平成初期に入るまではお住まいの外壁材といえばモルタルと呼べるほどモルタル外壁が主流でした。そのため、築30年~40年ほどのお住まいでは特にモルタル外壁を使用されていることが多いです。木や白土を使った風合いは多くの日本人が好みそれ故にモルタルは好んで外壁材として使われてきました。しかしモルタル外壁の施工は複雑な工程となり施工日数もかかるため、その分費用も多額になりがちで現在では主流から遠ざかり、サイディングが現在の主流となっているのです。しかしそれまで多くの家で使われていたモルタル外壁には他の外壁材にはない長所やメリットがありました。
そこで今回はモルタル外壁がどのように普及したのかそのきっかけと特徴、そしてメンテナンスのポイントについてご紹介してまいります。
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モルタルが広く日本中で使われるようになった理由とは?
自然との共存を古くから実践してきた日本では、自然由来の素材をお住まいにも使用してきました。今でも戸建住宅の多くは木造建築で、粘土瓦や漆喰などは今も新築住宅で使われており、多くの方が目にしたことがあるでしょう。そんな長年にわたり愛されてきた自然由来の建材ですがそれには大きな弱点が潜んでいます。それは非常に燃えやすいということです。
江戸時代は「火事と喧嘩は江戸の華」と呼ばれるほど火災が多く、およそ3年に1度は大火と呼ばれるような大火事がありました。1657年に起きた明暦の大火では10万人以上の人が亡くなっています。
そんな江戸時代も終わり、明治を過ぎて大正、関東大震災で家屋から家屋へと出火し、大火災を招いたことから不燃性であるモルタルが注目されるようになり震災復興から使用されるようになりました。そして、昭和25年頃モルタルの下地であるメタルラスの規格が定められたことからモルタル外壁は全国に普及しました。今のお住まいでも不燃性建材が多く使われるのはそういった大規模な火災の経験があるからなのです。
モルタルの原料はセメントと砂と水です。それらを混ぜ合わせて丁寧に塗っていくのがモルタル外壁になります。サイディングやタイルとは違って職人が1軒1軒塗っていくため1つとして同じ仕上がりのお住まいはなく、職人の腕が試される外壁と言っても良いでしょう。
モルタル外壁の場合、ボードを組み合わせるサイディングとは異なり継ぎ目がありません。そのため外壁が非常に綺麗に仕上がるという特徴があります。
本ページの冒頭でも記載しましたが1軒1軒人の手で塗っていくモルタルは工程が複雑なうえ工期が長く、コストも嵩み、職人の腕によって仕上がりに差が生じるなど決して便利な工法ではありません。そのためモルタル外壁は敬遠され、ローコスト住宅が普及している現代では施工も容易で品質も安定しているサイディングが主流となっています。
しかし1軒1軒の仕上がりが異なるモルタルは非常に奥深い工法として今も愛されており、その最大の特徴は模様を自由に描くことができるという点です。吹き付け塗装にしても仕上げはリシンやスタッコなど様々な方法があります。吹き付けた後にローラーをかけて凹凸を無くすボンタイルや鋭い工具で削る掻き落とし、近年人気が高まっているジョリパットなどモルタル外壁ならば1人1人のお客様のご要望に沿ったお住まいに仕上げることができるのです。
※アイカ工業HPジョリパットパターン一覧画像より一部抜粋
そんなモルタルの注意点としては「ひび割れを起こしやすい」という点が挙げられます。
材料の配合や施工中にどうしても出来てしまう塗り重ね部分、下地となる木材の伸縮、地震などによる建物の揺れなど様々な要因でひび割れ(クラック)が発生してしまうのです。
ひび割れが小さいうちに補修することができれば良いのですが放置するとそこから雨漏りやお住まいの劣化が進み、お住まい全体の耐久性の低下という事態に繋がりかねません。そのためご自宅の外壁がモルタルという方は他の外壁材よりも注意して定期的に点検する必要があります。
モルタルの仕上がりの種類を紹介する中でジョリパットが出てきました。ジョリパットは建材として40年ほどの歴史がありながら他のモルタル外壁とは大きく異なる点があります。
それは先ほどもご紹介したようなひび割れが他のモルタル外壁に比べて起こりにくい点です。ジョリパットは柔軟性や可撓制が高いため、建物が揺れたり風邪を受けたりした際に建物に追従するのでひび割れを起こしにくいという特性があります。そのため必然的に耐久性も高まり、15~20年はメンテナンスフリーで生活することもできるのです。ただし経年による砂ぼこりやゴミなどの汚れの蓄積は避けられませんので点検の上、頃合いを見て塗装を行うことは必要になります。
ジョリパットは人体に有害なホルムアルデヒドの発散量が少ないF☆☆☆☆の塗材のため外壁だけでなく室内に塗ることも可能です。またデザインバリエーションも豊富のため内装材として人気があります。
