白色の塗料を使用すると塗膜が破壊されて表面がザラザラになってしまいます。このように表面がダメージを受けてしまうと美観が損なわれてしまうだけでなく、色褪せが発生したように見えてしまうでしょう。
そのため、近年では塗膜を破壊してしまうラジカルが発生しないように、ラジカル制御型の塗料も流通しています。
また、白色の顔料に含まれる酸化チタンは他の色の塗料にも使用されています。発色性が良くなり、色褪せの進行を抑えてくれる一方で、白色以外の塗料でも塗膜を破壊するラジカルが発生するということにも注意が必要です。
黒色が外壁塗装に向かない理由とは
表面の艶は黒色の色素とは別物、カーボンブラックは表面温度が上がりやすい
黒色を外壁に塗布する場合、艶なしのマットな仕上がりにする場合は特に問題ありません。ただ、高級感を演出するために、黒色は光沢や艶とセットで使用されることが多いでしょう。
黒の色素と光沢の元となる材料は全くの別物です。黒色の顔料の耐光性は高いですが、光沢や艶の顔料の耐久性は高くありません。
そのため、黒色の顔料が変質しなくても表面の艶が失われてしまい、結果として色褪せしたような外観になってしまいます。
また、カーボンブラックは熱の元となる赤外線を吸収しやすいため、他の色と比較しても表面温度が上がりやすいです。
温度が上昇してしまうと塗料の化学変化が進みやすくなるため、色褪せや塗膜の劣化が起こりやすくなってしまいます。