近年、外壁塗装を行う際には、一般的に業者から水性塗料を推奨されることが増えていますね。
かつては外壁塗装と言えば、主に油性塗料が広く用いられていました。”水性塗料“と聞くと、どうしてもすぐにはがれてしまいそうな印象があって、耐久性に疑問を感じる方もいらっしゃるでしょう。
・水性塗料は劣化が早いのではないか?
・水性という特性は、雨の多い地域でも問題ないのか?
・臭いが少ないのはありがたい点だけれども…
今回は、専門業者のアドバイスに従って水性塗料を選択するメリットや、従来の油性塗料との違いについて詳しく説明し、どちらが適しているかを判断する要点を解説します。
水性塗料は水で希釈する塗料
塗料の成分
塗料は主に「樹脂」「顔料」「溶剤」の3つの要素で構成されています。塗装が施されると、「樹脂」と「顔料」は塗膜となり、外壁を保護する役割を果たし、同時に「溶剤」は蒸発して放散されます。
さらに、これらの主要な成分に加えて、塗膜に輝き(つや)や弾性などの特性を付加するために、「添加剤」が添加されます。
「油性塗料」と呼ばれるのは、樹脂を溶かして塗りやすくするために強い臭いを持つ有機溶剤(シンナー)を含む塗料です。
対照的に、有機溶剤ではなく水をベースにしたのが「水性塗料」です。
主成分①:顔料
顔料とは、塗膜に色を与えるための成分です。エナメル塗料とクリアコートの2種類があります。
主成分②:樹脂
塗料の品質と持続年数は、樹脂によって決まります。アクリル樹脂、シリコン樹脂、フッ素樹脂など、さまざまな種類が存在します。
主成分③:溶剤
油性の塗料は、シンナーと呼ばれる有機溶剤を使いますが、水性の塗料は成分を水を使って溶かしています。
添加剤
たとえば、ツヤが不要な方には、ツヤ消し効果のある添加剤を混ぜたり、塗膜の劣化を抑えるための防腐剤やカビの発生を防ぐ防カビ剤などが利用されます。同様に、塗装工程中の気泡や垂れを防ぐための添加剤も存在します。また、色のムラを防ぐ色ムラ防止剤や、素材との密着性を高めるための添加剤も配合されることがあります。
水性塗料と油性塗料、その違いとは?
水性塗料と油性塗料の違いを詳しく見てみましょう。先に述べた通り、最大の差は、塗料を希釈するのに使われる溶剤の違いです。
油性塗料では、塗料を溶かすためにシンナーやその他有機溶剤が使用されます。対照的に、水性塗料は水で希釈して使用します。この際、使用する水は清潔であれば水道水でも問題ありません。
塗布すると、油性塗料はシンナーや他の有機溶剤が揮発し、塗膜が形成されます。この過程で強烈な臭いが発生し、塗装作業中は周囲にきつくて嫌な特有の匂いが広がることがあります。また、施工が完了した後も数日間は臭いが残ることがあります。
水性塗料を使用する場合、水が蒸散して塗膜が形成されます。この過程では、油性塗料のシンナーによる臭いとは異なり、強烈な匂いは発生しません。周囲への影響が少なく、ご家族や作業する職人にも気配りされているといえます。
それでは、水性塗料と油性塗料を比べて、どちらの塗料が耐久性があり長持ちするのでしょうか。一般的に、シンナーを含む油性塗料の方が頑丈だと思われるかもしれません。
確かに、油性塗料は通常、耐久性が高く長寿命とされています。そのため、以前は主に油性塗料が使用されていました。
しかしながら、幸いなことに、近年の塗料メーカーの技術革新により、油性塗料と水性塗料の性能差はほとんどなくなっています。
以前から、油性塗料にはシンナーや他の有機溶剤が人体に害を及ぼす可能性があるという懸念がありました。そのため、塗料メーカーが求められる水性塗料の開発に専念した結果、外壁塗装を行う際に油性塗料と水性塗料の違いを気にせずに済むようになりました。
現在、外壁塗装において主流となっているのは水性塗料です。
昔は外壁塗装に使われる塗料と言えば、油性塗料が唯一の選択肢で、シンナーや他の有機溶剤が必要でなければ施工することが難しかったのです。
しかしながら、以前の油性塗料は強烈な臭いがするために不評で、管理や健康面での課題も抱えていました。
初めて水性塗料が導入された際には、耐久性に乏しく性能も劣るため、価格は油性塗料よりも安価でした。 しかし最近では、水性塗料の技術向上により、耐久性に優れた塗料が次々と市場に登場しています。
※出典:社団法人日本塗装工業会より
水性塗料でも長寿命な塗料
その中でも、ラジカル制御型塗料が特に注目されています。「ラジカル」とは、太陽光の紫外線が塗料の調色に使われる酸化チタン(白色顔料)に当たることで生じるエネルギーのことを指します。この生成物は、塗料の樹脂や有機顔料を劣化させてしまうという悪影響を持ちます。