ジョリパットはモルタルの仕上げとして吹き付けるので新築だけでなく既存のモルタル外壁の上からでも施工可能です。「モルタル外壁でイメージチェンジをしたい!」という方はぜひジョリパットによるリフォームをご検討してみてはいかがでしょうか。
私たち街の外壁塗装やさんではジョリパットによるリフォームも承っておりますのでお気軽にご相談ください。
月に1度は点検を
ひび割れを起こしやすいモルタル外壁は日常的に状態を確認してあげることが大切です。ひび割れた箇所を早期に発見し、素早く補修することでお住まいの耐久性を維持できる上、費用も安く済むというメリットもあるのです。かといって2階の外壁まで細かく点検するのは危険なのであくまで庭など地上から見えるところを点検するようにしましょう。地震や台風などの自然災害の発生後は特に点検が必要です。
2019年、首都圏に停電などの被害も齎した台風15号はその強烈な風でモルタル外壁を引き剥がすという被害も起こしました。遠目に見てもひび割れが確認できる場合や新築から数十年経過している、モルタル外壁のメンテナンスをしばらく行っていないという方はぜひ一度私たち街の外壁塗装やさんの無料点検をご活用ください。
モルタル外壁はサイディングとは異なり表面が細かくザラザラしている仕上げが多くなっています。そのためどうしても汚れが付きやすいという特徴があります。
汚れはそれを栄養源とするカビや苔、藻が繁殖する要因となるため、放置しておくとお住まいの耐久性に影響が出るほか、美観を損ねることになります。お住まいの耐久性や美観に影響を及ぼさないためにもモルタル外壁に汚れを見つけたら届く範囲で構いませんのでブラシなどで優しく洗い落としてあげましょう。
藻や苔が発生しやすいのはモルタル外壁に限らず日当たりの悪い箇所になります。具体例を挙げると外壁の北面や1階部分、風通しの悪い狭小地です。メンテナンスの目安は必ず「劣化が顕著な箇所」の状態からメンテナンスが必要であるのかどうか検討しましょう。
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モルタル外壁の表面はザラついていることが多く、汚れが溜まりやすい
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カビや藻、苔を放っておくと洗浄でも落とせなくなるため見つけたら早めの清掃を心掛けましょう
モルタルは施工後、乾燥して硬化していく際に必ず収縮します。この収縮こそがひび割れの原因なのです。
現在、住宅建築でモルタルを使用する際はモルタルの中に添加剤を入れたり下地にメッシュを使用することで以前と比べてだいぶひび割れを防げるようになりました。しかしそれでも、やはり点検にお伺いしますとクラックを見つけることが大半です。
施工中の天候やその土地の気候などの問題で、どれだけベテランの左官職人が施工してもモルタルのひび割れを防ぎきることは不可能です。そのためお住まいがモルタル外壁であるという方はひび割れと根気よく付き合っていくことだと割り切る心構えが必要です。
このひび割れも幅によって危険度が異なってきますので、ひび割れのあるなしだけでなくその大きさにも注意してください。
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モルタルに発生するひび割れは幅によって危険度が異なります
ヘアークラック
(幅0.3mm未満のひび割れ)
まだ築年数の浅いモルタル外壁に見られがちで、髪の毛の太さ程度の幅のためヘアークラックと呼ばれています。この段階では雨漏りなどお住まいへの悪影響を及ぼす可能性は低いので喫緊の対処が必要というわけではありません。しかしここから幅が広がると危険なためヘアークラックは定期的に幅が広がっていないか点検する必要があります。
構造クラック
(幅0.3mm以上のひび割れ)
ヘアークラックより幅が大きくひび割れの深さも5mm以上あり、紙を差し込むと入り込んでしまうようなクラックを構造クラックと呼びます。この構造クラックはすぐにでも補修をしなければいけません。構造クラックを放っておけばそのまま雨漏りに繋がり、構造クラックが進むとモルタルが剥落し下地が露出することになります。モルタルが剥落した場所に歩行者などがいれば怪我では済みませんし、物に当たれば当たったものを破損させてしまう恐れもあるのです。
モルタル外壁の色が落ちてませんか?新築時と比べてみて色褪せがないか点検してみましょう
モルタル外壁もサイディング同様に塗装が施され、塗膜により外壁を保護しています。そのため色褪せていればそれは塗膜が傷んできた証拠です。色褪せを見つけたら外壁塗装によるメンテナンスが必要と考えて下さい。また、塗料は劣化をすると白い粉が表面に浮き出てくる「チョーキング現象」が発生します。もしも外壁に指で触れた際、白い粉が付着するようでしたら色褪せよりも塗膜の劣化が進行していることになります。
