雨漏りと聞くと、その原因としてまず“屋根や外壁”を連想する人は多いのではないでしょうか。しかし、実際には雨漏りを起こす箇所はそれ以外にもいくつかあり、そのひとつが「笠木」と呼ばれる部位です。
「笠木」という言葉の知名度はそれほどなく、「笠木って初めて聞いた!」「笠木とはどこの部分?」「私のうちに笠木はあるのかな?」と、そもそも“笠木”についてよく分からないという方もいらっしゃるかと思います。雨漏り対策として屋根や外壁については意識していても、笠木のメンテナンスを忘れていたばかりに、雨漏りを起こしてしまっては大変ですよね。
雨漏りが起こって後悔しないように笠木の役割や補修について把握しておくことは大事なことです。それでは、正しいメンテナンスのために笠木について詳しく見ていきましょう。
そもそも「笠木」とはどこの部分のこと?
「笠木」と聞いても、ピンとこない人も多いかと思います。笠木は多くのお住まいに設置されており、いくつかのケースを指す言葉です。
・ベランダの腰壁の上についている板金
・階段の手摺の上部分に取り付けられた仕上げ材
・塀や擁壁の上部にある瓦、煉瓦(れんが)
など、屋外・屋内問わず存在し「何かを覆って守っている部分」なのです。
冠木(かぶき)とも呼ばれることがある「笠木」。そもそも、鳥居や門など、上縁に横に渡している木といった意味がありました。今では、「頭にかぶる」「傘のように下部を守る」という意味で、下にある壁や躯体を保護する大事な役目があるのです。
笠木の素材には、金属や木などさまざまなものが使われています。人間が触ることを想定してケガのないような素材が使われることが多いです。また、屋外、屋内のどちらに使うかによっても素材は異なります。ベランダやバルコニーなどは直射日光や雨風を受けるので「熱くなりにくい・腐りにくい」というステンレス製がよく使われます。一方、屋内の階段手摺りの場合、毎日のように住む人が触るため、ささくれが置きにくく手触りのよい木材を使うことが多いでしょう。
また、以前は継目と取り合い部分をシーリング材で埋める「密閉式」が主流でした。現場で加工して取り付ける板金笠木です。現在の場合、笠木裏面と躯体間に隙間を作り通気層を設ける「オープン式」が主流です。安定した品質の既製品を採用することで熱による板金の膨張や結露対策になります。
壁や躯体の保護が主な笠木の役割
笠木の主な役割は、壁や躯体の保護です。自然の影響を受けやすい屋外において、ベランダやバルコニーの腰壁、屋上の立ち上がり部分、パラペットなどに笠木を取り付けることで雨水の浸入を防いでくれます。
雨が建物内部に侵入してしまうと建物の耐用年数を大きく縮めてしまうことになります。外壁の隙間から雨水が入ることで、雨漏りの心配だけでなく、構造体の腐食のリスクまで増えてしまいます。笠木は屋根や外壁よりも目立たない存在ですが、大事なお住まいを陰ながら守っている重要な部分なのです。
笠木には意匠性を高める目的も
笠木には意匠性を高める役割もあります。ベランダ部分やブロックなどは、素材だけのシンプルな見た目でも十分かもしれません。しかし、別素材・別の色の笠木で覆えばアクセントにもなり、デザイン性が向上します。笠木には、「防水性を高める」という主な目的のほか、見た目の印象をアップさせるという効果もあるのです。
また、バルコニーやベランダなどに笠木が取り付けられるとき、笠木は腰壁から外側に突き出ることになります。そのため、笠木が傘のような働きをして“雨だれ”を防ぐことにも繋がっています。雨だれが外壁に付くと美観が損なわれるので、笠木のおかげで美しい見た目を保つことができるでしょう。
取り付けられて間もない笠木はとても綺麗で機能性も高いですが、時間が経つとともに劣化が起こります。劣化がひどくなるとトラブルも起きますので、「どんな風に劣化するのか」「どんなトラブルが起こる可能性があるのか」を事前に知っておくことで予防や対策ができます。笠木の劣化症状とトラブルをおさえて、適切なメンテナンスをしていきましょう。
1.笠木の剥がれ・外れ