こうしたラジカルを制御して抑制できる能力を持つのが、ラジカル制御型塗料なのです。
また、優れた低汚染性を持つ水性塗料もあります。
水性塗料は、汚れがつきにくく、かつ汚れが簡単に落ちる特性を持つ塗料です。汚れが付きにくいため、藻などの発生原因となることも少なく、塗膜を保護します。耐久性にも繋がり、塗装面の長寿命化に寄与します。
ご紹介したように、水性塗料も品質が向上し、優れた塗料が開発されており、ラインナップの種類も豊富になってきています。その性能は油性塗料に匹敵し、最近では塗装専門業者も水性塗料を推奨することが増え、臭いや健康への影響を気にする人々も水性塗料を選ぶという方が増えてまいりました。
日本ペイント「パーフェクトトップ」
2012年にリリースされ、業界トップの日本ペイントが展開するパーフェクトトップは、戸建て住宅60万棟以上に使用された実績を持つシリーズです。この信頼性抜群の塗料は、外壁塗装において一般的な選択肢となる水性塗料です。ラジカル制御技術を用いたこの塗料は、美しさを長期間にわたり維持する能力に優れ、コストパフォーマンスも高いです。
また、花の香りを持つパーフェクトトップローズも取り扱っております。
エスケー化研「エスケープレミアムシリコン 」
エスケー化研が提供する水性塗料の中でも代表となる一品です。ラジカルの発生を効果的に抑制し、さらに特殊な耐候性に優れたハイブリッドシリコン樹脂を使用することで、これまでのシリコン系塗料よりも抜群の耐久性を実現。さらに、なめらかで光沢のある塗膜を形成します(マット仕上げも可能です)。
シンナーのような強烈な臭いがない
水性塗料の大きな利点の一つは、強烈なシンナー臭がほとんどしないことです。一方、油性塗料は塗装が完了する際にシンナーが蒸発し、そのために不快な臭いが発生します。それに対して、水性塗料は水分が蒸発するだけなので、ほとんど臭いがありません。ただし、完全に無臭というわけではなく、独自の香りがあることもあります。
引火のリスクが低くて安全性が高い
大気中の汚染源やシックハウス症候群とされる揮発性有機化合物(VOC)を発散せず、室内環境基準フォースター(F☆☆☆☆)を達成しているものが多いのが水性塗料の特長です。油性の塗料のようにシンナーを含まないため、火災のリスクも低くなります。
そのため、引火の可能性が低く、管理も容易で、保管場所や施工場所に関しても比較的気を使う必要が少ないため、取り扱いがしやすい塗料と言えます。また、水性塗料を使用した際には、道具類を水で洗浄できる利便性もあり、安全かつ使い勝手が良いと言えるでしょう。
※環境省:水・大気環境局 大気環境課「すぐにできるVOC対策」より一部参照「1液型」が多く、職人も使いやすい
水性塗料と油性塗料には、「1液型」、「2液型」があります。☑ 1液型…塗料缶は1つでその中に水やシンナーを混ぜて使用する。
☑ 2液型…塗料缶が2つあり、主材と硬化剤が別々になっている。
2液型の場合、塗布直前に主成分と硬化剤を混ぜ合わせ、その後水やシンナーで希釈する必要があります。そのため、混合後は迅速に使用しなければなりません。
対照的に、水性塗料は主に1液型が多く、混合作業が不要で、すぐに塗布可能です。このため、塗装のプロフェッショナルとしても取り扱いが容易で、効率的ですし、無駄もありません。
油性塗料と比較すると、耐久性が低い
水性塗料は使い勝手が良く、臭いも気になりにくく、高い安全性が特長ですが、反面、いくつかのデメリットも存在します。
先程述べた通り、水性塗料の性能も油性塗料に近づいてきていますが、相対的に見ると油性塗料に比べて若干劣る面がいくつかあります。ただし、全体的な視点で言えば、水性塗料の方が僅かに経済的かもしれません。水性塗料と油性塗料の両方において、品質のグレードと価格は相関関係にあると言えます。
耐久性が重要な方には、おすすめできる水性塗料も多数存在していますので、どうぞご相談ください。
乾きにくく、湿度と気温に左右されやすい
水性塗料の乾燥と仕上がりにかかる時間は、油性塗料と比べると、日々の気象条件により影響を受けやすいという一面があります。気温と湿度が乾燥に大きく関与し、油性塗料のような揮発性が少ないため、水性塗料は乾くのに時間がかかることがあります。
特に寒冷地の冬などでは、低い気温のために乾燥が遅れる状況が見られます。また、湿度が高く、天候が晴れることの少ない地域でも、水性塗料の乾燥には少し時間がかかるでしょう。
なお、雨の日には水性塗料であろうと油性塗料であろうと、乾燥には影響があることに変わりはありません。
水性だから、水で溶けてしまうのでは?