塗料は顔料だけで成立しているわけではありません。色の元となる顔料と塗膜の元となる樹脂、苔や藻、カビの発生を防ぐ添加剤や粘度調整剤など様々な添加剤を混ぜ合わせて作られているのです。塗装直後は強固だった塗膜も紫外線や雨、気温の影響を受け徐々に分解され、いずれは顔料が表面に露出してきます。この表面に露出する顔料こそが触れた時に付着する白っぽい粉の正体なのです。チョーキング現象の発生はすなわち塗膜の分解が進んだ結果です。既に防水性能が低下し外壁の劣化を進めているので早めに外壁塗装を施してあげましょう。
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モルタル外壁に触れて粉がついてくるのはチョーキング現象(白亜化)
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チョーキング現象が発生しているということは塗膜が粉化して、防水性能が落ちています
劣化していないモルタル外壁ならばリシンやスタッコなどの吹き付けが下地から浮き上がったり剥落することはありません。
モルタル外壁にひび割れがある場合、そこから雨水などの水分が浸入し湿気を含む空気が塗膜を押し上げて浮いてきたり膨らむことがあります。
こういった塗膜の浮きや膨らみを放っておくと外壁全体に拡大することもあります。そうなると再度吹き付け塗装を行いリシンやスタッコを作り上げていかなければいけませんので、通常より多くの費用がかかってしまうことにもなるのです。
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塗膜が浮いたり膨らんだ状態
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一部が剥がれ落ちて下地が露出してしまう
モルタル外壁にひび割れがある場合、その幅や長さ、深さが拡大していないか注意しましょう。
冒頭から何度もご紹介していますがモルタル外壁で最も注意しなければならないのがひび割れ(クラック)の進行です。幅が0.3mm未満のヘアークラックでも時間が経てばそれ以上の構造クラックになる可能性は十分にあります。ひび割れを点検する際は幅だけでなく長さや深さも注意してみる必要があります。
地震や台風などの自然災害が起きた後はもちろん、季節の変わり目などでは点検をしてあげましょう。その際、写真を撮ったり、ひび割れのサイズを測ったりして記録を残していただくと、その後の点検時に比較しやすくなるためおすすめです。
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ひび割れが拡大していないか確認しましょう
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写真や記録を残しひび割れの変化を比較できるようにしましょう
モルタル外壁が汚れていた場合、手洗いでも簡単に苔や藻、カビを落とすことができます。水をかけた後、台所用中性洗剤を柔らかめのブラシに含ませて軽く擦ってあげてください。酸性やアルカリ性の洗剤は外壁に悪影響を及ぼす可能性があるので使用してはいけません。ブラシで擦った後、水で洗い流し最後に乾いた布で水分を拭きとりましょう。ただし、長期的に放置され苔や藻、カビが繁殖していたり汚れが酷くなっていたりすると完全には落としきれない場合もあります。
高圧洗浄機をお持ちの方だと強い水圧をかけて一気に洗い流したくなるかもしれませんが、高圧洗浄では表面の塗膜を傷つける恐れがありますのでやめておきましょう。汚れを落としやすいスチームクリーナーも同様ですので使用しないようにしましょう。
ブラシで丁寧に擦っても汚れが落ちない、落ちたものの色褪せて見えるなどの状態であればモルタル外壁の塗り替えを検討する時期に来ています。
幅0.3mm未満のヘアークラックであればそのまま外壁塗装を行って構いません。ヘアークラックならば幅が狭いため下塗りでフィラーを使用すれば目立たなくなるどころかクラックがあったかどうかさえ分からなくなります。
使用する塗料は今後の外壁の劣化を踏まえて、弾性・微弾性の塗料にしましょう。クラックの幅が広がったり新しくクラックができたりしても塗膜が伸びて追従するのでモルタル外壁の表面にひび割れが表れることはありません。ただしモルタル外壁に水分が含まれている状態で弾性塗料を塗ると塗膜の膨れや剥がれを引き起こすことがあります。それを防ぐためにも使用する塗料の「透湿性」を確認しておきましょう。
モルタル外壁に生じたひび割れが幅0.3mm未満のヘアークラックのみでチョーキング現象が発生している際は、外壁塗装を行い防水性を回復させましょう。仮にひび割れが生じていなくても弾性・微弾性の塗料をおすすめします。
