木更津市大久保にお住まいのM様よりお電話がございました。築40年で屋根材の劣化が気になるということで、当初は屋根葺き替え工事をご検討されていました。しかし屋根葺き替え工事はコストがかかるため、屋根の状況次第で塗装等の補修で済ませたいところです。屋根に合わせ劣化が気になるのは軒天や雨樋、しかしこれらの補修を行うには足場仮設が欠かせません。そこで今回は屋根・付帯部だけでなく外壁等外装全般の補修工事をご提案させていただきました。
現在は廃盤になり在庫も少なくなっているセメント瓦についてもご紹介したいと思いますので、ぜひご参考にしてみてください。
ビフォーアフター
工事基本情報
点検の様子
屋根葺き替えをご検討されているセメント瓦
M様が最も気になっている屋根です。最近では瓦のかけらのようなものも落下しているようで、屋根葺き替え工事が必要なのだろうかと不安を抱えていらっしゃいました。使用されているのはセメント瓦ですが、和瓦・釉薬瓦とは素材から全く違う屋根材です。
そもそも和瓦など昔から使用されている瓦は粘土を焼いて形成された瓦です。それに対しセメント瓦は名前の通り、セメントを型に入れ固めた屋根材です。特徴はどちらかというと化粧スレート等に似ており、吸水率が高い為塗装による塗膜保護が欠かせません。40年程前に和瓦よりも安いという理由から流行った屋根材ですので、使用しているお住まいは多いかと思います。しかし現在は、瓦と同じメンテナンスだけでなく塗装も必要ということでメンテナンスコストが非常にかかるセメント瓦は販売自体されていません。在庫も少なくなっているため、割れや欠損があれば屋根葺き替え工事しか補修手段がない状態になってしまっています。
吸水するセメント瓦はどうしても苔や藻が発生・繁殖しやすい屋根材です。一度苔や藻が発生すれば水を滞留させ更に繁殖を促します。吸水が進めば表面もざらざらと削れるように劣化し、セメント瓦自体の寿命も縮めてしまいます。さらにこれはセメント瓦に限りませんが、一度劣化した屋根材は塗装を行う事で劣化を止めることはできますが、塗装を行ったからといって元に戻るということはありません。そのため如何に劣化する前に塗装を行い保護をするかにかかってしまいます。
経年で剥がれてしまった軒天
続いては軒天です。現在は樹脂製のものや鋼板が使用されている軒天ですが、少し前まではベニヤが主流でした。しかし軒天は湿気がこもりやすい傾向があり、ベニヤ等では割れや剥がれを起こしてしまうのです。経年によってどうしても起こる症状ではありますが、穴が開いてしまうと屋根裏に鳥や小動物が入り込み棲家にしてしまいます。ハクビシンなど大きめな動物が入ってしまったというケースも耳にしますが、騒音や鳴き声、異臭など様々な問題を抱えますので侵入を許すわけにはいきません。
また比較的劣化しやすい箇所として、木製の破風板・鼻隠しです。こちらも塗膜が劣化することで木材が傷んでしまいますが、高耐久の塗料で保護しても塗膜が剥がれやすい傾向にある木材は頻繁な塗り替えが必要となってしまいます。腐食してしまえば構造部分からの交換等手間も費用も掛かってしまいますので、腐食してしまう前のメンテナンスが最も大切です。
雨戸は金属ですので木製よりも劣化しにくく長く使用できます。しかしこちらも塗膜が剥がれれば金属自体が錆び耐久性が著しく低下してしまいます。錆が進行してしまうと穴あきや変形を起こし、塗装をしても利用し続けることは難しくなってしまいます。例としては雨どいの留め金具です。錆が進行してしまったことで外壁にまで錆が移り汚れたように見せてしまっています。極力錆を落として塗装することも可能ですが、今後しばらくメンテナンスを行いたくないという方は、早い段階で錆びにくい素材への変更がお薦めです。
ここまで劣化する原因をご紹介させていただきましたが、塗膜に頼っている部位が意外と多いことに驚かれる方も多いです。定期的な塗装メンテナンスが屋根や外壁の為だけではないということもしっかり覚えて、今後の補修に役立てていきましょう。
劣化が少ないモルタル外壁
最後に外壁です。モルタル外壁はひび割れ(クラック)が発生しやすい外壁材として知られていますが、今回調査を行った際には目立つクラックがなく非常に良い状態でした。それにしても細かな凹凸は手塗りのモルタルだからこそ出せる風合いでもありますね。凹凸が大きいほど汚れが入りやすくなってしまいますので、クラックの発生を押さえながら汚れを付着させにくい塗料での塗り替えを検討していきましょう。
ご提案内容
品番・品目 | 数量 | 単位 | 単価 | 金額 | 備考 |
---|---|---|---|---|---|
仮設足場工事 | 178,400 | ||||
仮設足場 | 264.0 | ㎡ | 600 | 158,400 | |