水性塗料は水で希釈して使用するため、水に溶けてしまうのではないかと考える方もいるかもしれませんが、実際にはそうではありません。乾燥すると、油性塗料と同様に仕上がりが保たれ、塗膜は雨をはじきます。
ただし、塗装作業中に雨が降ると、乾燥する前に影響を受ける可能性があるため、注意が必要です。信頼性のあるプロの業者は、天候を考慮して作業を進めるため、ほとんど問題は起こらないでしょう。
外壁には水性塗料・屋根には油性塗料がおすすめ!
外壁においては、水性塗料が主要な選択肢となっていますが、屋根の塗装においてはどうでしょうか。
屋根も外壁と同じように建物の外側に位置し、日々強い紫外線や雨風に晒されています。しかしながら、建物の中でも屋根は紫外線が最も直接当たる場所であり、外壁と比べてより過酷な条件下に置かれています。
したがって、屋根の塗装を行う際には、耐久性のある油性塗料がお勧めです。屋根の場合、臭いは上方に拡散されるため、心配する必要はあまりありません。昼夜を問わず強い紫外線に晒される屋根は、油性塗料を使用することが適しています。一方で、強烈な臭いや健康への影響を避けるためには、水性塗料を外壁塗装に活用することが有益です。
金属系の素材には油性の塗料が安心?
水性塗料の一つの弱点は、油性塗料に比べて乾きにくいという点です。この事実は当然のことですが、水の蒸発とシンナーの揮発の速さを比べてみると、その理由が理解できるでしょう。
そのため、水性塗料は窯業系サイディングやモルタルなどの素材には浸透しやすく、素材と調和しやすい特長があります。しかしながら、鋼板やアルミ、ステンレスといった金属系素材には密着しにくい性質を持つため、雨樋や破風板、軒天などの付帯部分には直接的な塗装が適さない場合もあります。
このようなケースでは、適切な下塗り剤を用いたり、素材に応じた下地処理を行うことで、水性塗料を問題なく使用することができます。
さらに、金属素材にも適用可能な塗料も開発・販売されています! 「水性ファインSi」は、日本ペイントが開発・販売しているオールラウンド型水性塗料で、鉄部の塗装を可能にします。この塗料は、鉄製やその他の金属系、さらにはコンクリート素材など、幅広い種類の素材に対応しています。
水性と聞くと、塗料の品質に不安を感じる方もいるかもしれませんが、ご安心ください。塗料メーカーの継続的な改良の成果により、今では水性塗料でも耐久性に優れた製品が多く存在します。むしろ、臭いが少なく、安全性が高く、環境と人に優しい塗料と言えます。
「塗料の臭いが気にならないものがいい」「耐久性のある塗料を選びたい」 外壁塗装についてのご要望や疑問、是非お聞かせください。街の外壁塗装やさんが、ご自宅に最適な塗料と工事プランをご提案いたします。 点検やお見積もりは無料で行っておりますので、まずはお気軽にお問い合わせください。
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水を用いて希釈する塗料を「水性塗料」と呼びます。有機溶剤を使って希釈されるのが「油性塗料」です
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水性塗料は有機溶剤(シンナー)を使わないので、強い臭いがしません
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油性塗料は耐久性が高い傾向にありますが、今日では水性塗料も同等の性能を持つ製品が販売されています
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紫外線への影響を強く受ける屋根には、油性塗料の使用がおすすめです
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金属素材においても、適切な下地処理や下塗り材の工夫により、水性塗料を使うことができます
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現在では、外壁塗装には水性塗料が主流となっています。気になることがあれば、お気軽にご相談ください