経年劣化で笠木が弱っているときに、台風や強風が吹くと剥がれや外れが起こることがあります。一般的に、木造住宅に取り付けられる笠木は、防水シートを張った木材に「アルミ」「鋼板」を被せ釘で固定しています。ただ、釘やビスは劣化してくると抜けやすくなるとともに、雨や紫外線などの影響で下地が腐食することもあります。固定力が弱まった笠木が強風で飛んだり、外れたりすることもあるのです。
数年程度のスパンでもいいので、「笠木が浮いていないか」「触ったときにぐらついていないか」などをチェックしましょう。固定が弱まっているときは、簡易的に補修、もしくは交換をご検討されることをおすすめします。
2.外壁材・躯体の腐食
笠木が外れても、お住まいに何らかのトラブルがすぐに起こるわけではありません。笠木は雨漏りの予防にもなる部材ですが、笠木が外れているのに雨漏りは起こっていないケースもあります。なぜなら、笠木の下にある防水シートのおかげで雨水を入り込ませないようにできるからです。ただ、この状態で永遠に雨漏りを防ぐことはできず、外壁材や躯体に雨水が染み込みやすくなるため、いずれカビや腐食が起こる可能性が大きいです。
外壁に雨水が浸水しているサインとして「サイディングの表面の剥がれ」があります。外壁に触れるとフカフカと浮いた感じがする、外壁がペラペラと剥がれてきたなど明らかな異変があった場合は注意しましょう。これは、外壁の表面の塗膜が劣化しているのではなく、笠木が外れたことで内部に水分が浸水している可能性が大きいです。まずは、状況確認のために、専門業者に点検をしてもらうことが大切です。
通常、笠木を設置するときは、湿気対策として排気・吸気箇所を設けます。しかし、外壁材が腐食している場合は、「排気・吸気箇所」の機能をもってしても抑えられないほど異常な湿気が起こっている証拠です。
笠木から浸水したトラブルの補修では外壁材を剥がさなくてはならず、その分費用がかかってしまいます。このような事態は、笠木周辺を定期的にチェックし、劣化がひどくなる前にメンテナンスをすることで防ぐことが可能です。笠木のトラブル防止のために、意識的にメンテナンスを心がけましょう。
3.雨漏り
「笠木が破損した」「外壁材が腐食した」という異変が重なると、雨漏りの可能性が高まります。ベランダの腰壁、屋上の立ち上がり部分、パラペットなど、雨水に晒されやすい部分を保護しているのが笠木です。笠木が破損することで、雨漏りのリスクは急激に高まるでしょう。
ただ、一般的に雨漏りが起こると浸入経路は外壁や防水部分にあるのではないかと間違われやすいです。「笠木が飛散している」「笠木が外れている」など、笠木に明らかな不具合が見えると、雨漏りの原因として疑いやすいかもしれません。しかし、見た目に不具合がなくても、笠木が劣化しており雨が入り込みやすくなっているケースも多いです。
雨漏り補修のために業者に依頼したとき、どこから起こっている雨漏りかをしっかり探ってくれる業者なら問題ありません。しかし、本当は笠木のトラブルなのに「塗膜が劣化したことによる雨漏りですよ」「防水が傷んで雨漏りしています」など、ほとんど確認もせずに決め付けられると大変です。雨漏りの原因が外壁や防水以外にも“笠木が原因のこともある”と頭におさえておくことで、間違った補修工事をされずに済むこともあります。雨漏りの可能性が笠木の劣化にもあることを、ぜひ覚えておいてくださいね。
ここまでお伝えしたように、笠木はふだん注目度の低い部分ですが「劣化すると外壁の傷み・腐食・雨漏り」にもつながることがあります。笠木の劣化を予防するためにもメンテナンスを定期的に行い、お住まいを守っていきましょう。
1.シーリング補修
笠木の素材がアルミ製や鋼板製の場合、施工していくうえで隙間ができるのが普通です。そのままでは浸水するため、継ぎ目を塞ぐ目的でシーリング材を充填しなければなりません。シーリング材は、種類によって耐久性が異なり、ホームセンター等で販売されているものは耐久性があまりよくありません。長くても3~5年で劣化するでしょう。