メッシュシート | 1 | 式 | 20,000 | ||
セメント瓦補修工事 | 165,540 | ||||
棟取り直し | 9.3 | 式 | 16,000 | 148,800 | |
南蛮漆喰・下地補修 | 9.3 | ㎡ | 1,800 | 165,540 | |
屋根塗装工事 | 473,060 | ||||
高圧洗浄(90~150圧) | 1 | 式 | 30,000 | ||
下塗り | 162.2 | ㎡ | 500 | 81,100 | |
中塗り・上塗り | 162.2 | ㎡ | 1,800 | 291,960 | シリコン系塗料 |
雨樋・破風塗装 | 1 | 式 | 70,000 | ||
軒天補修工事 | 35,000 | ||||
軒天部分張替 | 1 | 式 | 35,000 | ||
私たち街の屋根やさんが初めにご提案させて頂いたのは屋根塗装・軒天と破風板等付帯部のメンテナンスです。セメント瓦は経年による劣化はあるものの雨漏りも破損もなく良い状態でしたので、今回恐らく最後になるであろう屋根塗装工事をご提案致しました。また費用はあまりかけたくないというご希望から、傷んでいる軒天の張替と付帯部等のメンテナンスにとどめました。ただ足場仮設は行いますので、予算が許すようであれば外壁塗装工事も同時に行っておいた方が今後が楽になります。そこで工事着工日まで考えていただいた結果、後に外壁塗装工事のご依頼も合わせて承ることとなりました。
点検後のご感想
工事の様子
足場仮設・補修工事
工事を行うにあたってまずは足場仮設工事です。今回は角地ですので車や通行人も多くなる分より一層事故のないよう気を付けて作業に取り組んでいきます。近隣ご挨拶後、作業車の位置等を確認し仮設工事を進めます。足場は仮設も解体も半日程で終わりますが、その間単管をたたく音が響きますのであらかじめご了承ください。
足場仮設後は苔や藻によって滑りやすくなった屋根を高圧洗浄で綺麗にしていきます。人が怪我をするほど強い水圧で屋根の汚れを綺麗に削り落とし、外壁も一気に洗い流していきます。劣化しているセメント瓦は特に吸水しやすい為、塗装を行うまでに十分乾燥させておく必要があります。
セメント瓦の表面を見ると非常にザラザラしていることがわかると思います。セメント瓦は化粧スレートよりも厚い為少しの劣化で雨漏りを起こすという事はありませんが、明らかに割れやすくなってしまいますので施工時も十分に気を付ける必要があります。
後日、セメント瓦の塗装を行う前に棟取り直し工事で歪みやずれを細かく修正していきます。まずは積まれた棟の瓦を全て取り除き、土台となっている土と漆喰も綺麗に片づけていきます。
新たに土台を形成し瓦を積み直していくのですが、今回は土ではなくなんばん漆喰と呼ばれる漆喰を元に作ります。南蛮漆喰は本来の漆喰にシリコンや防水材を混ぜ合わせることで、雨水に強い仕上がりになっています。ここに瓦をまっすぐ積むように重ね銅線で固定すれば棟の取り直し工事は完了です。
施工方法はいくつかありますが、基本的な棟の取り直し工事のご紹介でした。また近年は屋根軽量化を図り乾式工法が採用されることがありますので気になる方はお気軽にご相談ください。
続いては剥がれがみられていた軒天の張替です。全体的に修繕される場合は増し張り工事を行うこともあるのですが、部分的な補修では段差が出来てしまうため張替工事を行います。新たに使用する材料はケイカル板です。穴が空いているのは有孔ボードと呼ばれ屋根裏の換気に役立っており、換気棟と併用することで更に高い性能を発揮します。部分的な張替工事は終わりましたが、ケイカル板は吸水すると傷んでしまいますので、しっかり塗装メンテナンスをしておきましょう。
屋根塗装工事
いよいよ屋根塗装工事です。まずはファイン浸透シーラーで下塗りを行います。傷んでいる屋根材は塗料の吸いが非常に強く、下塗りを十分に行っておかないと中塗り・上塗りの仕上げ塗料までも吸い込み仕上がりもムラになってしまいます。そのため如何に吸い込みをおさえ綺麗な下地にしておくかが非常に重要です。
セメント瓦と乾式コンクリート瓦の違い
ちなみにセメント瓦と同じく塗装が必要な瓦として乾式コンクリート瓦という屋根材が存在します。これらは製品名で呼ばれることが多く、モニエル瓦・パラマウント・スカンジアなどいくつかあります。これらはスラリー層と呼ばれる着色されたセメントとクリアー塗装で出来た膜で守られており、セメント瓦よりも傷みにくい仕上がりになっています。しかしいざ塗装を行おうとしてもスラリー層と塗料の密着性が悪く綺麗に仕上がらない為、十分な高圧洗浄でスラリー層を撤去するか、専用の下塗り塗料を使用しなければなりません。
セメント瓦と乾式コンクリート瓦の見分け方はありますが、どちらかを見極められる塗装工事業者に工事を依頼しないと、後で大きな後悔に繋がる可能性がありますのでご注意ください。