というのも現状でひび割れが発生していなくても将来的にひび割れが発生する可能性があるからです。モルタルは新築後7年ほどで乾燥収縮が治まりそれ以降は災害でもない限りはひび割れが発生しにくいと言われています。
一般的なお住まいの外壁塗装は10年と言われていますが、モルタル外壁の塗り替えは新築から7年を目安に行っていただくとオススメです。
水分や湿気を含んだ空気が塗膜を押し上げ、浮きや膨らみができてしまっている場合、その部分と周辺を含めて剥離し、作り直します(パターン付け)。
剥がした部分にモルタルを塗り直し、吹き付け塗装で再度、リシンやスタッコの模様や柄を付け、その後、塗装していきます。放っておくと、塗膜の浮きが全体にまで広がってしまうこともあるので、早めの対処が必要です。模様や柄を再度、付けるので普通の塗装よりも費用がかかることになります。水分や湿気を含み、塗膜が浮いたり膨らんだりしている場合はその部分と周辺をまとめて剥がし、モルタル外壁を作り直します。
剥離させた部分はモルタルを塗り直し、吹き付け塗装により改めてリシンやスタッコの模様に仕上げ、塗装しましょう。塗膜の浮きや膨らみを放置しておくと全体に拡大するため早急に対処しなければいけません。塗膜が浮いたり膨らんだりしてから再度模様や柄をつけるとなると通常の塗装より費用がかかってしまうからです。
構造クラックが発生している場合、雨水が浸入したり外壁の剥落が起こる前に補修する必要があります。構造クラックを清掃し、下塗りとしてプライマーを塗ってシーリング材やモルタルで補修しましょう。
ひび割れの奥深くまで補修材を充填させなければいけませんのでひび割れの幅によってはVカットやUカットをしてから補修しましょう。剥落が発生しそうな箇所は壁に穴を開けてビス止めを行います。クラックは補修するとどうしても目立ってしまうので応急処置以外は外壁塗装時に補修を行うことがほとんどです。※模様付けして塗装します。
ここまでモルタル外壁の特徴や状態ごとの具体的な補修方法をご紹介してきました。モルタル外壁は性質上どうしてもひび割れを起こしやすく、劣化が進行するほど補修費用も嵩んできます。
そのため重要なのはモルタル外壁を定期的に点検し、ひび割れなどの劣化を発見したら劣化が進む前に補修を行うことです。初めての外壁塗装であればお住まいの状態に合わせて築5年~10年を目安に、それ以降は塗料の耐用年数や外壁の状態に応じてメンテナンスを検討しましょう。
モルタル外壁のメンテナンスを行う際は必ずモルタル外壁の塗装に適切な塗料を使用し、ひび割れの状態に合わせて補修を行うことのできる塗装業者に依頼しましょう。またパターン付けも重要になります。既存のモルタル外壁の仕上がりを観察し、元通りの状態に戻すには高い技術が必要です。
安価だからと工事を依頼して塗装後早々、剥離や浮き、膨れが発生し再補修となると目も当てられません。そのようなトラブルを避けるため、業者へモルタル外壁の塗装をご依頼される際は、モルタル外壁の施工経験がどれほどあり、正しい知識を有しているのかどうかホームページなどで確認をしましょう。
モルタル外壁の診断と補修方法まとめ
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不燃性のモルタル外壁は火事の被害が拡大しやすかった日本で急速に普及しました。
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モルタル外壁は不燃性で火災に強いため、火事被害が拡大しやすい日本で普及しました。
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既存のモルタル外壁のイメージチェンジには色褪せやひび割れがしにくいジョリパットがおすすめです。
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モルタル外壁は色褪せやひび割れなど劣化が分かりやすいためお客様ご自身で点検いただくことも可能です。点検してみてご不安な点がございましたら塗装業者に相談してみて下さい。
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モルタル外壁の劣化が進行すると剥落や雨漏りなどに繋がります。本ページでご紹介した劣化が起きていないか、起きている場合どうすればよいかを確認しメンテナンスを行ってください。
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モルタル外壁のメンテナンスに最適なタイミングは劣化が表れる前もしくは劣化を確認した直後です。劣化が拡大する前にモルタル外壁の補修について正しい知識を持った塗装業者に依頼しましょう。