シーリングに浮きや隙間ができれば劣化のサインです。笠木は太陽光の影響を受けるため劣化は避けられません。シーリング材は紫外線に晒されるうち硬くなり、次第に痩せて隙間が出てきます。本来、目地部分を埋めているシーリング材に隙間があるなら、早めに補修しましょう。隙間をそのままにすると雨水が入り下地が傷んでしまうでしょう。シーリングが劣化する頃に、早めの段階でシーリングの打ち替え補修を行うことで雨漏りのリスクを減らすことができますよ。
また、笠木のつなぎ目部分がシーリング材でなく、ジョイントカバーで保護されているケースもあります。シーリング材のように隙間が出ることはありませんが、固定力が弱まってずれないように定期的にチェックを怠らないようにしましょう。
2.笠木交換
劣化により、「笠木が変形した」「笠木が固定されていない」などの場合、簡易な補修では済まず、「下地補修と笠木の交換」をしなければなりません。下地を補修するだけで状況が改善できるか、それとも笠木を交換しなければならないのか…などは、雨水がどのくらい浸入しているかによって異なります。水分で木材が変色している場合、防水紙が破れて浸水している場合など、笠木交換時にはきちんと状態を確認することが大事です。
笠木の置かれている状況によって一概には言えませんが、だいたい25年前後で防水紙の寿命がやってきます。お住まいのメンテナンスとして、外壁塗装を十数年ごとにやる方も多いかと思います。2回目の塗装メンテナンスや防水工事などのタイミングに合わせて、笠木を交換すると安心です。また笠木の劣化がひどくて雨漏りや腐食があれば、早めに交換してお住まいを守りましょう。
補修工事の方法やタイミングはさまざまなパターンがあります。誰しも「お住まいを守りたい」という気持ちから、補修やメンテナンスをするものです。しかし、誤った方法によって、逆に笠木をダメにしてしまう可能性も考えられます。なかには笠木だけでなく、お住まい全体の寿命にも影響していることも…。ここからは、絶対にやってはいけない笠木のNG補修工事をお伝えしていきます。
1.過度なシーリング材打設
シーリング材の充填のし過ぎはNGです。笠木と外壁の間にシーリング材を充填し過ぎると空気の逃げ場がなくなってしまいます。湿気は通過しないため、内部で湿気がこもっていずれ壁が腐食するかもしれません。笠木の隙間から雨水が入ると雨漏りのリスクが高まるとはいえ、シーリング材の充填を適切に行わないと逆に状態を悪化させてしまうのです。
「シーリング材を存分に打設すれば雨が入りにくいのでは?」と考えるかもしれません。しかし、実際は防水紙が雨漏りを防ぎ、溜った湿気や水分を逃がすために隙間を設けているのが正常な構造です。
笠木の工事の際、後からシーリング材の有無の確認は可能です。ただ、過度なシーリング材打設だとすれば、撤去のために笠木を取り外す工程も必要になります。手間も費用もかかってしまうことから、メンテナンスの際には笠木の知識に長けている補修業者を選ぶことが最も大切です。
2.笠木の脳天打ち
笠木を交換するとき、下地木材から簡単に外れないように強く固定しなければなりません。ただし、やってはいけないのが「脳天打ち」と言われるビスや釘の打ち方です。
脳天打ちとは、部材の脳天、つまり真上から釘やビスを打ち込む方法です。脳天打ちをしてしまうと釘穴・ビス穴から雨が浸入するリスクが高まります。ビス穴をシーリング材で埋めてある場合、雨漏りが即起こるわけではないかもしれませんが、いずれ隙間が生じて下地が腐食する可能性は大きいため注意しましょう。
笠木がとても重要な役割を担っていることや、正しい補修の方法などについてお分かりいただけたかと思います。次に気になるのは笠木補修のタイミングではないでしょうか。
「笠木だけをメンテナンスしよう」と、なかなかピンポイントで考えることはないですよね。コストや時間、手間などを踏まえて、ほかのメンテナンス時期と合わせながら効率の良さも重視したいところです。
たとえば、外壁塗装をしたとき、「笠木が浮いている」と業者から教えてもらうこともあります。しかし、その後、笠木メンテナンスのために板金業者に連絡して補修してもらうとなれば、塗り終えたばかりの外壁が汚れるリスクもあるでしょう。しかも、笠木を外してみたら「外壁材の内部が腐っていた」なんていうケースも考えられます。そうなれば外壁の補修もしなければならず、せっかく終えたばかりの「外壁塗装の費用」が無駄になってしまうのです。