屋根塗装の仕上げは水谷ペイントのルーフマイルドSiのグレーを使用します。水溶性成分を含んでいない為カビや藻を付着させにくく長く綺麗な状態を保つことができます。また臭気はマイルドな弱溶剤塗料ですので、近隣住宅が近いという方も安心してご利用できます。ムラにならないようしっかり丁寧に塗りこんでいきます。
中塗り・上塗り後のセメント瓦の様子です。点検時は苔や藻が付着してしまっていましたが、高圧洗浄で汚れを落とし高耐久塗料で保護したことで、綺麗な屋根へと蘇りました。グレーで塗り替えたことで、いぶし瓦のような落ち着きのある屋根になりましたね。
ルーフマイルドSi(グレー)
恐らく次のメンテナンスは屋根葺き替え工事です。雨漏りを起こしていないにしろ、セメント瓦は既に在庫も薄くなっている屋根材ですし、防水紙が寿命を迎える時期が近づきます。今回しっかり棟の取り直し工事も行いましたので数年は問題ないかと思いますが、引き続き点検と災害後のメンテナンスを心がけましょう。
外壁・付帯部塗装工事
続いては外壁・付帯部塗装工事です。まずは張替後の軒天を通気性・隠ぺい性が高いケンエースで塗装していきます。軒天は湿気がこもりやすく舞い上がった埃が付着しやすい場所です。染みのように見えていたものが実は埃だったということもあるほどです。また軒天が汚れると住宅全体が暗く見えてしまいますので、こだわりがない限りは明るい色に仕上げていきましょう。
塗膜が剥がれてしまった破風板です。白く見えているのが破風板の素地、最も吸水しやすい場所です。このまま塗装しても剥がれかけている塗膜と一緒に剥がれてしまいますので、しっかり剥がせる部分は剥がしてから塗装工事を行っていきます。
木材の塗装には木目を消さない浸透型塗料と塗膜をしっかり作る造膜型塗料がありますが、ウッドデッキ等手で触るような場所は浸透型塗料、滅多にメンテナンスできない破風板等は造膜型塗料を使用することが多いです。ちなみに今回のようなぺりぺりと剥がれるような膜は造膜型塗料です。
剥がせる分はしっかり剥がし、こげ茶の塗料でしっかり塗っていきます。付帯部も屋根や外壁同様に3回塗りが基本ですが、吸い込みが激しく綺麗に仕上がらない場合は何度か塗り重ねて仕上げていきます。塗装後は綺麗な艶の付帯部へと蘇りました。
合わせて外壁も塗装していきます。今回使用するのは日本ペイントのパーフェクトトップ、ND-370(5分艶)です。まずパーフェクトシリーズ、モルタル外壁塗装用のパーフェクトフィラーで細かなクラックを埋めていきます。フィラーは表面も滑らかに整えてくれますので、中塗り・上塗りもよりきれいに仕上げることができます。下塗りが乾いたらいよいよ仕上げです。
パーフェクトトップは塗膜を分解し劣化させてしまう成分(ラジカル)の発生を抑えて耐久性を高めたラジカル制御型塗料です。特に白に近い色で効果を発揮できますので今回の塗装にはまさにうってつけです。
ムラなく綺麗に塗装できるよう毛足が長いローラーでしっかり塗装し十分に乾燥させます。パーフェクトトップは艶有りから段階を分け艶なしまで選ぶことができますが、今回はちょうど中間の5分艶を選択されました。適度な艶は数年経てば落ち着きますし、艶のある塗膜は長期間にわたって汚れを付着させにくい状態です。艶感は見本板で見比べることも可能ですのでお気軽にご相談ください。
塗膜が剥がれ劣化が心配だった雨戸も塗り替えることで見違えるようになりました。雨戸のように凹凸のある塗面はローラーではなく吹き付けスプレーで均一に塗装することもありますが、もちろん十分な養生を行ってから作業を進めますのでご安心ください。今回付帯部塗装工事に使用したのは日本ペイントのファインSi、色は人気の高いこげ茶23-255です。
パーフェクトトップ(ND-370 5分艶)
全体的な塗装を終え、塗り残しがないか色ムラや破損箇所がないかを入念にチェックし、問題がなければ足場を解体します。足場は住宅1棟分が15~20万円ほどかかり決して安くはありません。にも拘わらず工事が終われば残るものではありませんし、出来る限り仮設する回数を減らしたいと思うでしょう。
おすすめのメンテナンス方法としては今回のように足場仮設のタイミングで気になる部分すべての補修を行う事です。全体補修でいくらかかるのか、塗料の違いは等気になることがございましたらお気軽に私たち街の外壁塗装やさんにご相談ください。
工事完了後のアンケート
記事内に記載されている金額は2021年01月06日時点での費用となります。
街の外壁塗装やさんでは無料でのお見積りを承っておりますので、現在の詳細な費用をお求めの際はお気軽にお問い合わせください。
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