笠木と密接な関係があるのは「外壁」です。
・塗り替えの時期ではないか
・外壁の汚れの付着が著しくないか
・外壁にクラックが発生していないか
・笠木からの錆が流出していないか
など、外壁の状態や築年数を考慮し、笠木のメンテナンスを検討しましょう。
また、陸屋根、バルコニー・ベランダがあるお住まいの場合、笠木の劣化で雨漏りが起こっていても、「防水層の劣化」と勘違いされる恐れもあります。防水層の劣化と決め付けず、「部屋の雨染みはどこにある?」「これまで笠木をメンテナンスしたか?」など、いろいろなアプローチから雨漏り箇所を特定することも大事です。雨漏り箇所を正しく知るために、必要なら散水試験も行って判断したいものです。
そのため、笠木・外壁・防水・塗装工事などすべてを一貫して依頼できる業者を探すことも大切です。ひとつひとつそれぞれを別業者に依頼すると、段取りや打ち合わせが複雑になるばかりか、日程調整や費用の支払い方法まで管理しづらくなります。まとめることで、手間もコストもおさえることができ、スムーズに事が運びます。
街の外壁塗装やさんでは無料で点検を承っており、お客様のお住まい全体のチェックをさせていただいております。街の外壁塗装屋さんは外装リフォーム全般の施工経験が豊富にありますので、外壁はもちろん笠木や防水層についてもお客様にとって最善の補修方法をご提案しております。外壁や笠木のことでご不安な点がありましたら、ぜひお気軽にご相談ください。
※笠木の素材がガルバリウム鋼板製なら、塗り替えすることもできます。「笠木にアクセントカラーで塗り替えしたい」「どんな色になるか事前に知りたい」などの場合、カラーシミュレーションも作成しております。カラーシミュレーションをご希望の方は、スタッフにお気軽にご相談ください。
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ベランダ壁や階段の手摺上部などを覆っている仕上げ材全般を「笠木」と言います。
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外壁や躯体の劣化を防ぐための建材で、さまざまな素材が使われています。アルミ製笠木は、かつては密閉式でしたが、現在はオープン式が採用されています。
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笠木の主な役割は外壁や躯体の腐食を防ぐことです。お住まいの意匠性の向上にも貢献しており、最近はデザイン性の高い笠木が増えています。
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笠木は、目地を埋めているシーリング材の劣化、釘やビスの浮きといった経年劣化や自然災害をきっかけとして破損します。笠木の破損は、雨漏りのリスクを高めます。
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笠木が外れて雨水が浸入しやすくなると、防水紙の劣化が早まります。結果的に、防水紙の傷みや腐食から雨漏りの発生を促してしまうのです。劣化の初期段階で異変を見つけ補修を行う事で大きなトラブルを防ぐことができます。
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主な笠木の補修方法は「シーリング材の打設」と「笠木交換」です。ただ、笠木の仕組みや補修について精通していない業者の場合、間違った補修をすることがあります。笠木にも悪影響を及ぼすばかりか、お住まいの躯体を傷めるリスクもあるので注意しなければなりません。
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笠木は、紫外線や雨水に晒されているので必ず劣化します。いずれ補修メンテナンスをしなければならない部分です。外壁や防水層のメンテナンス時期と合わせることで、メンテナンスの計画がしやすくなります。